100億企業化

【100億宣言】三ツ知製作所が挑む建築・水素の新軸づくり

2026.03.24

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株式会社三ツ知製作所は、鍛造・プレスによる大量生産で自動車産業を支えてきた製造業です。同社はいま、国内需要縮小やEV化による部品構成の変化を前提に、建築(省力化・防災)と水素を新たな成長軸として立ち上げています。
 
その推進力に据えるのが「100億宣言」。これは売上の目標数値ではなく、従業員に将来像を示し、組織を“自ら売れる”体制へ変えるための覚悟として機能しています。

企業情報
会社名
株式会社三ツ知製作所
設立
1971年6月
従業員数
73名
事業内容
自動車用(シート、ウィンドウ、エアバッグ関連)冷間鍛造部品の製造
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/00425-00.pdf

 

55年の鍛造・プレスから、次の土俵を自分でつくる

創業以来約55年。同社はネジなどの締結部品(ファスナー)を鍛造・プレス技術で大量生産し、自動車部品向け生産で成長してきました。


 

ヘッダーフォーマー等の大量生産機を導入し、締結部品からリベットや各種部品へと製品領域を広げる。その歩みは「量をつくり、品質と供給で信頼を積む」という製造業の王道を、設備と技術で貫いてきた歴史でもあります。
 
一方で、国内需要の縮小やEV化による部品構成の変化は、従来の延長線だけでは成長余地が限られる現実を突きつけます。
 
だから同社は、“既存市場で勝ち続ける”だけでなく、“新しい市場で勝てる設計”を始める。自分たちの土俵を自分たちで増やすために、建築分野の拡大と水素分野の挑戦を始めます。
 
この意思決定は、過去の強みを捨てるのではなく、大量生産で培った技術・設備の価値を次の産業へ移植する決断です。

M&Aと拠点展開で広がった裾野を、成長の推進力に変える

三ツ知グループは日本国内を起点に生産・開発体制を構築し、自動車産業の成長とともに事業基盤を固めてきました。 その後、顧客のグローバル展開に対応するため海外へ進出し、アジアを中心に生産拠点を拡大してきました。
 
現在はグループ内でのM&A等の展開を通じて、国内外の拠点が連携する体制を築き、世界市場へ安定した品質と供給力を提供しています。
 
複数拠点・海外を抱える体制は、単に規模を大きくするためのものではありません。市場の変化に対して、拠点や機能の組み合わせで打ち手を増やすための土台です。


 

さらにグループには、金型や樹脂金型を扱う企業(創成エンジニアリング)など関連会社もあります。ただし金型系は鍛造とは別領域であり、何でも一色に染めるのではなく、専門性を分けながらグループとして活用する姿勢がある。
 
ここで重要なのは、組織が大きくなるほど「何をどこで決め、どこが実行するか」が成否を分ける点です。
 
新事業を推進するには、拠点や機能の分散を弱点にせず、意思決定と連携の仕組みへ変える必要がある。同社はその前提に立ち、次章以降の“新しい売り方・つくり方”へ進みます。

建築へ:実績30年の技術を「省力化・防災」の価値に変換する

建築分野で同社が前面に出すのは、30年以上前から開発していた「一方向(ワンタッチ)で進むネジ」の技術です。


 
https://www.mitsuchi.co.jp/products/

これを応用したオリジナル製品が「クイックジョイント」。狙いは明確で、従来手作業で行われてきたネジ締めを自動化し、現場の省力化へつなげることにあります。
 
トンネルのセグメント接合など、共同開発の現場で採用の可能性を持ち、トンネル工事だけでなく住宅、道路工事等へと拡販を図ります。
 
ここで同社が選んでいるのは、“建築向け製品を始めました”という表層ではなく、「現場の作業そのものを変える」方向です。
 
ネジ締めという当たり前の工程を、自動化できる構造へ変える。省力化は人手不足の解決に直結し、防災は社会インフラの安全性に直結します。
 
つまりクイックジョイントは、部品の売り物ではなく、工程の売り物です。大量生産で磨いた締結の知見を、建築という別の現場で“価値の言葉”に翻訳し直す。その意思決定が、同社の事業転換を実体あるものにします。

少量から量産へ:切削で立ち上げ、プレス化で伸ばす設計思想

クイックジョイントは現状、主に切削で製造しており少量生産中心です。しかし同社の設計は最初から「市場が拡大すればプレス化し、量産体制へ移行する」ことを織り込んでいます。


 

新市場では、最初からフル投資で量産に入るよりも、製品化と販路確保で確度を上げることが合理的です。切削で立ち上げるのは、試作・小ロットの柔軟性を優先し、採用の壁を越えるため。
 
そこから市場が広がったタイミングでプレス化し、同社が本来強い「生産設備が生きる形」に移行する。


 

この段階設計の意味は、投資の順序を間違えないことにあります。製造投資は必要ですが、資金面の対応や投資計画は現実的に進める意向を明確に持っています。販路獲得が売上拡大の鍵であり、販路が立ったときに量産へ踏み込む。設備産業としての強みを最大化するために、まずは“売れる前提”をつくる。
 
