パーパス経営

理念にウソのない企業が伸びていた!

2023.06.23

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西暦2000年以降、国内は低成長時代です。GDPが30年横バイなのは先進国では日本だけです。
1人当たりGDPは、台湾、韓国にも抜かれた、とも言われています。そんな西暦2000年以降でも、A社とB社の2社が存在しています。

 

A社:社員数50~100名超えから横バイ、停滞している。
B社:社員数50名、100名、300名とどんどん伸び続けている。

 

A社とB社の違いは何か?
多くの事例を調査、探求してきました。現在も継続中です。
今回は、理念と事業の不一致、一致が大事、ということをある企業の事例をもとに整理したいと思います。

珍しくない誰もが分かっていることをやりきっている

設立16年で年商290億円、営業利益6%、社員数600名まで成長されている住宅企業様があります。
取り組まれている状況をお聞きすると、世の中で言われている取組みを見事なまでにやりきっていらっしゃっています。

 

・新築は注文住宅と分譲住宅事業
・中古不動産仲介+リフォームリノベーション事業
・その中古住宅買取再販

 

のように、事業をフル展開していらっしゃいます。
そして、

 

・事業効率を考えて特定エリア集中で不動産相場をリアルに把握
・自社の建築、施工によって高品質
・エリア特化によって在庫リスク極小化と在庫リスクを低減

 

さらに、事業精度を高めるために

 

・全社最適のDX化にも数年かけて取組む
・業績情報、会計情報をシームレスに出せるような体制を築く
・社内グループウェアも整備して、社内コミュニケーションを築く

 

このようなことをすべてやりきることで、業績アップ・収益性改善を着実に推進されていらっしゃっています。
そして、設立16年で前述の業容まで成長されたのです。
ただ、これらの取組内容は、(言うや易し、やるが難しですが)何かのビジネスセミナー、書籍、ビジネス雑誌等で周知の内容ばかりです。

持続的成長の企業は「当たり前」の感覚が他社とは違う

この企業の社長とお話をしていると、社長からこのようなお言葉がありました。

 

「(当社は)そんなすごい差別化と言えることはやっていません。」
それを聞き、私の方から
「とは言ってもこれだけのことをやりきっているところがすごいです。どうして御社はやりきることができるのでしょうか」とお聞きすると、
「なぜなんでしょうかねぇ。う~ん、やらないといけないことをやりきっているだけで、普通なんですが・・・」とおっしゃいました。

 

実は、この類のご発言は、私たちが調査、研究してきた多くの持続的成長企業の共通要因です。

 

そこで私から再び、
「短期的な数値達成に徹底的にこだわる視点と、DXや、新規領域の事業など、3~5年、
ひいては10年先のために(すぐには成果に表れない)中期的な取組みを同時に並行でやりきっているすごさを感じます。
これは他社ではなかなかできないことです。その点はいかがでしょうか」とお聞きすると、

 

「(当社としては)普通なんですが、数字達成は絶対にこだわまっていますが、それと同時に、むしろそれ以上に自分たちのビジョン、理想の会社の姿を目指す、
という思いがありますので、(そういった中期的な取組みを)やるのは当たり前、普通です」との返答でした。

 

ここがポイントだと感じました。
これは多くの持続的成長企業の共通項目だと整理しています。
つまり、持続的成長を続ける企業は、当たり前の感覚が違います。
数値達成のために必要なことをやるのは当たり前だが、それと同時に、もしくはそれ以上に目指したい姿、
大事にしたいことを(普通の感覚で)実現したいと思い、事業に取り組んでいらっしゃいます。

理念・ミッションと業務、仕組みが不一致になっていないか

こちらの企業のビジョンに、
「どんな時代も、大切な仲間をhappyにする 世界一の強くてやさしい”カイシャ”を創ります」
というものがあります。

 

どんな数字を稼いでも、仲間を大事にしない、後輩の指導やアドバイスをしないのは格好悪い、というカルチャーが会社スタート時からあるそうです。
それと連動した「既存社員同行制度」というものがあります。
モデル社員の営業や設計の業務同行を他の社員が希望すればできる仕組みです。
教えるのをいやがる社員は”恰好悪い”のです。

 

「今の理念、ビジョンを文字化した時に、変に格好つけずに、自分たちの素の価値観をそのままカタチにしました。
あっ、そうか、だから”普通”なんですね、私たちからすると」と社長がおっしゃいました。
理念やミッションを考えるために、この素の価値観をどれだけワード化するかが非常に重要です。

 

ついつい、「業績を上げるためにどういう表現がいいか」「最近の時流に合わせたものにしないといけない」という部分を考えすぎて、
自分たちの素の思いから離れたよそいきのワードになってしまいがちです。
そうすると、理念と、普段の業務、制度、仕組み、マネジメントと全く切り離された状態になります。

 

実は、これが何かの取組みをやりきれない、本質的な要因になっていると考えています。
この矛盾、不一致が社員のノリの悪さを作っています。
これは、今まで持続的成長企業を研究し続けた中で確信しているところです。

 

そして、この企業様は、自社の素の思いでまとめた理念、ミッション、ビジョンを人事評価、
マネジメントとしっかりと連動させていらっしゃいます。
言ってみれば、理念と業務との間にウソのない、筋が通った事業展開をされているのです。

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南原 繁

執筆者名:南原 繁

新卒で入社以来、流通小売業、飲食サービス業、製菓製パン業、地域遊休地開発、観光事業、企業CRE戦略、自動車販売業の幅広いフィールドを通じて、船井流マーケティングの基本ベースを習得する。

30年来低成長が続く国内経済で、持続的成長を続ける中堅企業化の共通要因として、戦略・仕組みの上位概念としてのパーパス(PMVV)が必要不可欠であるという視点で、中堅・大手企業に特化した総合コンサルティングサービス構築を進めている。

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