100億企業化

【100億宣言】「公器」の覚悟が拓いた再生の道。つばさホールディングス、業界の未来を担う挑戦

2026.03.26

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かつて年間6,000万円もの赤字が積み重なり続け、二つの労働組合との対立で身動きが取れなくなっていた運送会社。それが今、売上100億円という大きな目標を掲げ、物流業界の未来を担う企業グループへと変貌を遂げようとしている。つばさホールディングス株式会社。これは、一人の経営者が「会社は公器である」という覚悟を決めた時から始まった、絶望と再生、そして未来への挑戦を綴る物語である。

企業情報
会社名
つばさホールディングス株式会社
設立
1973年8月
従業員数
460名
事業内容
ロジスティクス事業・モビリティ事業・食品流通加工事業・リパック事業・発送代行事業等
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01431-00.pdf

 

存亡の危機から始まった再生の物語

現在のつばさホールディングスの母体である「高栄運輸」は、2011年当時、深刻な経営危機に瀕していた。社内に二つの労働組合が存在し、その対立は激化。ガチガチに固められた協定によって経営の自由度は完全に失われ、いかなる努力も虚しく毎月500万円の赤字を垂れ流す構造に陥っていた。年間6,000万円もの損失が積み重なり、未来の成長どころか、企業の存続すら危ぶまれる状況。当時のオーナーは会社の売却を望んでいたが、この複雑で厄介な問題を前に、買い手はどこにも現れなかった。
 
この誰もが匙を投げた案件の再生を託されたのが、現社長の猪股浩行氏である。猪股氏は当時、自ら創業した引越会社を経営していた。元請けとして顧客と直接向き合う事業の価値を知る同氏にとって、上場企業をはじめとする優良な荷主を抱える高栄運輸の状況は、危機であると同時に大きな可能性を秘めているように映った。しかし、再生への道は決して平坦ではなく、その決断には大きな覚悟が求められた。

「公器」としての使命―経営を引き受けた覚悟の源泉

猪股氏がこの困難な役目を引き受けることを最終的に決意させたのは、金銭的なメリットや勝算ではなかった。「会社は生き物だ」。同氏はそう考えていた。そこには、創業した人の想い、事業を支えてきた人々の努力、そして従業員とその家族の人生がかかっている。目の前の高栄運輸は、赤字という数字の裏で、多くの人々の想いが絡み合い、行き場をなくしているように見えた。
 
「この会社を再生させることは、単なるビジネスではない。会社に関わってきたすべての人々の想いを引き継ぎ、未来へ繋いでいくことだ」。この強い使命感が、猪股氏を突き動かした。2011年12月19日、取締役に就任。その瞬間から、つばさホールディングスの真の歴史が始まった。それは、他者の想いを背負い、会社を社会の「公器」と捉え、利他の精神で事業を再興するという、壮大な挑戦の幕開けであった。この「自分の会社ではない」という客観的な視座こそが、後の大胆な改革を断行する上での精神的な支柱となった。

わずか半年で正常化へ、逆算思考で誠実に向き合った組合対応

取締役に就任した猪股氏を待ち受けていたのは、硬直化した労働組合との直接対決だった。部屋に閉じ込められ、机を叩かれながらの交渉は、精神的に過酷を極めた。しかし、同氏には揺るぎない信念があった。「このままでは会社が潰れ、社員である組合員の働く場所も失われてしまう」。この一点を、粘り強く、誠実に対話を重ねて訴え続けた。
 
同時に、猪股氏は冷静にゴールから逆算した計画を立てていた。3ヶ月後、6ヶ月後の状態を具体的に描き、そこから今やるべきことを緻密に逆算していく。赤字がこれ以上膨らむ前に、6ヶ月以内に協定書を破棄させ、経営を正常化させる。その強い意志と客観的な視点が、困難な交渉を前進させた。自身の会社ではないという立場が、逆に「社長に相談します」という一歩引いた交渉を可能にし、冷静な判断を後押しした。
 
そして、就任からわずか6ヶ月半後、ついに労働協定は破棄された。驚くべきことに、当時組合に加入していた従業員のほとんどが、その後も会社を去ることなく残り続けた。これは、長年の課題であった労働組合に対し、対立ではなく対話を選び、誠実に向き合った猪股氏の真摯な姿勢が現場の従業員たちの心を動かし、会社の未来を共に創るという共感を生んだ証左に他ならない。

