100億企業化

【100億宣言】株式会社フリースタイル、社会の“はみ出し者”を精鋭に変える「育成第一」経営の真髄

2026.04.09

▼『100億企業を実現した5人の経営者の成功事例』 無料ダウンロードはこちら

株式会社フリースタイル 青野 豪淑

企業情報
会社名
株式会社フリースタイル
設立
2006年9月
従業員数
275名(契約・派遣社員、フリーランスを含む)
事業内容
ITソリューション事業、システム開発事業、ゲーム事業
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/00636-00.pdf

 

名古屋を拠点に、ITソリューション、ゲーム開発、システム開発の三事業を展開する株式会社フリースタイル。
 
同社は、いわゆる「エリート」とは異なる経歴を持つ人材を積極的に採用し、独自の教育哲学で一流のプロフェッショナルへと育成することで、急成長を遂げてきた。創業以来の「人」を起点とした経営は、大ヒットゲーム『オバケイドロ!』を生み出し、従業員の自律的な挑戦を次々と事業の柱へと昇華させている。
 
年商100億円を目指す「100億宣言」も、その成長の通過点に過ぎない。社会の片隅に埋もれた原石を磨き上げ、輝かせることで自らも成長する。フリースタイルの経営モデルは、企業の存在意義そのものを問い直す力を持っている。

FREE STYLE ロゴ

「才能の無駄遣い」への憤りが原動力

フリースタイルの根底にある思想は、創業者である青野氏の原体験に深く根差している。大阪市東成区に生まれ、住之江区で育った青野氏。その幼少期は決して恵まれた環境とは言えなかった。
 
周囲の友人たちは、聡明であっても家庭の経済的な事情で大学進学を諦め、多くが日雇いの仕事や運転手といった限られた選択肢の中で生きていく。彼らが「自分の生活や人生を変えるのは難しい」と、自らの可能性に蓋をしてしまう現実。世の中には成功物語が溢れているが、それはまるで別世界の夢物語として語られる。
 
青野氏の目には、それが「才能の無駄遣い」そのものに映っていた。彼らに才能がなかったわけではない。ただ、きっかけがなかっただけだ。この社会構造に対する静かな怒りと問題意識が、フリースタイル創業の原点となった。
 
19歳で偶然手にした成功哲学の本をきっかけに、一人の師と出会い、ビジネスの原理原則を学んだことで、人生は変えられると確信。自らが経験したように、環境によって閉ざされた才能を開花させるための“器”をつくる。その決意が、2006年のフリースタイル設立へと繋がっていく。

「即戦力採用に執着しない」 逆張りから生まれた人材育成モデル

IT業界は、常に「即戦力」を求める。優秀な経験者を高待遇で獲得し、短期的な成果を追求するのが一般的だ。
 
しかし、青野氏が20代で身を置いたIT企業では、そのモデルの限界を目の当たりにする。中小企業にとって、大手企業との資金力勝負で経験者を採用し続けることは、「焼け石に水」の消耗戦に他ならない。採用できたとしても、より良い条件を提示する企業へすぐに引き抜かれてしまう。
 
ならば、誰も手を出さない領域にこそ勝機がある。フリースタイルが導き出した答えは、「未経験者」の採用と育成だった。それも、他の企業が採用選考で「落とす」ような、下位25%の人材、いわゆるヤンキーや引きこもりといった経歴を持つ若者たちを、あえて採用ターゲットに据えた。
 
同社は、彼らをITエンジニアとして育成し、SES(システムエンジニアリングサービス)事業を通じて実務経験を積ませるという、独自のモデルを構築。

教育の様子

SESは他社への技術提供の場であると同時に、フリースタイルにとっては最高の「教育の場」なのだ。3年間の実務経験を通じて技術と継続力を身につけた後、本人の希望に応じて次のキャリアへと進む。この逆張りの採用戦略こそが、同社の競争力の源泉となっている。

スキルより「モラルとやる気」――“個”の再生を担う執念の教育

フリースタイルが採用する下位25%の人材は、ITスキル以前に、社会人としての基礎的な部分に課題を抱えているケースが少なくない。遅刻は当たり前、やる気が見えず、時には組織の和を乱す「トキシック・ワーカー(有害な従業員)」となる可能性も秘めている。
 
