100億企業化

【100億宣言】江戸時代から続く老舗、株式会社須崎屋が挑む「守り」と「攻め」の事業承継

2026.05.13

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代表取締役社長 伊藤剛
 

江戸時代、慶応三年の創業から150年以上の歴史を刻む株式会社須崎屋。海運業を祖業としながら、時代の変化を捉えてカステラ製造へと舵を切ったこの老舗が今、六代目社長・伊藤剛氏のリーダーシップのもと、第二創業期とも呼べる急成長を遂げている。伝統の「カステラ事業」でブランド価値を固く守りつつ、成長分野の「そうめん事業」で果敢に攻める。年商100億円企業への道のりを見据えながら、100年先も社会に必要とされる企業であり続けるための、長期的視点に立った独自の経営戦略に迫る。

企業情報
会社名
株式会社須崎屋
設立
1867年
従業員数
65名
事業内容
五三焼カステラを中心とする菓子の製造及び販売業、島原手延べ素麺の卸売業、島原産野菜の卸売業
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01027-00.pdf

 

変革のDNA。海運業からカステラへと繋がれた歴史

須崎屋の歴史は、江戸時代の初期まで遡る。当時、五、六十メートル級の船を三隻有し、天草や長崎の出島を拠点に、鎖国下の日本で貴重品であった砂糖などを海運業を展開。その歴史は、実に 300 年近くに及んだという。江戸時代後期の1867年、海運業を営む「回船問屋」として始まった。当時、五、六十メートル級の船を三隻有し、天草や長崎港を拠点に、鎖国下の日本で貴重品であった砂糖などを運ぶ開運業を展開していた。その砂糖を手にいれることができることから、慶応三年にカステラの製造をはじめる、五三焼カステラ須崎屋の始り。
 
江戸後期、明治、大正そして昭和 38 年まで 100 年間にわたり、海運業とカステラ製造の二つを事業の柱としていた。高度経済成長期に入り、国内の物流網が陸上輸送、すなわちトラック運送へとシフトしていく時代の大きなうねりの中で、同社は海運業の役目を終える。カステラ製造へと事業を一本化する大きな決断を下す。これは、かつて出島貿易を通じて砂糖を扱っていたという、自社の歴史的背景と強みを活かした自然な選択でもあった。時代の変化を読み、祖業から大胆にピボット(方向転換)する。この変革の DNA こそ、須崎屋が 150 年以上にわたり暖簾を守り続けてこられた根幹と言えるだろう。

第二創業期。事業承継を機に売上20倍以上を実現

六代目となる伊藤剛社長が事業を承継したのは約 10 年前。当時の同社は、売上高 5,000 万円前後で推移する、典型的な地方の老舗菓子店だった。しかし、伊藤社長の就任を機に、須崎屋は第二創業期とも呼べる劇的な成長曲線を描き始める。 2025 年度の売上高は 11 億円、そして 2026 年度は 12 億円を見込むまでになった。わずか 10 年で売上規模を 20 倍以上に拡大させたのだ。
 
この変革を主導したのは、伊藤社長自身が設立した「企画室」の存在が大きい。社長を中心に5名のメンバーで構成されるこのチームは、商品開発からマーケティング、新たな販路の開拓まで、会社の未来を創造する司令塔としての役割を担う。旧来のやり方にとらわれず、次々と新たな施策を打ち出していく。事業承継を「代替わり」で終わらせず、企業を根本から変革する「第二の創業」へと昇華させたのである。

「あえて拡大しない」100年先を見据えたブランド防衛戦略

驚異的な成長を遂げる一方で、須崎屋は祖業であるカステラ事業において、「あえてこれ以上、規模を拡大しない」という明確な戦略を掲げている。現在のカステラ事業の売上は約 5.2 億円。これを今後、 10 億円程度で止める方針だ。

焼き上がった五三焼カステラを持つ伊藤社長

その背景には、短期的な利益よりも、企業の永続性を最優先する伊藤社長の強い信念がある。売上だけを追い求めれば、いずれは大手企業がひしめく「レッドオーシャン」での消耗戦に巻き込まれる。それは、同社が長年かけて築き上げてきた独自のブランド価値を毀損しかねない。「差別化しているのに、なぜ同質化する方向に向かうのか」。伊藤社長はそう語る。
 
数量を追うのではなく、付加価値を高める。そのために、取引先を厳選し、供給量をコントロールすることで、ブランドの希少性と価値を守り抜く。目先の売上よりも100年後の未来を選ぶ。この揺るぎない覚悟が、須崎屋のブランドをさらに強固なものにしている。

「市場との対話」が生んだ異色のコラボレーション

カステラ事業の付加価値向上の象徴的な取り組みが、異業種とのコラボレーションだ。大手 VTuber 事務所や大手コーヒーメーカーといった、これまで接点のなかった業界とのコラボ案件だ。
 
特に、ある VTuber とのコラボ商品は、約 1 ヶ月の予約販売期間で 6,000 万円以上を売り上げる爆発的なヒットを記録した。これは単なる話題作りではない。「市場と対話しながら、求められているものは何かを常に考える」という哲学の実践である。
 
