100億企業化

【100億宣言】株式会社ヒロホールディングス モバイル事業の基盤からXRの頂へ。3億円の失敗を糧に「価格決定権」を握る多角化戦略の深層

2026.04.09

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向山 孝弘

奈良県に拠点を構える株式会社ヒロホールディングス。モバイルショップの代理店事業で築いた強固な経営基盤を軸に、レザーブランド、そしてAI/XR技術を駆使したソリューション事業へと、大胆な事業ポートフォリオの転換を進めている。
 
過去の失敗から得た明確な哲学に基づき、次の成長エンジンとしてAI/XR事業「ZETA」に巨大な可能性を見出す同社。その挑戦は、単なる多角化ではなく、自社の未来を自らの手で創造するための、価格決定権を巡る壮大な物語である。

企業情報
会社名
株式会社ヒロホールディングス
設立
1990年12月
従業員数
87人(2025年8月現在)
事業内容
モバイル事業(ソフトバンク代理店運営)、DX関連商品開発・販売(Zeta事業)
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/00680-00.pdf

 

本社ビル外観

原点はホテルマン。顧客接点から商機を見出した商社としての船出

代表取締役社長、向山 孝弘氏のキャリアは、ホテルマンとして始まった。大学卒業後、約4年間ホテル業務に従事し、顧客へのサービスとは何かを現場で学んだ。しかし、その安定した道を選ぶことなく、25歳で独立。ホテルという閉じた世界から、より広いビジネスの世界へと漕ぎ出すことを決意する。
 
創業当初の事業は、ホテルでの経験を直接活かせる商社事業だった。海外からユニークな製品を輸入し、かつての勤務先でもあったホテルや百貨店などへ卸す。このBtoBの商流を自ら開拓する中で、ビジネスの基本となる需給の読み、および交渉の術を体得していった。これが、後に多角的な事業を展開するヒロホールディングスの原点である。

通信自由化の奔流へ。既存チャネルを武器に掴んだ最初の成功

商社として着実に歩みを進める中、日本社会に大きな地殻変動が起きる。通信自由化だ。この規制緩和の波を見逃さず、向山社長は新たな事業機会を模索する。着目したのは、創業以来培ってきたホテルという既存の販売チャネルだった。
 
ホテルに通信アダプターを設置すれば、宿泊客はより安価に電話を利用できる。このシンプルな顧客価値を起点に、アダプター設置事業に参入。これが、後に同社の屋台骨となる通信事業への記念すべき第一歩となった。1994年、携帯電話の売り切り制が解禁されると、この勢いはさらに加速。関西エリアを基盤に、複数の通信キャリアを扱う併売店として携帯電話販売事業を本格的に開始し、時代の寵児ともいえる通信業界で、確かな存在感を築き上げていった。

会議風景

「涙ながらに語る熱に賭けた」。ソフトバンク孫正義氏との出会いという転換点

同社の成長ストーリーにおいて、ソフトバンクグループ創業者である孫正義氏との出会いは、決定的な転換点として刻まれている。まだソフトバンクが携帯電話事業に本格参入する以前、ADSL事業「Yahoo! BB」の黎明期に、向山社長は知人の紹介で孫氏と会う機会を得た。
 
そこで語られたのは、日本の通信インフラを根底から変えるという壮大なビジョンと、それを実現しようとする圧倒的な情熱だった。「手を握られ、涙ながらに未来を語るその熱量に、とてつもない可能性を感じた」。論理や計算だけでは測れない、一人の人間の「熱」が、向山社長の心を強く揺さぶった。この出会いを機に、同社は当時主力だった通信キャリアから、ソフトバンクへと事業の舵を大きく切ることを決断する。まだ誰もその未来を確信できていなかった時代に、経営者としての直感を信じ、未来の勝者に賭けたのである。

全国展開の逆張り。奈良で築いた「ドミナント戦略」という牙城

ソフトバンクとの強力なパートナーシップを武器に、同社はモバイルショップの展開を加速させる。しかし、その戦略は当時多くの同業他社が採用していた全国への拠点分散とは真逆を行くものだった。向山社長が選択したのは、自社の地盤である奈良県内とその周辺エリアに集中的に出店し、特定地域での支配力を高める「ドミナント戦略」である。
 