そのために営業・開発・製造の連携を組み替える必要がある――ここから、組織の話が事業戦略の中心に入っていきます。

水素へ:金属プリンターでコネクターをつくり、次の社会に参加する

株式会社三ツ知(愛知県春日井市)と同社で、金属プリンター(3Dプリント)を用いて水素用コネクターを作る取り組みを実施しており、今後の水素社会に向けた開発を推進しています。
 
ここでのポイントは、既存の量産技術だけに寄りかからないことです。鍛造・プレスが同社の核である一方、新しい領域では新しい製法を使い、開発のスピードと可能性を優先する局面がある。
 
金属プリンターの採用は、その意思決定を象徴します。


 

水素は「いま大量に売れる市場」として語られるものではなく、「社会の前提が変わるときに、必要になる部品や接続のあり方」を先回りして掴みにいく領域です。
 
建築で省力化・防災という現場課題に入り込みつつ、水素で次の社会のインフラに参加する。異なる時間軸を同時に走らせ、事業ポートフォリオを組み替える挑戦です。
 
どちらにも共通するのは「締結・接合」という同社の経験値が活きる領域であり、技術の芯を保ったまま市場を変えるという戦い方です。

従業員に将来像を渡し、意識を変える「100億宣言」

同社は100億宣言を提出し、補助金の採択を受けています。 しかし100億宣言の起点は、対外的なアピールよりも「従業員へ将来像を示す」社内向けメッセージでした。
 
挑戦的な目標を掲げることで、従業員のモチベーションを喚起し、社内の意識変革を図る。これが同社にとっての100億宣言の本質です。
 
宣言づくりや補助金申請では、外部コンサルや地域の支援、地方自治体の補助金獲得実績なども活用しています。書類審査・プレゼンを経て採択された事実は、「社内の覚悟」が「外部の制度」と接続できたことを意味します。


 

採択審査の評価で何が効いたかの明確なフィードバックは得られていないものの、建築分野や地域貢献の姿勢が寄与した可能性を捉えています。重要なのは、制度を“資金”としてだけ扱わず、宣言を“組織を動かす言葉”として扱うことです。
 
言葉が変われば、行動の基準が変わり、投資と採用の優先順位が変わります。

ボトルネックは「人」と「売り方」。“自ら売れる”製造拠点へ

同社が最大の課題として捉えるのは、組織体制強化と人員増強です。 ものづくりの技術面には基盤がある。しかし販路開拓と人の確保が成長のボトルネックであることを明言しています。
 
だからこそ、営業・開発の体制を整備し、本社側と製造拠点側で機能分担を進めます。本社は営業機能を持ち、製造拠点は生産を担う。
 
一方で、製造拠点自らが製品を売り込める組織づくりが重要課題です。


 

技術開発部隊は社長の傘下に置き、技術開発と営業の連携強化を求める。意思決定は本社主導が基本でありながら、100億宣言や新事業推進は製造拠点の強い意思が本社の支援を得て進められた経緯があります。
 
つまり現場起点で火がついた挑戦を、全社の仕組みに変える段階に入っています。「つくれる」から「売れる」へ。さらに「自分たちで売り切れる」へ。100億宣言は、その変身を完遂するための合図です。

地域に根を張り、採用を“関係人口”から組み立て直す

人材確保・定着の課題に対し、同社は地域に根ざした採用施策を展開します。 製造拠点は地域色が濃く、人が集まりにくい地域特性がある。ならば、地域の中で「この会社で働く」を自然な選択肢にする。
 
その象徴が、地元向けの紙媒体(地域限定の折り込み新聞「ONONAMIE × 三ツ知製作所」)を年末に配布する施策です。
 
地元の写真や地域事情を織り交ぜた読物風の内容で、最後に「当社で働きませんか」と呼びかける。ターゲットはUターン層や地元出身者で、正月の帰省時に家族の会話の場で認知されることを狙います。


 

この施策は反響が大きく、地域の理解と応援を得る効果に加え、地元在住で他社へ通勤していた層が転職を検討する契機にもなっています。結果として応募者の地元理解度が高く、定着率にも寄与する。
 
さらに地域の学校(小中高)や学生と連携し、学生が制作に関わるなど地域巻き込み型のブランディングも進めています。
 
地域企業や自治体との連携で「関係人口」を増やす意図も明確です。採用幅拡大は、社内に向けた将来像と挑戦姿勢の共有でもある。人を集めるのではなく、地域とともに“働く理由”を育てる。これが同社の人づくりの設計です。

まとめ

本取材を通じて、三ツ知製作所の挑戦が、事業領域の拡張はもちろんのこと、「どう変わるか」を自ら定義している点に本質があることを強く印象付けられました。
 
鍛造・プレスで培った締結の技術を軸に、建築では現場の省力化・防災という社会課題へ、水素では次のインフラづくりへと踏み出す。その過程で掲げた100億宣言は、外向きの成長目標ではなく、従業員に将来像を手渡し、組織を“つくれる”集団から“自ら売り切れる”集団へ変えるための合図ともなる。
 
自分たちの土俵を自分たちでつくる——その覚悟が、同社の次の成長を静かに、しかし確かに形づくっています。

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