ECサイトでの販売についても、「お客様に毎回送料を負担させるビジネスモデルは、長期的には続かない」と考え、通常は積極的ではない。しかし、こうしたコラボ商品のように、送料を払ってでも手に入れたいと思わせるだけの「特別な価値」を提供できると判断した場合にのみ、ECを戦略的に活用する。常に顧客の視点に立ち、事業のあり方を問い続ける姿勢が、新たな成功を生み出している。

地場産業の危機を救う「攻め」のそうめん事業

守りのカステラ事業とは対照的に、須崎屋の成長を牽引する「攻め」の事業が、そうめんだ。 4 年前に参入したこの事業は、すでに売上高 6 億円規模にまで急成長し、カステラと並ぶ第二の柱となっている。
 
参入のきっかけは、純粋な事業拡大だけが目的ではなかった。産地である島原では、そうめん生産者の高齢化と後継者不足が深刻化し、生産量が年々減少。「このままでは、産地そのものが消滅してしまう」。そんな危機感を抱いた伊藤社長が、地場産業を守るために立ち上がったのだ。

島原手延べ素麺

カステラ事業で培った営業網や販売ノウハウを活かせるという算段もあったが、根底にあるのは地域への貢献という強い想い。自社の成長と、地域社会の持続可能性。その二つを両立させるこの挑戦は、企業の社会的意義を改めて問い直す、現代における地方の過疎地域の一つの理想的な事業モデルと言えるだろう。

需要は供給の2倍、圧倒的な市場機会を捉える成長戦略

そうめん事業は、今まさに大きな成長機会の只中にある。昔ながらの手延べ製法で作られる高品質なそうめんは市場から高い評価を受け、現在の受注量は、供給能力の 2 倍以上に達しているという。つまり、作れば作るだけ売れる、圧倒的な需要が存在するのだ。
 
この好機を逃すことなく、同社は大規模素麺工場の設備投資を計画している。南島原市にある廃校となった小学校の校舎を譲り受け、新たな製造工場として活用する。この新工場が本格稼働すれば、生産能力は一気に倍増し、そうめん事業単体で 12 億円以上の売上が見えてくる。
 
まずは第一工場を軌道に乗せ、市場の反応を慎重に見極めながら、 5 年後に第二、第三の工場展開も視野に入れる。需要と供給のバランスを常に見ながら、着実に、しかし大胆に成長へのアクセルを踏み込んでいく。 100 億円企業という目標達成に向け、そうめん事業がその中心的役割を担うことは間違いない。

経営とは「守り」地政学リスクまで織り込む財務戦略

「これからの 10 年間は、守りを固めて経営の土台を作る時期」。伊藤社長は、未来を見据えてそう断言する。台湾情勢、イラン情勢、ウクライナ情勢など世界情勢の不安定化。首都圏直下型地震、南海トラフ地震、巨大台風などの自然災害。そして円安 160 円超えの為替リスク、金利の上昇、小麦をはじめとする原材料高騰、包装資材高騰そして物流費高騰など企業経営を取り巻く外部環境は、不確実性を増すばかりだ。どんなことが起ころうが、揺らがない盤石な経営基盤を今のうちに構築しておく必要がある。須崎屋は、明治維新、日清・日露戦争、第一次世界大戦そして第二次世界大戦も乗り越えてきた経緯がある。
 
今後得られる利益は、内部留保として厚く蓄積していく方針だ。同時に、金融機関との取引においても、地元の有力銀行をメインとしつつも、複数の銀行と関係を構築し、リスクを分散させる。すでに政府系金融機関を含め 6 つの金融機関と取引があり、今後はさらなる取引の拡大も進めていくという。
 
更により、大阪投資育成株式会社から出資を受けた。基金の出資受け入れ計画、東京プロマーケット上場計画など様々な財務戦略の選択肢を排除することなく慎重に検討・実行していくと伊藤社長は話す。
 
攻めの事業展開で急成長を遂げる裏側で、徹底したリスク管理によって足元を固める。この絶妙なバランス感覚こそ、老舗企業ならではの知恵であり、激動の時代を生き抜くための要諦だ。

「社長が足りない」時代、日本文化の担い手となる未来への布石

カステラの製造工程

須崎屋が描く未来は、自社の成長だけに留まらない。伊藤社長は、日本の未来、特に後継者不足に喘ぐ多くの中小企業の現状に強い問題意識を抱いている。「日本に今、一番足りないのは『中小企業の社長』だ」。
 
全国に60万社あるとも言われる後継者不在企業。その中には、素晴らしい技術や文化を持ちながらも、時代の変化に対応できずにいる「100年企業」が数多く存在する。伊藤社長は、そうした企業のM&A(合併・買収)も将来的な選択肢として視野に入れている。ただし、それは単なる事業規模の拡大を目的としたものではない。自らが「プロ経営者」を育成し、買収した企業に送り込むことで、その企業が持つ歴史や文化を「後世に残していく」ことこそが真の狙いだ。
 
カステラやそうめんといった「地場産業」、あるいは「日本の伝統」を事業の軸に据える須崎屋。その根底には、失われゆく日本の良きものを守り、次の世代へと繋いでいきたいという強い想いがある。食品メーカーという枠を超え、日本文化の担い手となる。その壮大なビジョンこそが、須崎屋を「かっこいい会社」たらしめる最大の魅力なのかもしれない。

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