創業当初、青野氏たった一人で、彼らの教育に心血を注いだ。その教育内容の8割は、ITスキルではなく、「モラル」と「やる気」の醸成に割かれた。なぜ働くのか、社会にどう貢献するのか。人間としての筋道や在り方を説き続ける、それはまるで父親が子に教え諭すような、執念ともいえる営みだった。
 
特に「やる気がない」というZ世代にも通じる課題に対し、同社は「やる気を与える」ことを企業の使命と捉え、世界でも類を見ない挑戦を続けた。
 
その教育手法はユニークだ。例えば、社員のモチベーションを管理する専門チームには、コミュニケーション能力に長けた人材を配置し、社員が前向きに働ける環境を徹底的に作り上げる。
 
こうした一見、非合理的とも思えるような“人間臭い”アプローチこそが、彼らの心を動かし、眠っていた潜在能力を引き出す鍵となっている。

「やりたいことをやれ」――精鋭エンジニア集団が生んだ大ヒットゲーム

フリースタイルの教育は、単なる「兵隊」を育てるものではない。創業から約10年、SESの現場で地獄の底から這い上がってきたエンジニアたちは、愛知県でも指折りの技術力と、何事にも屈しない強靭な精神力を手に入れていた。
 
彼らの中から、「いつまでも他人の下請け仕事はやりたくない」「自分たちの力で何かを創り出したい」という声が上がるのは、自然な流れだった。青野氏の答えはシンプルだった。「やりたいことがあるなら、やってみろ」。その言葉を信じ、数名のエンジニアたちが立ち上げたのがゲーム開発事業だ。

ゲーム開発の様子

会社が事業計画を立ててトップダウンで命令するのではない。社員の「やりたい」という内発的な動機を起点に、事業が生まれる。まさに「フリースタイル」という社名を体現する瞬間だった。彼らにすべてを任せ、放置ともいえるスタイルで見守る中、Nintendo Switch™用ソフト『オバケイドロ!』は生まれた。
 
かつて社会に不満を抱いていた若者たちが、今度は世界中の子供たちを熱狂させるゲームを創り出した。この事実は、フリースタイルの教育哲学の正しさを証明する、何よりの証となった。

属人的な教育を組織の力に変えた5年間の改革

創業から15年間、青野氏がほぼ一人で担ってきた教育体系。しかし、企業規模が拡大するにつれ、その属人的な手法は限界を迎える。
 
そこで約5年前、大きな組織改革が断行された。青野氏の頭の中にあった教育の“骨組み”を分解し、人事部主導の「仕組み」として再構築したのだ。モチベーション向上を専門とするチーム、モラル教育を担うチーム、そして純粋な技術指導を行うチーム。

オフィス内業務風景

各機能が専門特化し、連携することで、かつて社長一人のカリスマ性に依存していた教育は、組織として安定的に提供できる強力なシステムへと進化した。この改革により、フリースタイルの成長は一気に加速する。
 
未経験者をプロのエンジニアへと育成するノウハウが体系化され、再現性が生まれたことで、年間80名規模の採用計画も現実のものとなった。それは、創業者の「愛」ともいえる理念が、組織のDNAとして完全に根付いたことを意味していた。
 
この強固な人材育成基盤こそが、100億円企業という次のステージへ向かうための、最も重要なエンジンとなっている。

権限移譲を徹底する経営哲学

「今の僕は、社内で一番給料が高いニートですよ」。
 
青野氏は、自らの役割をそう表現する。かつては自らがプレイングマネージャーとして現場のすべてを把握していたが、約5年前に経営の仕組みが完成して以降、ほとんどの業務を部下に任せている。
 
この一見自虐的な言葉の裏には、徹底された権限移譲の経営哲学が隠れている。「社長が『あれをやれ、これをやれ』と命令するよりも、社員が『これをやりたい』と自ら言い出したことの方が、生産性は圧倒的に高い」。これは、長年の経験から得た揺るぎない確信だ。
 
部下を信じて任せる。各部門の責任者には、他部門への口出しを禁じ、自らの領域に専念させる。部門間で摩擦が起きた際の“交通整理”こそが、今の自身の主な仕事だと語る。
 
この徹底した権限移譲の文化が、社員の自律性を育み、「ゲームをやりたい」「AIを研究したい」といった新たな挑戦を生み出す土壌となっている。社長が「何もしない」ことで、会社は成長していく。この逆説的な真理を、フリースタイルは体現している。

