100億企業化
【100億宣言】レッドホーストラスト、建設業界の”宿”題を解く「ワークマンハウス」の挑戦
2026.02.04
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北海道の広大な大地で、日本の社会インフラを支える人々がいる。公共工事などに従事する建設技能者たちだ。
しかし、彼らが長期滞在するための宿泊施設が、後継者不足やコロナ禍を背景に次々と姿を消している。この「見えざる社会課題」に正面から向き合い、新たなビジネスモデルを構築しているのが、レッドホーストラスト株式会社である。
同社が展開する建設技能者向け宿泊施設「ワークマンハウス」は、単なる宿の提供に留まらず、業界が抱える構造的な課題を解決し、持続可能な成長を目指す挑戦の物語である。
目次
「面白くない」から始まった、苦悩と模索の序章
レッドホーストラストの挑戦は、既存事業への違和感から始まった。2012年に入社した現社長が当時手掛けていたのは、投資家向けに収益物件を売買し、その管理を請け負う不動産事業。それは安定したビジネスではあったが、社長の心には「何か面白くない」という、漠然としながらも拭えない思いが燻っていた。
ありきたりの事業から脱却するため、東京では既に一般的だった海外投資家への販路を北海道で開拓するなど、新たな試みを模索する。その中で、ある投資家から「ホテルが欲しい」という、宿泊業への扉を開くことになる要望が寄せられた。運営まで内製化できれば、物件の価値を高めて販売もでき、運営収益も得られる。一石二鳥のビジネスモデルに可能性を見出し、2018年、インバウンド需要の波に乗って函館に90ベッド規模のゲストハウスを開業。

中古ビルをリノベーションした洒落た空間は、外国人観光客で賑わい、事業は順調に滑り出したかに見えた。しかし、そのわずか2年後、札幌に2店舗目となるゲストハウスをオープンしたその翌日、日本は緊急事態宣言下に突入する。観光需要は瞬時に蒸発し、事業は「死にかけた状態」へと一気に突き落とされた。
コロナ禍の絶望で見出した、一筋の光
「いつ終わるんだ、この状況は」。出口の見えない暗闇の中であがき続けていた時、一本の電話が鳴った。北海道滝川市のある会社から「宿泊施設の運営を引き継いでもらえないか」という、これまで全く想定していなかった市場からの問い合わせだった。
当初は、ゲストハウスへの転換も検討したが、外国人観光客が訪れる観光資源が乏しく施設も大掛かりな改修が必要になる。「さすがに厳しい」。一度はそう考えた。
しかし、この偶然の出会いが、同社に新たな視点をもたらす。興味を惹かれ、廃業寸前だったその滝川の宿の経営者に話を聞くと、「毎年多くの作業員が来てくれるが、後継者がおらず、もう辞めたい。でも、自分たちが辞めると困る人が大勢いるんだ」という、地域が抱える切実な現実を知る。この言葉が、巨大な潜在市場の扉を開く鍵となった。
後継者不足とコロナ禍で、地域の宿が次々と廃業していく。その一方で、公共工事は止まらない。宿泊場所を失った技能者たちは、狭い部屋に押し込められるようにして滞在している。これは単なるビジネスチャンスではない、解決すべき社会課題なのだと、直感した。
稼働率70%の衝撃と、「改善の余地」という名の宝の山
その宿は、特別な集客活動を何一つ行っていなかった。ただ市のホームページの片隅に、電話番号が掲載されているだけ。
にもかかわらず、年間を通じて70%という驚異的な稼働率を維持していたのだ。宿泊客のほとんどが、公共工事のために毎年訪れるリピーターの建設会社だという。インバウンド需要を追いかけ、集客に苦心していたゲストハウス運営の経験からすれば、それは信じがたい数字だった。
「どうやって集客しているのか」と尋ねると、返ってきたのは「特に何もしていない」という、拍子抜けするほどの答え。この事実は、この市場に眠る圧倒的なポテンシャルの証明であり、同時に、あらゆるサービスが未成熟であることの裏返しでもあった。
古びた部屋、写真で見る限り改善の余地がありそうな食事、アナログな予約方法。そのすべてが「改善の余地」、すなわち成長の可能性に満ちた「余白」に見えた。

「僕らがインターネットを使い、部屋や食事を少しアップデートするだけで、稼働率を80%、90%にできるのではないか」
確かな手応えを感じた瞬間だった。この「余白」こそ、他社がまだ気づいていない宝の山であり、自分たちが挑むべき領域だと確信したのである。
「現場の声」を徹底的に拾い上げ、唯一無二のサービスを磨き込む
「なぜ、ここに泊まるのですか?」「どんな工事を?」「他にどんなサービスがあれば嬉しいですか?」
事業承継後、同社がまず取り組んだのは、顧客である建設会社を一社一社訪問し、徹底的にヒアリングすることだった。
建設業界の素人だったからこそ、謙虚に、そして貪欲に「現場の声」を求めた。長期出張する技能者からは、「個室がいい」「部屋で気兼ねなく過ごしたいからWi-Fiとエアコンは必須」「長期滞在だから、豪華さより家庭的で温かい手作りの食事が毎日食べたい」といった、生活に根差した切実なニーズが次々と寄せられた。

また、朝6時といった早朝に現場へ向かう彼らのため、「朝食だけでなく、現場で食べる弁当も用意してほしい」という声も多かった。雪が降る北海道の冬にも、川底を掘削して氾濫を抑制する河川工事など、季節特有の需要も存在する。

