100億企業化

【100億宣言】山形発・挑戦を続ける“技術のウエノ”――地域から世界へ、成長を描く企業の軌跡

2026.01.29

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企業情報
会社名
株式会社ウエノ
設立
1982年
従業員数
86名
事業内容
ノイズフィルターコイル、平滑用チョークコイルの設計、製造
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01213-00.pdf

 
かつて主要取引先の事業停止により、事業の継続が危ぶまれる危機を経験した株式会社ウエノ。
その逆境をきっかけに、手作業から機械化、国内生産から海外拠点展開へと着実に歩みを進めてきました。
現在は電子機器の誤動作を防ぐ「ノイズ対策用コイル」で国内外の製造業を支え、堅実な経営と高い技術力を武器に成長を続けています。

上野社長が【100億宣言】を行ったのは、「売上を伸ばすため」ではなく、「次の世代に会社をつなぐため」。
地域に根ざした製造業として、誠実なものづくりを通じ、社員・取引先・地域社会がともに発展する企業を目指しています。
 

 

1.地域に根ざす挑戦企業を取材して

山形県鶴岡市。庄内平野の一角に本社を構える株式会社ウエノは、電子部品の一種であるノイズ対策用コイルを手がける企業です。創業から40年以上、確かな技術力と堅実な経営姿勢で、地域に根ざした成長を続けています。
 
今回の取材では、上野社長に創業当時の経緯や事業発展の背景とこれまでの取り組み、100億宣言への挑戦についてお話を伺いました。落ち着いた語り口の中にも、これまでの挑戦の積み重ねに裏打ちされた信念が感じられました。
 
上野社長は「特別なことをしてきたわけではない」と語りつつも、変化する環境に真摯に向き合い、一歩ずつ改良を重ねてきたといいます 。製造業としての厳しい局面を何度も経験しながらも、そのたびに工夫を重ねてきた姿勢が、現在のウエノの技術力と信頼を支えています。
 
同社の取り組みの根底には、「地域に支えられてきたからこそ、地域に貢献したい」という思いがあります。地方に拠点を置きながらも、取引先は全国に広がり、時には海外企業とのやり取りもあります。規模の大小ではなく、「誠実なものづくり」を通じて、着実に信頼を築いてきました 。
 
地方の中小企業が、限られた資源の中でどのように挑戦を続けられるのか――株式会社ウエノの歩みには、その問いへの確かな答えが詰まっています。 本レポートでは、同社の成長の軌跡とともに、「挑戦をやめない企業文化」がどのように培われてきたのかを紐解いていきます。
 

2.挑戦の原点と「100億企業」への道

株式会社ウエノが「100億宣言」に取り組むきっかけとなったのは、取引銀行からの紹介でした。
 
地域の成長企業を対象とした新しい支援制度として案内を受けたことが、同社にとって自社の未来を改めて考える契機になったといいます。
 
同社の売上は現在40〜50億円規模に達しており、決して小さな企業ではありません。しかし、「100億企業」という目標は、容易に到達できるものではなく、あらためて自社の強みや事業の方向性を見直す機会となりました。この取り組みを通じて、上野社長は「数字を追うことが目的ではない」と話します。大切なのは、売上規模ではなく、「何を提供できる会社であるか」という存在価値を明確にすることです。
 
取材中、上野社長は“挑戦”という言葉を繰り返し用いていました。それは、急成長を狙う挑戦ではなく、変化を恐れず、一歩ずつ積み重ねていくという意味での挑戦です。同社にとって「100億企業化」とは、単なる数値目標ではなく、社員や取引先、地域社会とともに次のステージへ向かうための「旗印」のような存在です。
 
こうした目標の設定によって、社内では経営の方向性を共有する機会が増えました。経営層だけでなく、現場の社員も「今後の会社をどうしていくか」を考えるきっかけとなり、組織としての一体感が生まれつつあります。
挑戦を通して得られるのは、売上や利益だけでなく、組織としての学びや誇り――。
その積み重ねこそが、ウエノの持続的な成長を支える原動力となっています。

3.農家の長男から経営者へ――創業ストーリー

上野社長は、もともと農家の長男として生まれ育ちました。
学卒後就農しましたが生活の目途が立たず、コイル製造の道に転業して、ものづくりの世界に魅力を感じたといいます。その後、独立を決意し、現在の株式会社ウエノの前身となる事業を立ち上げました。
 
創業当初のコイル製造は、すべて手作業でした。自動巻き機も十分に整っておらず、ひとつひとつを手で巻き、仕上がりを確認する作業の繰り返しだったそうです。「品質を安定させながら量を作る」という難題に直面し、何度も試作を重ねる日々が続きました。
 
当時は資金も設備も限られており、地域の知人や協力者の支えを受けながら、少しずつ体制を整えていきました。 初期の取引先は家電メーカーや電子部品商社などで、信頼を得るまでに時間がかかったといいます。 それでも「一度頼まれた仕事は、最後まで責任を持ってやり遂げる」という姿勢を貫き、少しずつ評価を積み上げていきました。
 
こうした試行錯誤の積み重ねが、現在の品質基準の礎となっています。当時の経験が社員にも受け継がれ、今も現場には「自分の目で見て確かめる」という文化が根づいています。
 
