100億企業化

【100億宣言】旭光電機株式会社、センシング技術を核にIoT・AI時代を切り拓く。製造業の未来を照らす「感じる力」とは

2026.04.20

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株式会社旭光電機 代表取締役社長 和田 貫志

FA(ファクトリーオートメーション)分野で70年以上の歴史を刻む旭光電機株式会社。鉄道車両向け部品や自動ドアセンサーで培った高度なセンシング技術を基盤に、近年はIoT・AIソリューション事業へと大きく舵を切った。

コロナ禍を第二の創業期と位置づけ、長年続いたOEM中心のビジネスモデルから脱却。自社ブランド「Lumiot(ルミオット)」を立ち上げ、製造業のDX化を支援する新たな挑戦を始めている。2028年に売上100億円を目指す同社が、いかにして変化の波を乗りこなし、未来への成長戦略を描いているのか。その軌跡と展望を追う。

企業情報
会社名
旭光電機株式会社
設立
1947年6月
従業員数
220名(2025年4月期)
事業内容
各種センサー / コントローラー及び、各種制御装置の開発・設計・製造
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01193-00.pdf

 

旭光電機株式会社 会社概要

創業から続く「技術者魂」と、40年進化する自動ドアセンサー

1947年の創業以来、旭光電機は鉄道車両の制御機器やブレーキ部品など、社会インフラの根幹を支える製品を数多く手掛けてきた。その堅実なものづくりの歴史において、大きな転換点であり、現在の技術力の象徴ともいえるのが、1985年に現社長が弱冠24歳で考案した自動ドアセンサーである。

当時、主流だったマットスイッチ式の自動ドアは、マットに乗った人間の体重を検知して開閉する仕組みだった。しかし、この方式では体重の軽い子どもや、車椅子利用者が検知されずにドアに挟まれてしまうという、人命に関わる重大な事故が後を絶たなかった。この社会課題を解決したいという強い想いが、新技術開発の原動力となった。

着目したのは、当時登場したばかりのマイコン(マイクロコントローラ)が持つ「状態を記憶できる」という特性である。光センサーから得られる光量の変化をマイコンに記憶させ、そのパターンから「人」や「物」の通行を正確に判断する。この革新的なアイデアにより、通行対象の重量に依存しない、安全で高精度な検知が可能となった。このセンサーは40年近く経った今でも改良が重ねられ、国内シェア70%を誇る同社の主力製品として、その地位を揺るぎないものにしている。さらに、協働ロボットに近づく人体を検知するセンサーなどにも応用され、その技術は多様な分野に展開されている。一つの技術を深く追求し、時代のニーズに合わせて進化させ、社会課題の解決に繋げる。この姿勢こそ、同社のものづくりの原点として、今なお脈々と受け継がれている。

創業から続く「技術者魂」と、40年進化する自動ドアセンサー

下請け100%からの脱却。二度の転換期が促した事業構造改革

長年にわたり、同社は鉄道など産業機器事業を中心に、特定取引先への依存度が100%というビジネスモデルを続けてきた。安定した受注がある一方で、その構造は経営の自由度を縛り、将来的なリスクを内包するものでもあった。この状況を打破すべく、同社は二度の大きな事業構造改革を経験することになる。

一度目の転換期は2005年頃。特定の取引先に依存し続ける経営体質に対して、顧客から「1社に依存しない健全な経営」という指針が出された。ここから、事業の多角化によるリスク分散も視野に入れての新規顧客開拓に乗り出す。その試みの一つが、アサヒビールのビールディスペンサーに搭載される制御機器の開発だった。この挑戦は成功を収め、2020年までに関連製品を15万台以上出荷する主力事業へと成長。特定の業界に依存しない事業ポートフォリオの重要性を、身をもって知る貴重な経験となった。

そして二度目の、より劇的な転換期が、2020年以降のコロナ禍である。飲食店の休業や外出自粛の波は、ビール関連事業や鉄道事業に深刻な打撃を与えた。売上は大きく落ち込み、特定市場に依存することのリスク、そして顧客の要望に応えるだけのOEM事業の限界を改めて痛感させられた。この強烈な危機感が、守りの経営から攻めの経営へ、すなわち自社で市場のニーズを捉え、主体的に製品やサービスを開発・提供する「メーカー」への変革を強力に後押しする結果となったのである。

第二の創業期、DX・IoTソリューションで新たな価値提供へ

コロナ禍という未曾有の危機を、同社は「第二の創業期」と前向きに捉え、事業構造の抜本的な改革に乗り出した。その中核を成すのが、2021年から本格的に始動したDX・IoTソリューション事業である。長年培ってきたセンシング技術やFA(ファクトリーオートメーション)の知見を武器に、特に取引先の多い製造業が抱える「生産性向上」や「脱炭素化」といった課題を解決する、自社ソリューションの開発に注力した。

第二の創業期、DX・IoTソリューションで新たな価値提供へ

その象徴として生まれたのが、IoTソリューションブランド「Lumiot(ルミオット)」である。シリーズの主力製品の一つ「wattXplorer(ワットエクスプローラ)」は、既存の工場の分電盤に後付けするだけで、設備ごとの電力使用量や稼働状況をリアルタイムで「見える化」する。これまで熟練作業員の経験や勘に頼りがちだった生産管理を、客観的なデータに基づいて行えるようにすることで、非効率な電力消費の特定や、生産プロセスのボトルネック改善を強力に支援する。