そうした現場の声に一つひとつ応え、個室、Wi-Fi、エアコンを標準装備し、各施設で手作りの日替わりメニューと弁当を提供するという、ワークマンハウスの基本サービスが形作られていった。
予約担当者の「隠れたストレス」を解消する、法人目線の価値提供
もう一つ、ヒアリングを通じて明らかになったのが、宿泊を手配する企業の経理・総務担当者が抱える「隠れたストレス」だった。個人経営の宿では、宿泊費の支払いが現地での現金払いや、従業員による立替払いが主流。
担当者は、従業員から大量の領収書を集めて一件一件精算するという、煩雑で時間のかかる作業に追われていた。数百万単位の立替が発生することもあり、それは企業にとっても従業員にとっても大きな負担となっていた。
「請求書でまとめて後払いにできないか」。この要望に応え、法人単位での月締め請求書払いの仕組みを構築したことは、競合に対する強力な差別化要因となった。宿泊する技能者の満足度を高めるだけでなく、予約する企業の担当者の事務的な負担を劇的に軽減する。この「宿泊者」と「予約担当者」という二つの顧客軸を両輪で満たすことこそが、ワークマンハウスが提供する本質的な価値なのである。

これにより、一度利用した企業が「次もワーク-マンハウスで」と指名してくれるようになり、70%という高いリピート率を誇る強固な顧客基盤を築き上げることに成功した。
独自の資金調達モデルが、爆発的な成長を加速させる
事業開始当初、同社には潤沢な自己資金があったわけではない。「資金計画は全然できなかった」。金融機関からの融資もままならない「綱渡り」の状態から、いかにしてスピーディな多店舗展開を実現したのか。
その答えが、投資家(オーナー)に建物を販売し、自身は運営に徹するというフロー型のビジネスモデルだった。これにより、金融機関からの融資に頼ることなく、リスクを抑えながら事業を拡大。
創業からわずか数年で28施設(2025年12月末時点)という急拡大を成し遂げた。近年では、事業で得た運営収益(ストック)と積み上がった実績を元に、金融機関からの信頼も獲得。「事業の収益性が高く、モデルがシンプルで分かりやすい」と評価され、自社で施設を保有するモデルも組み合わせることで、財務基盤は格段に安定した。

さらに、一度物件を購入したオーナーが、その収益性の高さから新たな施設開発の際にリピート投資してくれるケースも増えている。この柔軟で強固な事業モデルが、同社の成長を力強く牽引している。
100億宣言の先に見据える、北海道から全国、そしてFC展開へ
同社の視線は、すでに北海道の先、全国へと向けられている。2026年からは東北エリアへの進出を計画しており、青森、秋田、岩手での着工を皮切りに、日本全国で「ワークマンハウス」のネットワークを構築していく構えだ。
その成長戦略をより確かなものにするため、「100億企業宣言」にも申請。知人経営者からの「補助金がもらえるらしいぞ」という一言がきっかけだったが、補助金の採択には至らなかった。しかし、このプロセスを通じて、事業計画のロードマップがより鮮明になり、「結構現実的なラインで引いている。前倒しで行ける」と、目標達成への解像度が高まったことは、何よりの収穫だった。
宣言で掲げた2033年までの目標も、現在の成長スピードを鑑みれば、数年前倒しでの達成が現実的な視野に入る。将来的には、自社での直営展開だけでなく、フランチャイズ(FC)展開も視野に入れている。「まずは道外で自分たちがモデルを確立し、その再現性を示すことが先決」。その確かなステップの先に、日本全国の建設現場を支えるという壮大な未来図を描いている。
急拡大を支える組織力と、再現性という名の参入障壁
2020年に10名に満たなかった従業員は、2025年12月末時点で約270名へと急増した。「走りながらなので、足元の問題がまだ解決できていない」と社長は謙遜するが、その成長は常に課題と向き合い、組織を進化させてきた証でもある。
各施設を運営する現場スタッフ、土地の仕入れや開発を担う不動産部門、法人営業を担うマーケティング部門、そして全社を支える管理部門。それぞれの専門性を持つ人材が、事業の成長エンジンとして力強く機能している。ワークマンハウスのビジネスモデルは、一見シンプルに見えるかもしれない。
しかし、その裏には、他社が容易に追随できない参入障壁が築かれている。最大の強みは、すでに北海道の建設会社約12,000社のうち、3分の1にあたる約4,000社との取引実績を持つ広範な顧客ネットワークだ。
そして、物理的な拠点を伴う事業を、標準化された品質で、かつ地域特性に合わせて複数展開する組織的なノウハウ。この「事業の再現性」と「組織力」こそが、同社の競争優位性の源泉となっている。
まとめ:ホテルではなく、社会インフラを創造する
レッドホーストラストが挑戦しているのは、単なる宿泊事業ではない。それは、日本のインフラを維持するために不可欠な、しかしこれまで光が当てられてこなかった領域の課題を解決する「社会インフラ創造事業」である。
建設技能者に安らぎの場を提供し、企業の活動を円滑にする。そして、後継者不足に悩む地域の旅館や雇用を守る。事業の成長が、そのまま社会貢献へとつながっていく。「道のど真ん中を歩いていきたい」。
社長が語るその言葉通り、社会性と収益性という二つの価値を両立させながら、同社は前人未到の荒野に、未来へと続く確かな道を切り拓いている。その挑戦は、建設業界のみならず、多くの地方が抱える課題解決のモデルケースとして、今後さらなる注目を集めるに違いない。
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