「当時の我々の資金力では、全国に手を広げても中途半端になり、大手に勝つことはできない。それならば、自分たちが確実に守りきれるエリアで圧倒的な存在になるべきだと考えた」。この一点集中戦略は、限られた経営資源の投下効率を最大化させ、地域内でのブランド認知と、店舗間の人材交流やサポート体制といった運営効率を飛躍的に高めた。結果として、奈良県下でトップクラスのシェアを誇る盤石な収益基盤を確立。この安定したキャッシュフローが、後の新規事業への大胆な挑戦を支える、何より強力な礎となったのである。

エントランス風景

3億円の損失が刻んだ事業原則。「ストック」と「シナジー」なき事業への決別

モバイル事業で成功を収める一方、同社は新たな成長の柱を模索していた。携帯電話のアクセサリー販売から派生したレザー事業「Rebonally」は、本業とのシナジーを見込める事業として順調に立ち上がった。しかし、すべての挑戦が成功したわけではない。かつて、FC地域エリア本部として鳴り物入りで展開したアイスクリーム事業「ゴールデンスプーン」で、大きな蹉跌を経験する。
 
「本業とのシナジーが全くなく、我々にノウハウもない。そして何より、我々の事業の根幹である『ストック性』がなかった」。初期投資を回収し、利益を積み上げていくストック型のビジネスモデルとは異なり、日々の売上に依存するフロー型の事業は、安定性に欠けていた。最終的に3億円もの大きな損失を計上し、同社はこの事業からの全面撤退を余儀なくされる。この手痛い失敗から、向山社長は揺るぎない事業原則を打ち立てる。それは、①本業とのシナジーがあること、②継続的な収益が見込めるストック型のビジネスモデルであること。この二つの原則は、以降のヒロホールディングスのM&Aや新規事業開発における、絶対的な判断基準となっている。

「キャリア依存」からの脱却。価格決定権を握るための必然「ZETA」

モバイル代理店事業は安定したストック収益を生む一方、通信キャリアの方針変更によって手数料が改定され、利益率が大きく変動するという構造的な課題を常に抱えていた。「どれだけ努力しても、自分たちで価格をコントロールできない。このままでは、本当の意味での成長は望めない」。その強い危機感から、「自分たちで価格決定権を握れる、青天井の事業を創らなければならない」という結論に至る。その必然の帰結として、2019年にAI/XRソリューション事業「ZETA(ゼータ)」は生まれた。

技術開発の様子

ZETAは、モバイル事業とのシナジーを徹底的に意識して設計されている。例えば、同社が提供するデジタルサイネージ、AI監視カメラといったソリューションの多くは、通信SIMを内蔵している。これにより、Wi-Fi環境が整備されていない屋外や、セキュリティが厳しい施設内でも、安定した遠隔操作やデータ通信を実現。モバイル事業で長年培ってきた通信インフラの知見と調達力が、ZETAの事業競争力を強力に下支えしているのだ。

ZETAが拓く4つの事業領域。テクノロジーで社会課題を解決する

ZETA事業は、現在4つの主要領域で社会実装を進めている。
 
第一に、商業施設やホテル、博物館などに常設型のプロジェクションマッピングを提供し、空間の価値を最大化する「DXRe空間」。季節やイベントに応じてコンテンツを変化させ、リピート来場を促す。
 
第二に、ドローンショーやVR・ARなど、屋内外イベントの空間演出を手がける「エンターテイメント」。記憶に残る圧倒的な体験価値を創造する。
 
第三に、国宝や重要文化財といった、経年劣化する貴重な資産を3Dスキャンなどでデジタルデータとして永久保存し、新たな活用法を提案する「デジタルアーカイブ」。
 
そして第四に、AIカメラによる不審行動の検知で万引きを未然に防いだり、山火事の兆候を早期に発見したりと、安全・安心な社会の実現に貢献する「防犯・防災」。
 
これら4つの柱は、単に最新技術を誇示するのではなく、それぞれが明確な社会課題の解決を見据えている。ZETAの挑戦は、テクノロジーで社会を豊かにするための「道具」として捉え、具体的な価値へと転換していく試みなのである。

