100億企業化
【100億宣言】清水運輸が描く未来図。V字回復から50億円企業へ、次なる挑戦の舞台裏
2026.04.29
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埼玉県を拠点に、総合物流サービスを展開する清水運輸株式会社。同社は一般貨物輸送から倉庫、3PL、車両整備まで、物流のあらゆる領域を網羅するグループ経営を推進している。1970年の創業から約半世紀、年商2億円弱、債務超過という危機的状況からV字回復を遂げ、今や年商50億円、従業員360名を超える企業へと成長した。その根底には、創業から一貫して受け継がれる「従業員とその家族を豊かにする」という確固たる理念がある。「100億企業」を通過点と見据える同社が、次なる成長に向けてどのような戦略を描いているのか。その挑戦の軌跡と未来への展望を紐解く。
- 企業情報
- 会社名
- 清水運輸株式会社
- 設立
- 1970年
- 従業員数
- 355名
- 事業内容
- 運送・倉庫・荷役・派遣・車輛整備他関連事業
- 100億宣言
- https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01816-00.pdf

目次
原点は「家族の生活」。農家からの転身が築いた従業員第一主義
清水運輸グループの礎が築かれたのは1970年。創業者は、現社長の祖父と父親である。もともと農家を営んでいたが、増える家族を豊かにするため、将来性を見込んでトラック1台で運送業の世界へ飛び込んだ。創業当時、彼らが引き受けたのは、既存の運送会社が敬遠するような手間のかかる仕事だった。しかし、農業とは異なり、毎月決まった収入が得られることに大きな喜びを感じ、どんな仕事も厭わずに取り組んだという。
その実直な姿勢が顧客の信頼を呼び、やがて「仲間を連れてきてほしい」と声がかかるようになる。事業を始めた動機が「自分たちの家族の生活を守るため」であったように、集まった仲間たちにも守るべき家族がいた。「仲間の所得を増やし、家族を安心させたい」。その想いが、さらなる仕事の獲得へとつながり、会社は成長の軌道に乗っていく。
この創業の物語こそが、清水運輸グループの経営哲学の根源である。顧客満足(CS)よりも先に、従業員満足(ES)を置く。まず従業員とその家族の生活を第一に考え、その糧を与えてくれる顧客に感謝を捧げる。この「従業員第一主義」は、人的資本経営が叫ばれる現代において先駆的ともいえるが、同社にとっては創業から続くごく自然な精神なのである。

債務超過2.9億円からの再建。10年間の地道な歩み
1999年、現社長の清水英次氏が30歳で家業に戻った時、会社は深刻な経営危機に瀕していた。年商2億円弱に対し、利益はほとんどなく、決算書にはマイナス2.9億円の繰越損失が計上されていた。実質的な債務超過であり、銀行からの融資もままならない。事務所は閑散とし、ドライバーへの給与や燃料費の支払いをどうするか、常に頭を悩ませる日々だった。
この絶望的な状況から、清水社長の再建に向けた闘いが始まる。それは、魔法のような特効薬ではなく、地道な努力の積み重ねだった。目の前にある仕事を一つひとつ着実にこなし、トラックの稼働率を最大限に高める。同時に、新たなドライバーの採用にも奔走した。新しいトラックを買う資金的余裕はなかったが、それでも「年に1台は増やす」という目標を掲げ、ひたすら前を向いた。
休日返上で仕事に没頭する日々が10年続く。その愚直なまでの努力が実を結び、会社はついに債務超過を解消。銀行からの信頼を回復し、新たな投資への道筋が見え始めた瞬間だった。この経験は、経営の根幹を支える財務の重要性を肌で感じるとともに、どんな苦境でも諦めずに歩み続ければ道は拓けるという、揺るぎない信念を清水社長に刻み込んだ。
「従業員との計画」が変えた未来。拠点展開とシナジーの追求
経営が安定した2008年、清水社長は会社として初の中期経営計画の策定を決意する。驚くべきことに、彼は「一緒に計画を立てないか」と全従業員に呼びかけた。手を挙げたのは、わずか3名。しかし、計画策定の経験がない彼らと共に、マニュアルを片手に5カ年計画を作り上げた。「毎年1営業所を出店する」。その挑戦的な目標は、当初こそ赤字続きで苦戦を強いられたものの、会社の未来を自らの手で創り出すという、新たな文化の萌芽となった。
事業拡大においては、やみくもな多角化ではなく、既存事業とのシナジーを徹底的に重視した。ドライバーにさらなる安心を提供し、事業基盤を強固にするため、物流の周辺領域へと事業を拡張。倉庫業、荷役業、そして車両整備工場と、一貫した物流サービスを提供できる体制を構築していった。
特に、未知の分野であった倉庫・荷役事業への進出は大きな挑戦だったが、顧客からの信頼がそれを後押しした。業務委託を任された際、顧客企業の担当者が出向という形でオペレーション構築を支援してくれたのである。このソフトランディングが成功の鍵となり、グループの事業ポートフォリオは大きく拡充。現在の株式会社エスユー物流企画の礎となった。

