財務戦略
高収益を実現!100億企業が取り組む管理会計の構築
2025.06.16
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船井総合研究所 アカウントパートナー推進部の谷 翔太です。
昨今、売上高100億円という目標は、単なる規模の拡大に留まらず、持続的な成長のための「経営力」強化を示す指標として位置づけられています。人口減少や資本コストの上昇といったマクロ環境の変化が進行する中、中小企業庁も、企業が「経営力」を高め、「成長」することを強く促しています。
しかし、企業が売上規模を拡大していく過程では、必ず「成長の壁」に直面します。特に、売上10億円から30億円、そして100億円へと向かうにつれて、これまでの「社長の勘」に頼る経営には限界が生じ、利益率の低下や生産性の停滞、ひいては離職率の増加といった「踊り場」の課題に直面するケースが少なくありません。
この「成長の壁」を乗り越え、高収益かつ持続的な成長を実現するために不可欠となるのが、管理会計の構築と、それを核とした財務マネジメント体制の強化です。
100億企業は、収益性(営業利益率)、成長性(売上高成長率)、安全性(自己資本比率)のバランスが良いという特徴を持っています。経営者が自ら直接的に全てを管理することには限界があるため、企業規模の拡大に合わせて、組織の仕組みを通じて間接的に管理する体制への転換が不可欠となります。
目次
100億企業がコントロールすべき数字の「ありたい姿」
100億企業が目指すべき財務の「ありたい姿」は、CFOを中心とした財務組織体制が確立され、成長投資と財務健全性のバランスが取れており、必要な資金を金融機関から十分に調達できる状態です。これを実現するためには、P/L(損益計算書)マネジメント力、キャッシュマネジメント力、B/S(貸借対照表)・投資マネジメント力の強化が重要となります。
管理会計を支える「三本柱」と具体的な取り組み
1. P/Lマネジメント力の強化
企業全体のP/Lだけでなく、部門や拠点ごとの損益状況を詳細に把握する「部門別会計」の導入を進めます。これにより、事業ごとの採算性を明確にし、全体的なP/Lを積み上げ式で作成することが可能になります。月次で予算と実績の乖離を確認する予実管理を部門長が運用し、将来的には先行指標と連動した粗利予測の算出など、予測分析経営へとレベルアップを目指します。
2. キャッシュマネジメント力の強化
P/L、B/Sと連動した月次のキャッシュフロー予測を作成し、1年先までの資金繰りを可視化します。これにより、資金ショートのリスクを回避し、事業拡大や投資のタイミングを資金の流れから判断できるようになります。金融機関との融資交渉も先手で行えるようになり、資金調達の効率化が期待できます。
3. B/S・投資マネジメント力の強化
月次でB/S計画を作成し、B/Sと主要な財務指標の決算予測を見える化します。特に、金融機関が重視する「自己資本比率」(目標30%以上)や「有利子負債償還年数」(目標5年以内)といった指標の推移を意識し、投資後も財務の健全性を維持できるかを示します。
M&Aや新規事業への積極的な投資を展開するフェーズでは銀行借入が必要となります。過去の成功事例では、M&Aにより売上高が飛躍的に増加したケースもあります。
これらの投資に必要な資金を確実に確保するためには、収益性の高いビジネスモデルを確立した上で、利益を蓄積して自己資本を厚くし、その自己資本をレバレッジとして迷わず借入を行うことが重要です。
成長を加速させる「仕組み」と「人財」
◆デジタル経理体制の構築
業務の二重入力による工数増加や数値精度の低下を防ぐため、業務システムや会計システムと数値が連動した財務管理システムの構築が求められます。帳簿保存や債権債務管理のデジタル化、月次決算の早期化(10日以内を目指す)など、効率化の余地が大きい領域です。
◆戦略的な資金調達
財務数値計画に合わせて取引銀行数を戦略的に拡大することが極めて重要です。GENDA株式会社の事例では、創業から約5年で11件、IPO後約1年で22件のM&Aを実施し、29社の金融機関と取引関係を構築してリスク分散を図っています。
金融機関から有効な支援を受けるためには、決算報告書では読み取れない情報(数値の変動要因、部門別損益、KPIの推移、他行の支援状況など)をまとめた決算説明資料を作成し、個別の面談を通じて積極的に情報開示と対話を行うことが不可欠です。これにより、金融機関の自社理解を促し、良好な関係性を築くことができます。また、金融機関の格付は融資限度額や条件、決裁権限者に影響を与えるため、格付を意識した決算対策も必要です。
◆財務担当者の採用・育成
財務管理の高度化には専門人材が必要です。経理業務に寄りすぎないよう、銀行との交渉や融資契約管理、事業計画・予算作成、資金繰り計画の立案、財務データ分析・予測、投資判断のサポートといった、より財務に関する業務内容を明確にすることで、金融機関出身者などのプロフェッショナルな人材を惹きつけることができます。CFOを中心とした財務部門が、経営陣や事業部門長と連携し、財務マネジメントを組織的に行う体制を構築することが肝要です。
両利きの経営との関連
成長企業は、既存事業の効率化や品質向上(深化)と、新規事業の創出や市場開拓(探索)を両立させる「両利きの経営」に取り組む傾向が見られます。この両利き性は財務業績を向上させ、特に社会関係資本(社内外のネットワークや信頼)が両利き性を高める要因となることが示唆されています。経営者は、自社の特性を理解し、不足する能力を外部の専門家や人材で補完することで、より効果的に成長を促進できます。
100億円企業を目指すには、
財務管理体制の抜本的な再構築が必須。
100億円企業への成長は、単なる売上拡大だけでなく、経営管理、特に財務管理体制の抜本的な再構築を伴います。
収益性、成長性、安全性のバランスをコントロールするために、P/L、キャッシュ、B/S・投資の各マネジメント機能を強化し、それを支えるデジタル化された仕組みと、専門的な財務人材の育成を並行して進めることが、高収益を実現し、持続的な成長を可能にする鍵となるでしょう。
政府も「100億宣言」などの成長支援策を講じており、これらを活用することで、成長へのロードマップを具体的に描き、実行していくことが重要です。
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