100億企業化
【100億宣言】株式会社エコムが描く、メンテナンスと技術開発で築く未来へのロードマップ
2026.04.09
▼『100億企業を実現した5人の経営者の成功事例』 無料ダウンロードはこちら

静岡県浜松市に拠点を置く株式会社エコムは、工業用熱技術の分野で独自の地位を築いている。1985年の創業以来、ガスバーナーのメンテナンス事業を収益の根幹に据えながら、顧客の課題解決に貢献するテストセンター事業をもう一つの柱として成長させてきた。
景気に左右されにくい安定したストック収益と、未来の大型受注を創出するフロー事業。この両輪を巧みに回しながら、同社は「2030年 売上高41億円」という目標を掲げ、さらなる飛躍を目指している。これは、単なる数字の目標ではなく、2023年に新規上場を果たした名古屋証券取引所メイン市場の上場企業として時価総額100億円という企業価値の向上を見据え、技術と人材への投資を通じて製造業の未来を支えるという、強い意志の表れである。
- 企業情報
- 会社名
- 株式会社エコム
- 設立
- 1985年8月
- 従業員数
- 75名
- 事業内容
- 加熱設備の開発・設計・製造・メンテナンス
- 100億宣言
- https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/00617-00.pdf
- 会社HP
- https://ecom-jp.co.jp/
目次
創業の原点、メンテナンス事業という揺るぎない基盤
株式会社エコムの歴史は、1985年に現社長・髙梨氏の義父である創業者が、たった一つの工具箱を手にガスバーナーのメンテナンス事業を立ち上げたことに遡る。40歳を過ぎてからの挑戦であり、当初は工場も従業員もいない状態からのスタートだった。できることは、顧客の元へ駆けつけて修理を行うことだけ。
しかし、この「現場での顧客課題解決」こそが、30年以上経った今も同社のDNAとして脈々と受け継がれる原点となった。現在、このメンテナンス事業は全社売上の約4割、そして利益の約半分を稼ぎ出す、経営の揺るぎない土台となっている。景気の波に左右されにくいストック型のビジネスモデルであり、たとえ他の事業部門の受注が落ち込んだとしても、会社全体が揺らぐことのない安定性を担保している。
この盤石な収益基盤があるからこそ、同社は後述するテストセンターのような、すぐには利益に繋がらない長期的視点に立った大胆な先行投資を可能にしてきた。髙梨社長が「機械部門の受注がなくても会社は潰れない。だから焦りがない」と語るように、この事業は経営の安定だけでなく、挑戦を続けるための精神的な余裕も生み出しているのだ。

顧客獲得のエンジン、「テストセンター」という発明
同社の急成長を語る上で欠かすことのできないのが、顧客の熱に関する課題を実証実験で解決する「テストセンター」の存在である。その始まりは、工場の片隅に中古の部品をかき集めて作った一台のテスト機であった。当時、髙梨社長はコンサルタントと共に「大企業が中小企業へ開発代行を依頼してくるはずがない」という社内の懐疑的な声に直面しながらも、「とにかく一台作ろう」とプロジェクトを断行した。
この決断が、後に数十億円規模のビジネスへと繋がる。テストセンターの最大の特徴は、顧客が自社の製品や材料を持ち込み、同社のエンジニアと共に最適な熱処理の条件を見つけ出せる点にある。本来であれば数百万円、数千万円の費用がかかるこのプロセスを、同社は安価、あるいは実質無料で提供し、その代わりとして最終的な設備受注に繋げるという革新的なビジネスモデルを構築した。当初は無料で提供していたテストレポートも、専門性の高いエンジニアが入社するにつれて品質が向上。
現在では有料サービスとして確立し、それ自体が収益源の一つにもなっている。この仕組みは、顧客にとっては「稟議書に添付するデータを無料で集められる」という絶大なメリットとなり、口コミで評判が拡散。今ではテストセンター経由の案件が全受注の約7割を占め、同社の成長を牽引する中核エンジンとして機能している。
異業種への挑戦を支える、技術の「横展開」という戦略
エコムのもう一つの強みは、特定の業界で培った技術やノウハウを、全く異なる分野へ展開する応用力にある。もともと同社は、品質やコスト、安全性への要求が極めて厳しい自動車業界を主要な取引先として成長してきた背景もあり、この過程で蓄積された高度な熱技術やコスト意識は、同社の貴重な資産となっている。
近年の、自動車業界の投資が不安定になる中で、同社はこの資産を武器に、半導体や化学、電気部品といった新たな市場の開拓に乗り出している。例えば、半導体業界の顧客から「加熱プロセスを改善したいが、実績はあるか」と問われた際、同社は「経験はないが、テストセンターで一緒に検証しましょう」と提案する。自動車業界のノウハウを応用し、実証データに基づいて具体的な省エネ効果や時間短縮といったメリットを提示することで、これまで取引のなかった業界の信頼を着実に獲得してきた。技術を陳腐化させることなく、新たな市場で価値を再定義する。この「横展開」の戦略が、同社に持続的な成長をもたらしている。