ドライバー不足の逆境を好機に変えた、リファラル採用の好循環

労働組合問題という最大の障壁を乗り越えた同社だったが、世はドライバー不足の真っ只中。しかし、ここでも逆境は好機へと転じた。労働環境が改善された同社の評判は、ドライバーたちの口コミによって自然と広がっていった。「あの会社は有給も取れるし、給料もいいらしい」。同業他社が人材確保に苦しむ中、同社にはリファラル(紹介)によって多くのドライバーが集まってきたのだ。
 
人が集まれば、事業は拡大できる。「他社がドライバー不足で断っている仕事がある。うちならできるのではないか」。顧客の困りごとに真摯に耳を傾け、「どうすれば実現できるか」を現場のドライバーたちと共に考え抜いた。職人気質でプライドの高いドライバーたちも、「社長がそこまで言うなら」と、仲間に声をかけ、難題に挑んでくれた。
 
かつてはわずか7名だった専属ドライバーは、今や100名規模にまで拡大。他社の「ピンチ」を自社の「チャンス」に変え、顧客の信頼を勝ち取っていった。この好循環こそ、現場の人間関係を何よりも大切にし、ドライバー一人ひとりと向き合い続けた同社の強さの象徴である。

M&Aによる事業内製化と、コールドチェーンへの注力

事業が成長軌道に乗る中、猪股氏は次なる一手として、車両整備の内製化を見据えていた。ドライバー不足が叫ばれる中、同様に整備士も不足し、「整備難民」が生まれる未来を予見していたからだ。ディーラーに依存する体制では、いずれ立ち行かなくなると判断し、2014年頃から事業承継に悩む整備会社の探索を開始。やがて、本社から車で5分ほどの距離にある整備会社との縁に恵まれ、M&Aを実行。これが現在の「つばさモビリティ」の礎となった。
 
このM&Aを皮切りに、同社はグループを拡大していく。その多くは、アドバイザーを介さない、人と人との繋がりから生まれたものだ。事業の主軸は、創業時からの強みであるチルド・冷凍食品輸送、すなわち「コールドチェーン」に置かれている。コロナ禍においても、人々の生活に不可欠な「食」を運ぶ仕事は止まることがなかった。この社会的意義の大きさを再認識し、同社は食品物流の専門性をさらに高めていく。現在では、運ぶ荷物の9割弱を食品が占める。リパックセンター事業を担う「多摩フードサプライ」も、顧客からの相談がきっかけで株式を取得し、再生させた会社だ。センター事業と輸送事業を連携させ、付加価値の高いサービスを追求し続けている。

5年の構想を経て実現したホールディングス化という必然

会社が複数に増え、事業規模が拡大するにつれて、新たな課題が浮上した。決算期が異なる複数法人間での不透明な資金移動、脆弱なガバナンス、および経営者自身の事業承継問題。「このままでは、責任の所在が曖昧なまま進んでしまう」。40代後半に差し掛かった猪股氏は、顧客の事業承継の相談に乗る一方で、自分自身の問題として、その難しさを痛感していた。
 
個人の勘や経験に頼った経営から、組織的な経営へと移行しなければ、持続的な成長は望めない。この強い危機感から、5年という歳月をかけて構想を練り、2019年2月1日、高栄運輸は「つばさホールディングス株式会社」へと商号を変更。各社に散らばっていた管理部門の機能をホールディングスに集約し、シェアードサービス化を進めることで、グループ全体のガバナンス強化と経営効率の向上を図る体制を整えた。これは、同社が次のステージへと進むための、必然の決断であった。

企業文化の礎「つばさライセンス」に込めた利他の精神

ホールディングス化と並行して、同社が最も力を注いでいるのが、企業文化の醸成だ。「仲間が先、自分は後」「与えるものが、与えられるもの」。商売の原点は、相手の立場に立ち、困りごとを解決することにある。
 
この「利他の精神」を明文化し、グループ全社員の行動指針とするために、同社が大切にしてきた「つばさレシピ(クレド)」は進化し、2025年10月にミッション・ビジョン・バリュー「つばさライセンス」として再定義された。 これは異なる歴史を持つ企業が集うグループにおいて、理念浸透と文化熟成を続ける北極星となっている。
 