ハードウェアの製造・販売を主戦場としてきた同社にとって、ソフトウェアやクラウドサービスを組み合わせたサブスクリプション型のソリューション事業は、まさに未知の領域であった。しかし、「自分たちの技術で、もっと世の中の役に立ちたい」という技術者集団としての純粋な想いが、この新たな挑戦を駆動させている。顧客の課題に寄り添い、共に解決策を創り上げていく。このプロセスそのものが、同社に新たな成長のDNAを植え付けている。

100億円企業への挑戦。宣言がもたらした採用と組織への好循環

2021年時点で約44億円だった売上を、2026年度には70億円超、そして2028年には100億円へ。この野心的な成長目標を社内外に明確に示すため、同社は「100億企業」を目指すことを高らかに宣言した。この背景には、経済産業省からの後押しもあったが、それ以上に「企業は成長し続けなければならない」という社長の強い信念があった。「従業員の生活を守り、地域社会に貢献するためには、常に成長を目指す姿勢が不可欠だ」と語る。

この宣言は、特に人材採用の面で絶大な効果を発揮している。全国的な知名度では大手企業に及ばないながらも、「100億円を目指して成長している」という明確なビジョンとストーリーが、成長意欲の高い学生たちの心を掴んだ。以前は年間1〜2名、あるいはゼロの年もあった新卒採用が、この宣言以降、コンスタントに5名規模にまで増加したのだ。

100億円企業への挑戦。宣言がもたらした採用と組織への好循環

さらに、採用戦略にも質的な変化が見られる。従来は開発部門を担う理系の学生が中心だったが、近年は営業や企画を担う文系の学生や、組織に新しい風を吹き込む女性も積極的に採用している。これは、長年の課題であった「おじさん社会」的な企業風土を根本から変革し、多様性のあるしなやかな組織を創りたいという経営の強い意志の表れである。「若い力、特に女性の活躍が、会社の風土を変え、次のイノベーションを生み出す」という期待が、この採用戦略には込められている。100億円という目標が、事業だけでなく組織にもダイナミックな成長の好循環をもたらしている。

技術開発への飽くなき探求。AI活用で拓く次のステージ

00億円企業への成長戦略、その根幹を支えるのは、言うまでもなく同社の生命線である技術開発力だ。特筆すべきは、社長自身が今なお開発の最前線に立ち、約20名の精鋭からなる開発部門を率いて、新規領域のプロジェクトを自ら推進している点である。

近年、最も注力しているのが、AI(人工知能)の活用である。2025年度には、全社員が日常業務で利用できるよう、ビジネス向けの生成AIツールを全社導入。単なるツール提供に留まらず、社員が活用事例を発表し合う場を設けるなど、全社的なAIリテラシーの向上と、業務効率化を本気で推し進めている。

もちろん、その視線は自社製品への応用へと向いている。インターネット接続が不安定な製造現場などでの利用を想定し、クラウドに依存しないローカルAI(エッジAI)基盤の開発や、マイクロソフトが提供するAIサービスとの連携などを通じて、既存製品の「知能化」に次々と着手。直近では、カメラ映像から来店者の属性(年代・性別)や感情(笑顔の割合など)を分析するソリューションを発表するなど、具体的なサービス開発も加速させている。創業以来のコア技術であるセンシング技術と、最先端のAI技術。この二つの融合が、同社を新たな成長ステージへと導こうとしている。

技術開発への飽くなき探求。AI活用で拓く次のステージ

4億円の設備投資を決断。未来への成長を止めない覚悟

100億円という目標達成には、IoT・AIといった新領域での挑戦に加え、既存事業の生産体制強化も不可欠となる。増加する需要に対応するため、同社は2026年、約4億円という大きな資金を投じて工場の増設を行うことを決定した。これは、2019年に現在の本社ビルを建設して以来となる、大規模な設備投資である。

技術開発への飽くなき探求。AI活用で拓く次のステージ

当初は国の中小企業向け補助金の活用も検討した。しかし、賃上げ達成が条件となるなど、未達の場合のペナルティリスクを懸念する経営陣の声もあり、最終的には自己資金と金融機関からの借入で実行することを決断した。そこには、「生産能力の向上が急務であり、補助金の採択を待っていては間に合わない」という、事業機会を逃さないためのスピードを最優先する経営判断もあった。

安定した財務基盤と、長年にわたって築き上げてきた3つのメガバンクをはじめとする金融機関との良好なリレーションシップが、この迅速かつ大胆な意思決定を可能にした。目先の利益やリスク回避に安住するのではなく、未来の成長のために必要な投資は臆さず行う。この積極果敢な姿勢こそが、旭光電機が70年以上にわたって変化の激しい時代を乗りこえ、力強い成長を続ける原動力となっている。

まとめ

旭光電機は、社会インフラを支える堅実な鉄道部品メーカーから始まり、自動ドアセンサーという独自技術で成長の礎を築き、そして今、IoT・AIを駆使するソリューションプロバイダーへと、ダイナミックな変貌を遂げようとしている。そのすべてのステージの根底には、創業以来少しも揺らぐことのない「優れた技術で社会課題を解決する」という、誠実な技術者精神が息づいている。

100億円企業への道は、決して平坦ではない。それは既存事業の単純な延長線上にはなく、DX、IoT、AIといった未知の領域へ果敢に挑戦し、顧客と共に新たな価値を創出していくことでしか拓かれないことを、経営陣は深く理解している。コロナ禍という未曾有の逆境を「第二の創業」の好機と捉え、力強く未来へ舵を切った同社の挑戦は、変革の時代に挑む多くの製造業にとって、確かな道標となるに違いない。

 

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