メンテナンス部門から始まる、独自の技術者育成システム
企業の成長は、それを支える人材なくしてはあり得ない。エコムでは、独自のキャリアパスを通じて、現場に強く、顧客から信頼される技術者を育成している。多くの新入社員は、まず創業事業であるメンテナンス部門に所属し、顧客の現場で修理や調整の経験を積むことが奨励される。ここでは、機械の知識だけでなく、顧客が抱える課題を直接肌で感じ、コミュニケーション能力を磨く。この経験は、その後のキャリアにおいて、設計や営業といったどの部門に進んでも「顧客視点」という揺るぎない軸となる。
社内では「メンテナンスができる人材は価値が高い」という思想が経営層から一貫して発信されており、単なる下積みの期間ではなく、プロフェッショナルへの第一歩として明確に位置づけられている。髙梨社長は「設計者であっても、営業であっても、必ずメンテナンスの重要性を理解してもらう。我々のお金はここから生まれている」と、その哲学を語る。この基盤があるからこそ、同社のエンジニアは机上の空論ではない、現場に根差した提案ができる。この育成システムこそが、高品質なサービスを維持し続けるための生命線である。

「人が辞めない会社」へ、働きがいを醸成する環境づくり
持続的な成長のためには、優秀な人材が定着し、能力を最大限に発揮できる環境が不可欠である。髙梨社長自身、事業継承後の苦しい時期に、採用した人材が次々と辞めていくという辛い経験をした。その経験から、「事業モデルや戦略の上に、社員が気持ちよく働ける環境がなければすべてが崩れる」という教訓を得た。現在、同社は福利厚生の充実や職場環境の改善に力を注いでおり、特にここ数年の新卒社員の離職率はゼロに近い水準を維持している。その象徴的な取り組みの一つが、毎日メニューの変わる、美味しく健康的な社員食堂の存在だ。

これは単に食事を提供するだけでなく、社員同士のコミュニケーションを活性化させ、一体感を醸成する重要な場としても機能している。かつては個人の能力に依存する「属人的」な組織であったが、事業継承を機に、チームで成果を出す組織へと大きく舵を切った。経営トップが「社員が気持ちよく働ける環境作りが一番大切だ」と繰り返し語るように、個々の社員を尊重し、働きがいを追求する姿勢が、組織全体のパフォーマンスを向上させる好循環を生み出している。
100億円企業への道筋、M&Aと拠点拡大という成長戦略
株式上場によって得た社会的信用と資金調達力を背景に、「2030年 売上高41億円」という目標達成に向け、同社はオーガニックな成長に加え、M&Aや拠点拡大を積極的に推進している。これまでの成長は、既存事業を地道に伸ばすことで実現してきたが、非連続な成長を遂げるためには新たな打ち手が必要である。
その柱の一つが、メンテナンス事業のサービスエリア拡大だ。現在は主に浜松本社を基点としているが、緊急度が高い不具合が遠方で発生した場合の距離的な制約を乗り越えるため、遠隔地のニーズに応えるべく、各エリアでの拠点開設を推進しており、2027年の関東支店の支店開設が決定している。
また、増加する需要に対応するため、浜松市内での工場新設も計画している。これにより、産業システム部門の生産能力を大幅に増強し、より大規模な案件にも対応できる体制を整える。これらの投資は、すべて「顧客の課題解決」という原点に繋がっている。自社の強みを最大化するための戦略的な投資によって、同社は100億円企業への道を確かなものにしようとしている。
経営者が向き合う次なる挑戦、未来を創る出会いの探求
安定した事業基盤と明確な成長戦略を持つエコムだが、髙梨社長は現状に満足することなく、次なる課題を見据えている。それは、M&Aやアライアンスにおける「良きパートナーとの出会い」である。同社はオーダーメイドの装置開発を得意とする一方、量産品や、ヒーター、制御機器といった部品そのものを製造・販売するビジネスモデルにはノウハウがない。
「自分たちが想像もできないような領域」に強みを持つ企業との連携が、会社の更なる成長に不可欠だと考えている。上場企業として厳格なガバナンス体制が構築され、社長自身が未来の成長の種を見つけ出すことに集中している。「社長の仕事は、会社の未来を創ること」と語るように、どの企業と手を取り、どのような新しい価値を創造できるのか、その可能性を常に探求している。この探求こそが、社長に課せられた最大のミッションであり、同社の未来を左右する最も重要な鍵となる。

まとめ
株式会社エコムの強さは、一見すると相反する二つの事業、すなわち安定収益を生む「メンテナンス」と、未来の成長を創出する「テストセンター」が、見事に噛み合い、互いを支え合っている点にある。創業以来のDNAである「顧客課題の現場解決」をすべての事業の根幹に据え、そこで培った技術を異業種へ横展開することで、持続的な成長モデルを確立した。そして、そのすべてを支えるのが、「人が辞めない会社」という理念の下、独自の育成システムによって育まれた、現場に強い人材である。100億円という目標は、彼らににとって単なる通過点に過ぎない。エコムはこれからも、技術と人材への投資を続け、日本の製造業に不可欠なパートナーとして、その存在価値を揺るぎないものにしていくだろう。
100億企業化
コンサルティングに
ついてはこちら
お問い合わせ
CONTACT