3Dキャプチャ風景

ZETAを飲み込む可能性。「XR」が拓く未体験のエンターテイメント

ZETAが次なる成長の核として見据えるのが、「XR(クロスリアリティ)」技術の本格的な事業化だ。VR(仮想現実)がゴーグルによって完全に隔離されたデジタル空間を体験するのに対し、XRは現実の風景にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。現実世界とデジタルが融合した、新たな体験を生み出す。
 
向山社長は「XRは、これまでのZETA事業すべてを飲み込むほどの巨大なポテンシャルを秘めている」とその可能性に賭ける。現在、同社は複数の大手企業とも連携しながら、このXR技術を活用した大規模なエンターテイメント事業の準備を水面下で進めている。それは、昨今のような作り込まれた空間演出とは異なり、XR技術によって誰もが日常空間で未体験の遊びを体験できる、まったく新しいエンターテイメントだ。「一年以内には、何らかの形で発表できるだろう」。その言葉からは、自らが新たな市場を創り出すことへの確かな自信がうかがえる。

ショールーム内装

変革を牽引する「外部の血」。独立前提採用とCVCによるエコシステム構築

モバイル事業から AI/XR事業へ。この大きな事業構造の転換を成功させる上で、最大の鍵となるのが「人材」である。しかし、モバイルショップで高い販売スキルを持つ人材が、そのまま AI/XRの専門家になれるわけではない。この構造的な課題に対し、同社は旧来的な日本企業の発想に捉われない、大胆な人材戦略で挑んでいる。
 
その象徴的な取り組みが、「2年後の独立」を前提とした若手人材の採用だ。起業家精神に溢れる優秀な若者を社内に招き入れ、ZETA事業の最前線で裁量権を持って活躍してもらう。彼らがもたらす新しい視点や技術、および挑戦への渇望が、組織全体に化学反応を起こし、変革のドライバーとなる。
 
さらに、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の仕組みを整え、シナジーが見込める外部のスタートアップへの出資も積極的に行っている。自前主義に固執せず、外部の才能や技術を柔軟に取り込むことで、ZETA事業を中心とした独自の技術エコシステムを構築し、変革のスピードを圧倒的に加速させているのだ。

一般市場への挑戦。65歳までの実現を見据えた、次なる頂

2022年、同社は東証TOKYO PRO Marketへの上場を果たした。しかし、これはゴールではなく、次なるステージへのスタートラインに過ぎない。向山社長の視線は、すでにその先にある一般市場へと明確に向けられている。「65歳までに、一般市場へのステップアップを成し遂げたい」。そのためには、ZETA事業を現在の数倍、数十倍の規模へと飛躍させ、企業価値を劇的に高めていく必要がある。
 
「人材、顧客、資本政策。課題は山積みだ。しかし、無理をして足元をすくわれた過去の失敗は二度と繰り返さない」。その言葉には、3億円の損失という痛みを乗り越えてきた経営者ならではの重みと覚悟が宿る。モバイル事業という安定した港から、AI/XRという未知の大海原へ。株式会社ヒロホールディングスの未来を賭けた挑戦は、今、まさに本格的な航海を始めようとしている。

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佐藤 大輝

執筆者名:佐藤 大輝

新卒で株式会社船井総合研究所に入社。医療機関向けのコンサルティングに従事し、入社3年目にして歯科コンサルタント部門MVP受賞。マーケティング全般を得意とし、集客のみならず採用、組織づくりなどのマネジメント分野においても、マーケティング視点を活かした戦略立案から実行サポートを行う。業界内の中小〜中堅規模のクライアントに対し、集客支援にとどまらず、組織変革を伴う事業推進を主導してきた。

コンサルティングを通じ、単に規模を拡大するだけでなく、人・社会の幸福を追求できる「強い企業」創りを目指す。事業の急成長に伴う組織の歪みや課題を、マーケティングとマネジメントの両輪で解決し、次なるステージへと飛躍する企業の確固たる礎を築いていく。

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