この策定プロジェクトには、グループ各社から20名弱のメンバーが集結。半年間、月2回の会合を重ね、時には休日も返上して議論を尽くした。異なる歴史を持つ会社が集まるグループだからこそ、理念の浸透は一筋縄ではいかない。しかし、大切なのは「浸透させる」ことではなく、「なぜこれが必要なのか」を一人ひとりが理解し、共感することだ。毎日の朝礼での称賛タイムや、新卒社員が中心となって運営する委員会活動など、地道な取り組みを通じて、理念は少しずつ、しかし着実に組織の血肉となりつつある。

「100億宣言」は通過点、企業基盤を固め未来へ挑む

同社が掲げる「100億宣言」は、中小企業庁の事業再構築補助金をきっかけとしたものだが、その本質は単なる補助金獲得にはない。この宣言を機に、財務戦略、金融機関との関係、中期経営計画といった、企業経営の根幹をゼロから見直し、再設計した。100億円という数字は、あくまで通過点。その先にある300億や1000億という未来を見据え、盤石な経営基盤を構築することこそが、真の目的だ。
 
マーケットは無限に広がっている。設計した仕組みが適切に運用され、常に改善が回る組織になれば、成長の可能性はいくらでもある。そのために不可欠なのが、CHRO(最高人事責任者)をはじめとする経営幹部の育成と登用だ。理念への深い共感を前提に、各分野のプロフェッショナルが能力を発揮できる仕組みを構築すること。それが今、同社が最優先で取り組んでいるテーマである。

運送業界の新たなエコシステムを創る「ロールアップ戦略」と進化し続ける組織

今後の成長戦略の核として、同社は中小運送事業者の「ロールアップ(M&Aによる統合)」を掲げる。日本の運送業界は、99%以上が中小零細企業で構成されており、後継者不足や資金繰りの問題に悩む経営者は後を絶たない。特に、高金利のファクタリングに手を出さざるを得ない企業は、未来の利益を食い潰され、破綻へと向かうケースも少なくない。
 
同社は、そうした企業を一方的に「買収」するのではなく、ご縁を大切にし、同じ志を持つ「共に成長するパートナー」として迎え入れる新たなエコシステムの構築を目指している。自社が持つ整備工場や購買力、およびPMI(経営統合)のノウハウを活かし、不当な手数料を取る仲介業者を介さず、健全な形での事業承継を支援する。
 
それは、業界全体の構造的課題に一石を投じる挑戦である。そして何より、つばさホールディングス自身も決して完成された組織ではなく、今なお日々の成長痛に向き合い、試行錯誤を続ける「進化途上」の企業である。だからこそ、一方的な再生支援ではなく、互いの強みを活かし、共に学び合いながら成長していくコミュニティを創り出すことができるのだ。この等身大の歩みを通じて、個々の企業だけでなく、運送業界全体の未来をより豊かなものへと変えていく。

【まとめ】

「この会社は、自分の会社ではない」。猪股氏の根底には、創業から会社を支えてきた人々への敬意と、その想いを未来へ繋ぐという強い責任感がある。10年後には次の世代が活躍できる会社にするため、経営人材の育成にも余念がない。
 
「100億宣言」を掲げたつばさホールディングスの挑戦は、単なる一企業の成長物語ではない。それは、利他の精神を原動力に、業界が抱える課題に真正面から向き合い、関わるすべての人が豊かになる未来を創造しようとする、社会インフラを担う企業としての、崇高な使命そのものである。

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佐藤 大輝

執筆者名:佐藤 大輝

新卒で株式会社船井総合研究所に入社。医療機関向けのコンサルティングに従事し、入社3年目にして歯科コンサルタント部門MVP受賞。マーケティング全般を得意とし、集客のみならず採用、組織づくりなどのマネジメント分野においても、マーケティング視点を活かした戦略立案から実行サポートを行う。業界内の中小〜中堅規模のクライアントに対し、集客支援にとどまらず、組織変革を伴う事業推進を主導してきた。

コンサルティングを通じ、単に規模を拡大するだけでなく、人・社会の幸福を追求できる「強い企業」創りを目指す。事業の急成長に伴う組織の歪みや課題を、マーケティングとマネジメントの両輪で解決し、次なるステージへと飛躍する企業の確固たる礎を築いていく。

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