上野社長にとって、創業期は「困難を乗り越えるというより、できることを一つずつ積み重ねてきた時代」でした。 成功よりも日々の改善を重ねる姿勢が、結果として企業の信頼につながっていったといえます。

4.技術を磨き続けるものづくり

株式会社ウエノの主力製品は、電子機器の誤動作を防ぐためのノイズ対策用コイルです。
この製品は、一見すると小さな部品ですが、産業機器や通信機器、自動車部品など、幅広い分野の電子制御に欠かせない存在です。わずかなノイズの影響で動作が不安定になる製品にとって、ウエノのコイルは“見えない安全装置”のような役割を果たしています。
 
同社が長年評価を受けてきた理由は、「安定した品質」と「精度の高さ」にあります。特に、目に見えない誤差をいかに抑えるかという点にこだわり、製造工程ごとに細かな管理を徹底してきました。
 
 
製品の多くは取引先の仕様に合わせたオーダーメイドであり、同じコイルでも用途や性能要件が異なります。そのため、単に大量生産を行うのではなく、顧客の要望を踏まえて設計・製造・検査を一貫して行う体制を整えています。こうした細やかな対応が、長年の信頼関係を築く基盤となっています。
 
近年では、高周波領域でのノイズ抑制に特化した新製品の開発にも取り組んでいます。電子機器の高性能化に伴い、これまで以上に精度の高い部品が求められるようになりました。市場の変化に対応しながらも、同社は「品質を守る」という軸をぶらさず、一歩ずつ改良を重ねています。
 
「目立たない製品でも、なくてはならない技術をつくる」
それが、ウエノのものづくりを支える信念です。誠実な姿勢で技術を磨き続けることが、同社が長年にわたって選ばれ続ける理由となっています。
 

5.海外展開の経験と学び

株式会社ウエノが海外に生産拠点を設けたのは、事業環境の大きな変化がきっかけでした。
かつて主要取引先から事業停止を告げられ、事業の継続が難しい状況に直面したことが、海外生産への転換を考える契機になったといいます。
 
当時、日本国内での生産を維持することはコスト面で厳しく、社内では内職先や外部委託先を探しながら、なんとか製造を続けていました。その過程で、労働単価の安い地域での生産を模索し、中国に拠点を設ける判断に至りました。
 
海外進出は、当初から計画的に進めたわけではありませんでした。むしろ、外部環境の変化に対応するための「生き残りの選択」でした。しかし、この経験を通して、同社は生産体制を柔軟に組み替える力を身につけることになります。
 
現地では、同社のコイル製品が一定の評価を得たものの、すぐに模倣品が出回り、価格競争に巻き込まれるなど、苦い経験もありました。「海外で成功しても、すぐに真似されてしまう」という現実を痛感し、長期的な信頼関係を築ける取引先と関係を深めることの大切さを再認識したといいます。
 
その後、同社は無理な拡大を避け、日本国内のメーカーやその海外現地法人を中心に安定した取引を続けています。新しいコイル製品の販売についても、信頼できるパートナー企業との連携を重視し、「長く続く関係」を前提とした事業展開を進めています。
 
また、同社のコイルは、高周波領域でのノイズ抑制に優れた特性を持ち、今後はEVや自動運転、再生エネルギーといった新しい市場での活用可能性も期待されています。海外展開の過程で得た教訓は、同社の経営姿勢にも大きな影響を与えました。「規模よりも信頼」「短期よりも継続」という考え方が定着し、一つひとつの取引を丁寧に重ねる姿勢が、今のウエノの企業文化を形づくっています。
 

6.地域とともに歩む未来

株式会社ウエノの歩みには、常に「地域への感謝」という想いが流れています。 創業からこれまで、地元の協力企業や取引先、そして地域の人々の支えがあって事業を続けてこられたといいます。そのため、上野社長は「会社を大きくすること」のみならず、「地域とともに成長すること」にも重きを置いてきました。
 
同社では、社員一人ひとりが安心して働ける環境づくりを大切にしています。近年では、100億企業化計画の中で、賃上げなどの待遇改善を中長期的な方針として掲げています。社員の生活を支えることが、企業の成長につながるという考え方が経営の根底にあります。
 
また、上野社長はこれまでに、地域の経営者向け研究会で講演を行うなど、自身の経験を共有し、他の中小企業経営者との交流を通じて地域産業の活性化にも関わっています。こうした活動を通じて、「地域の製造業全体を良くしていきたい」という想いを形にしています。
 
社内では、「挑戦をやめない」という言葉が合言葉のように語られます。それは、大きな変革を意味するものではなく、日々の改善や工夫を積み重ねるという意味での挑戦です。創業当初から続くその姿勢が、企業文化として受け継がれています。
 
上野社長は、これからの経営について「守るだけではなく、次の世代にバトンを渡せる会社にしたい」と話しています。地元に根ざした製造業として、信頼される製品を作り続け、働く人や地域社会に還元していく。
 
その想いが、ウエノの未来を支える確かな軸となっています。

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執筆者名:アカウントパートナー推進部

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