新規事業策定

年商50億から年商100億企業化を達成した商圏人口60万人の成功事例

2023.10.31

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いつもお読みいただきありがとうございます。
100億企業化コンサルティングを専門としているアカウントパートナー室の柴崎智弘です。

今回は、6月に開催された、船井総研主催の経営者向け勉強会『企業価値向上経営フォーラム』にて、ゲスト講師としてお話いただきました、株式会社エネチタ様の講座内容をふまえて、「商圏人口60万人のエリアで年商50億企業が約10年で100億企業化を達成した事例」を解説させて頂きます。

知多半島の阿久比町に本社を構える株式会社エネチタ様は、1935年に、愛知県常滑の石炭事業に端を発し、ガソリンスタンドからプロパンガス事業、産業エネルギー事業へと拡大していきました。今では、リフォーム事業、フード事業、不動産事業、コインランドリー事業、給湯器専門事業まで幅広く展開し、2024年で90周年を迎える地域コングロマリット企業です。

2011年には年商約50億円だったところから、2022年度の年商は78億円、2023年6月現在では、40拠点の事業所、410名の従業員、今期予測では、年商105億円~110億円を見込んでいます。エネチタ様が事業を展開する地域は、人口60万人の知多半島エリアです。こうした地方エリアにおいても、100億企業化達成の目前まで来れた大きなポイントは「地域密着多角化」「地域コングロマリット企業化」です。

多角化経営を行うにあたり、気をつけるべきポイントが3つあります。
一つ目は財務です。イチかバチかの賭けのような、失敗が即ダメージとなるような多角化戦略はとらなかったといいます。二つ目に大切なのは、最初からシナジー効果を期待しすぎないこと。エネチタ様では、事業を始めるにあたって、エリアでナンバーワンになることを狙います。一つの事業でナンバーワンになり、ナンバーワンになった事業同士が組むことで、初めてシナジー効果が生まれるのだそうです。三つ目に、効率性ばかりを追い求めるのではなく、社長がワクワクするかどうか、社長自身がやりたいかどうかという社長のモチベーションが重要です。効率がよくても、社長のモチベーションが上がらない事業はうまくいきません。

以上3点に気を付けながら、コングロマリット化の実現に向けて重要なことは、次の3点に大別できます。
1.狭商圏でも実現できる地域密着型多角化
2.圧倒的な差別化
3.新卒採用・育成・定着術

狭商圏でも実現できる地域密着型多角化

まずは、商圏を狭くして、その中で多角化をしていきます。地域密着と多角化はどちらか片方ではなくセットで考えます。そうすることで、特に中小企業にとっては限りある人やお金といった経営資源をより効率的に活用することが出来るからです。地域密着型の多角化が重要な理由は、以下の4点です。

①地域から必要とされる存在になるため

エネチタ様の経営理念は、「笑顔あふれる知多半島の未来を作る」です。年商78億円の企業が、知多半島地域の未来を変えられると、本気で思っているのです。地元を応援するのは人間の本能です。社員に対しても、本能を仕事にできる喜びを伝えています。

②異業種のノウハウを活用するため

各事業の成果を他の事業で横展開しています。
すると、その事業の常識を変えることとなり、成果が如実に表れます。

③社員に夢を持ってもらうため

エネチタ様の社員の平均年収は、地元にある大手上場企業をわずかながら上回っています。
地域を絞って効率を高めることに加え、高年収化を実現することで社員の夢を叶えられることにつながります。

④持続可能な会社になるため

既存のメインの事業の市場が縮小しても、会社の規模は縮小させない、それが多角化のスタートでした。

圧倒的な差別化

差別化をしていく上で一番重要なことは、立地です。立地については絶対に妥協しない考え方で進めており、地域を絞っているため、どこに出店したら最も成果が出るかについては、大手よりも研究しています。そうした研究を活かし、ある事業において、大手企業の競合がある中で、店舗数については、大手企業の約2.5倍の店舗を出店しています。その結果大きな成果につながっています。

新卒採用・育成・定着術

エネチタ様の成長の源泉は新卒採用にあります。新卒採用を始めたのは2008年でしたが、その時は定員60人の部屋を借りて、実際に来たのは2名だったところから、2023年の単独会社説明会には400名を超える学生が集まり、20名以上の内定承諾を得ました。というのも、現在、社長の時間のほとんどは新卒採用に割いています。面接や単独会社説明会、大学で講義、入社のお願いまで、社長自ら出向いております。その結果、今では合同会社説明会で約800名、単独会社説明会は約400名集まります。また、会社を全部見てもらうためバックヤードツアーは大型バスで300名ほどを迎えています。

そこから一次面接に150 人、そして二次面接が50人、最終の社長面接には40人が来社していただける結果につながっています。そして、長く働いてくれる社員、定着してくれる社員を採用するためにも、会社の説明会では、よいことも悪いことも含め、見せることが重要です。入社後に入社前とのギャップが生じて会社を辞めることのないように、悪いことは全部最初に言っておくことが大事だといいます。