ゲームの次に狙うAI・アプリケーション開発への挑戦

ゲーム事業の成功は、フリースタイルに大きな自信と収益をもたらした。しかし、同社は現状に安住しない。ゲーム事業で培った30名以上の優秀なエンジニアに加え、SES部門からは次々と新たな才能が育っている。
 
彼らの有り余るエネルギーと挑戦意欲を、次のどこへ向けるのか。それが現在のフリースタイルの最大のテーマだ。今、社員たちから数多く声が上がっているのが、AI(人工知能)の研究開発や、実用的なアプリケーション開発だ。
 
ゲームとは異なり、BtoBのパッケージ商品などは、一度軌道に乗れば安定した高収益が見込める。同社は、こうした新たな事業の種に、会社の利益を惜しみなく投資していく方針を固めている。
 
もちろん、新規事業の8割は失敗に終わるかもしれない。しかし、残りの2割が当たればいい。ゲーム事業を成功させたのと同じように、数十人のチームに「好きなものを作れ」と任せる。
 
3年後には、きっと何かが生まれているはずだ。この生みの苦しみを伴う挑戦こそが、フリースタイルを次のステージへと押し上げる原動力となる。

社内レセプション

「100億は通過点」――人が育ち、事業が生まれるフリースタイルの未来像

100億宣言、そのきっかけは、意外にも部下からの「社長、こんな補助金があるらしいですよ」という一言だった。
 
青野氏にとって、100億円という数字は、厳密な逆算計画の末にある目標というより、自然な成長の先にある「通過点」という認識だ。同社の経営は、決算書と睨めっこする一般的なスタイルとは一線を画す。
 
社員一人ひとりの能力を可視化し、その平均値が上がれば、自ずと会社全体の売上も向上するという思想に基づいている。この「人」を起点とした経営を続ける限り、成長は止まらない。ゲーム事業がそうであったように、新たに立ち上がったシステム開発部から、5年後には大きなビッグウェーブが生まれるかもしれない。
 
フリースタイルの究極のビジョンは、売上規模の拡大そのものではない。社会で埋もれていた人材を発掘し、教育によってプロフェッショナルへと育て上げる。
 
成長した彼らが自らの意思で新たな事業を創造していく。この「人が育ち、事業が生まれる」という好循環を、永続的に回し続けること。それこそが、フリースタイルが目を目指す未来の姿だ。

まとめ

フリースタイルの物語は、多くの企業が抱える人材難やイノベーションのジレンマに対する、一つの解を示している。
 
即戦力となる経験者や、高学歴なエリートだけが企業を成長させるわけではない。むしろ、社会の基準では評価されにくい人材にこそ、無限の可能性が眠っている。
 
彼らを信じ、時間と愛情をかけて育てること。そして、育った人材に自由な挑戦の機会を与えること。その一見遠回りに見える経営こそが、結果として最も強固な事業基盤と、尽きることのない成長エンジンを創り出す。
 
フリースタイルの挑戦は、これからも多くの企業に勇気と示唆を与え続けるだろう。

▼『100億企業を実現した5人の経営者の成功事例』 無料ダウンロードはこちら

佐藤 大輝

執筆者名:佐藤 大輝

新卒で株式会社船井総合研究所に入社。医療機関向けのコンサルティングに従事し、入社3年目にして歯科コンサルタント部門MVP受賞。マーケティング全般を得意とし、集客のみならず採用、組織づくりなどのマネジメント分野においても、マーケティング視点を活かした戦略立案から実行サポートを行う。業界内の中小〜中堅規模のクライアントに対し、集客支援にとどまらず、組織変革を伴う事業推進を主導してきた。

コンサルティングを通じ、単に規模を拡大するだけでなく、人・社会の幸福を追求できる「強い企業」創りを目指す。事業の急成長に伴う組織の歪みや課題を、マーケティングとマネジメントの両輪で解決し、次なるステージへと飛躍する企業の確固たる礎を築いていく。

関連するDL資料

関連するセミナー

もっと読む→

100億企業化
コンサルティングに
ついてはこちら

お問い合わせ

CONTACT

CONTACT FORM