M&A戦略の本格化。成長を加速させる「開発本部」構想
自社での拠点開発を軸に成長を続けてきた清水運輸グループだが、100億円企業という次なるステージを見据え、M&Aを重要な成長戦略の一つに位置づけている。これまでも運送会社2社、整備工場1社をM&Aによってグループに迎え入れてきたが、今後はその動きをさらに加速させる計画だ。
しかし、そこには大きな課題がある。拠点開発やM&Aを専門的に推進する人材の不足だ。これまでは顧客の要望に応じて近隣に営業所を開設する形が主だったが、それでは地理的な拡大に限界が生じ、ドライバーの労働時間にも影響を及ぼす。より戦略的な拠点展開とM&Aを推進するため、現在「開発本部」の設立を構想している。
この新設部署には、M&Aのデューデリジェンスから拠点開発の実務までを担える経験豊富なプロフェッショナル人材を、ヘッドハンティングも含めて採用する計画だ。自社開発の難しさ、特に幹部候補となる人材の確保という課題を、M&Aによって解決する狙いもある。外部の知見と経験を取り入れることで、グループ全体の成長スピードを劇的に高めていく。

財務戦略の鍵。CFOの役割と取引銀行との関係構築
年商50億円規模の企業は、金融機関との関係において「地銀には大きすぎ、メガバンクには小さい」という、いわゆる“空白地帯”に陥りがちだ。しかし、清水運輸グループは、その壁を巧みに乗り越えてきた。その中心にいるのが、銀行出身である社長夫人、清水専務の存在だ。
彼女は、日常的な銀行との折衝や資金調達の実務を担い、いわばグループのCFO(最高財務責任者)としての役割を果たしている。顧問税理士や銀行OBとも緊密に連携し、自社の財務状況を客観的に評価。その上で、どの金融機関とどのような関係を築くべきか、戦略的な判断を下している。かつて投資を積極的に行っていた時期には、取引銀行が10行以上に及んだこともあったという。
今後、M&Aや大規模な拠点開発を加速させていく上で、資金調達は最重要課題となる。「100億宣言」を機に、各種補助金の活用も視野に入れつつ、取引金融機関の数を再び増やしていくのか、あるいはメガバンクとの関係を深化させていくのか。いずれにせよ、盤石な財務基盤と戦略的なファイナンスが、同社の成長を力強く下支えしていくことは間違いない。

権限移譲という「未来への投資」。次世代リーダーの育成
約3年前、清水社長は一時的に体調を崩された。大事には至らなかったが、この出来事は経営体制を大きく見直す転機となる。「自分に万が一のことがあっても、会社が機能し続けなければならない」。その強い危機感から、清水社長は子会社の社長職をすべて部下たちに任せるという、大きな決断を下した。
これは、単なる業務の移譲ではない。社長という責任ある立場を経験させることで、彼らが自ら考え、試行錯誤し、経営者として成長するための「訓練」の場を与えたのである。「サラリーマン社長」という立場では見えなかった景色、持てなかった発想が、権限と責任によって生まれる。考える人の数が増え、組織全体としての成長力が高まる。清水社長は今、自らの役割を「全体の方向性を示し、計画の進捗を管理すること」と再定義し、次世代リーダーたちの挑戦を後方から支えている。
この権限移譲は、未来への最も重要な投資である。部下たちが経営者としての視座を身につけ、自律的に事業を推進していく。その体制が完全に機能した時、清水運輸グループは、創業者が夢見た「家族を豊かにする」という理念を、さらに大きなスケールで実現する組織へと進化を遂げるだろう。
100億円は通過点。創業理念と共に歩む、果てなき成長への道
関東一円に14の拠点を構える清水運輸グループ。中期経営計画では、さらなる拠点増設を掲げているが、清水社長は「100億円という目標は、あくまでも通過点だ」と断言する。これまで10年ごとに売上規模を約5倍に拡大させてきた実績を考えれば、その言葉には確かな実感が伴う。
同社が目指すのは、単なる規模の拡大ではない。その先に見据えるのは、創業から変わらぬ理念の追求だ。「従業員が、地域の同業他社よりも良い待遇で迎えられる会社にしたい」。給与や休日といった労働条件で地域ナンバーワンを目指し、従業員とその家族が真に豊かさを実感できる環境を創り上げること。それが、あらゆる経営判断の根幹にある。
同時に、運送から倉庫までを一貫して手掛ける「物流センター」の増設にも意欲を見せる。顧客に対してより付加価値の高いサービスを提供し、事業の安定性を高めていく。M&Aや開発本部の新設は、すべてこれらのビジョンを実現するための布石だ。創業の精神を胸に、清水運輸グループは、従業員、顧客、および地域社会と共に、果てなき成長への道を歩み続ける。

まとめ
農家からの転身という異色の出自を持つ清水運輸グループ。その根底には、常に「従業員とその家族の幸せ」を願う温かい眼差しがある。債務超過という絶望的な状況から這い上がり、50億円企業へと成長を遂げた今も、その原点は揺らがない。
100億円企業への道のりは、M&Aの加速、開発本部の設立、および次世代リーダーの育成という明確な戦略によって描かれている。しかし、それらはすべて、創業理念である「ES(従業員満足)第一主義」を、より高いレベルで実現するための手段に他ならない。
清水社長が息子たちに語った「君たちはドライバーさんに育てられた。だから物流に還元しなさい」という言葉は、同社の哲学を象徴している。事業を通じて関わるすべての人々への感謝を忘れず、その恩に報いるために成長を続ける。清水運輸グループの挑戦は、物流業界の未来、および企業の在るべき姿を明るく照らし出している。
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