また、社員が会社を辞めない要因は「楽しく仕事ができている」という1点しかありません。具体的に、仕事が楽しいと思える要件は以下の三点です。
一つ目は、仕事で成果を出せているかどうか。自分が活躍して、お客様に喜んでもらって、上司に褒められ、賞与がアップし、職責も上がって活躍できるということです。二つ目に、コミュニケーションの量が圧倒的に多く、人間関係がよいことです。そのためには、社員教育はやりすぎということはなく、「思っている3倍くらいのコミュニケーションが必要」といいます。三つ目に、社内のチームワークを評価に入れること。どれだけ売上や利益が上がっても、社内がギクシャクしていたら経営する意味がないということです。

会社は強くなければ生きていくことはできませんが、社員に優しくなければ会社が存在する意味はない。このため、社員同士が仲よく、社内を明るくするプログラムを作って実践しています。会社はすでに成長する仕組みをつくったので、会社の業績向上を社員に言ったことはありません。それよりも重要なのは、社員同士が強固な価値観でつながっていくこと。多角化したそれぞれの事業をつなげていくのは、社員教育でしかなし得ないのです。

地域一番が取れる事業選択+地域一番まで徹底的に伸ばす成長戦略

地域コングロマリット戦略の失敗ケースで多いのは、小粒な事業が多い、経営リソースが分散されている先行者メリットを生かしきれず、競合に負け、収益が悪化しているケースです。その点、エネチタ様は「シナジーよりも地域一番になれるか」を優先し、更に「地域一番から、競合が戦意を失う程の圧倒的な地域一番化」という二段階で、新規事業を大きくすることに財務面、人材面でも投資を絞っています。加えて「一番同士の事業が組むから勝つことができる」といった思想を大切にされており、

シナジーを生み出す基準、各新規事業のゴール設定についてもベンチマークしたい戦略・事柄です。また、地域一番を取るために「狭属性一番化」による専門業態を中心に新規事業を選定し、異業種のノウハウを既存事業へ展開する、または新規事業のノウハウを既存事業へ活用する流れも確立されており、結果としてシナ ジーを実現できていることが、地域一番を取れる成功確率を上げることに繋がっています。

「狭商圏×狭属性」一番化+地域密着多角化によるグループシナジー最大化

前述した狭属性専門店化による一番化戦略に、狭商圏多店舗展開による一番化戦略が組み合わさることで、物理的な距離によるマネジメントコストの圧縮、マーケティングコストの圧縮を実現し、地域でのシェアを圧倒的に高めることで、効率的な経営を実現されています。また、本業及び既存事業の地域内における強力なアセット・リソースを最大限活用するべく、商圏を広げず深探りをするとともに、上記各事業の成功パターンをベースに多角化を進めることで地域のニーズを面で押さえ、
グループ事業全体のシェアを高めて経営効率を上げています。

特に地域内における強力なアセット・リソースにおいては、本業が強いか らこその立地を中心とした情報を最大限活用し、競合の数倍規模の店舗を資本投下し実現することで、競合には真似できない圧倒的な差別化を実現、経営効率を更に上げることができています。地域特化・ドミナント・地域一番化を組み合わせた戦略は踏襲していきたい店舗展開戦略です。

多角化による優秀人材の採用・成長を加速させる育成体制の実現

最後の注目すべき部分は、事業成功のキーとなる人財戦略においてもコングロマリット戦略のメリットを最大限活かせている点です。強い既存事業があることで、新卒でも稼げる環境がある事業段階の中では、新卒採用において優秀な人財を確保することが重要な観点となります。エネチタ様の各事業は、事業単独では新卒からあまり人気がない分類となりますが、様々な事業へチャレンジできる総合的な企業というブランディングができたことで、人気企業として多くの応募を集めることができています。

単独事業の弱点をコングロマリット化することで無くし、企業体として強みに変えている点は素晴らしい戦略です。また、早い段階から重要なポジションを任せられる機会やキャリアステップが多様化していること、更には様々な業種のプロフェッショナルメンバーによる教育を受けることができるため、単独事業の企業では経験させることが難しい教育を実現しています。結果として、社員の定着率を上げることにつながっています。同時に各事業がバラバラにならないように「チームワーク」を評価する基準に入れていることで、様々な事業を行っているにも関わらず一体感を持って事業を推進できるマネジメントシステムを作り上げている点も、コングロマリット企業がぶつかりやすい課題を解決できる好例だといえます。

以上、いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したエネチタ様は、愛知県知多半島に特化した日本でも有数の地域コングロマリット企業で、
その戦略・取り組み内容には、皆様が地域コングロマリット化を成功させる上でのエッセンスが詰まっています。

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執筆者名:アカウントパートナー室

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