【100億宣言】カシムラホールディングス|信頼構築で挑む1000億への軌跡
2026.10.01

株式会社カシムラホールディングスは、2015年の創業以来、不動産開発・売買・賃賃管理・仲介を一貫して手掛け、驚異的な成長を遂げてきた総合不動産企業である。10期の売上高約50億円から、11期は100億円を達成しており、11年連続での増収を確実なものとしている。同社がここまで急激な成長を遂げられた要因は、単なる市場の好況によるものではない。
そこには、徹底した「BtoB」の信頼経営、大手半導体メーカーの進出に伴う新築開発プロジェクト、そして天神のランドマークへの本社移転による人材獲得といった、周到な戦略と確かな実行力がある。本稿では、同社が歩んできた創業からの軌跡、大都市圏への進出戦略、そして未来の「1000億円企業」に向けたストックビジネスへの移行という独自の経営思想について、代表取締役である樫村尚明氏への取材を基に深く解き明かす。
- 企業情報
- 企業名
- 株式会社カシムラホールディングス
- 設立
- 2015年11月
- 従業員数
- 42名
- 事業内容
- 不動産業
- 100億宣言
- https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/02205-00.pdf
- HP
- https://kashimura-holdings.co.jp/
区分から始まる信用構築と買取再販による確固たる土台作り
株式会社カシムラホールディングスの創業は2015年11月に遡る。創業当時は、代表取締役である樫村尚明氏が創業した極めて小規模な組織であった。同社が最初に選択した事業領域は、天神や博多といった福岡の都心部における大規模な開発ではなく、郊外における1DKや区分マンションの「買取再販事業」であった。設立初期、自己資本や取引実績が乏しい状況下において、金融機関からの信用を地道に積み重ねるための現実的かつ戦略的な選択であった。
当初は1,000万円から2,000万円程度の小規模なロットから取引を反復継続した。この地道な売買のプロセスを通じて、同社は金融機関に対する融資の実績を示し、約束を違えない誠実な企業としての「与信力」を確実に高めていった。金融機関からの信用が高まるにつれ、取り扱う物件は区分マンションから一棟収益アパート、さらには一棟収益マンションへと、着実にその規模と事業領域を拡大させていった。
この創業期における徹底した信用の積み上げこそが、同社の経営における基本理念となり、後に展開する大規模な一棟開発や大都市圏への進出を支える強固な財務基盤を築くこととなった。ステップバイステップで確実に実績を証明してきたこの姿勢が、同社を堅実で強固な存在へと成長させた。

大手半導体メーカーの進出エリアにおける一棟新築開発への大躍進
同社の歩みにおいて、開発会社として大きな飛躍を遂げる契機となったのが、熊本における大手海外半導体メーカーの進出にともなうプロジェクトであった。当時、それまでの仲介や買取再販という「フロービジネス」から、自社で土地を仕入れてゼロから賃貸マンションを「開発・設計」するという新たなフェーズへの移行には、非常に高いハードルが存在していた。一棟の新築開発には多額の開発資金が必要であり、金融機関から開発資金としての融資を受ける実績と信用が決定的に不足していたからである。
しかし、これまで積み上げてきた金融機関との信用や迅速な意思決定・実行力を背景に、熊本の半導体関連需要という市場機会を的確に捉え、自社新築開発へ参入。1棟目を成功させたことで、金融機関からの評価が大きく上がった。
「大規模なプロジェクトを完全にやり切れる開発力を持つ企業」という社会的信用を確立したことで、複数の金融機関からの連鎖的な支援(融資枠の大幅な拡大)が実現した。
これが、天神や博多の都心部における5億円から20億円規模の大型一棟開発に参入する「最初の1ピース」となった。
仲介業者とのパートナーシップを徹底するBtoB戦略の優位性
同社の爆発的な事業成長を支える最大の強みは、その圧倒的な物件仕入れ力にある。
その根幹にあるのが、仲介業者との信頼関係を極限まで追求する「BtoB」に特化した取引戦略である。
一般的な不動産会社は、より高い利益率を求めて一般顧客(BtoC)から直接仕入れることを目指す場合が多いが、同社はそのアプローチをあえて取らなかった。
同社は少人数での業務効率を極限まで高めるため、プロの仲介業者のメリットを最大化することに徹した。
具体的には、仕入れ情報の提供に対する意思決定と決済のスピードを徹底的に迅速化した。
十分な事業性を精査した上で、一度合意した取引は最後まで責任を持って完遂する。この姿勢が仲介会社や金融機関からの大きな信頼につながり、不動産業界において「同社に情報を持ち込めば、確実に取引を実行してくれる」というレピュテーションが形成された。

仲介業者を徹底して尊重し、取引の確実性とスピードを提供する姿勢が、結果として良質な仕入れ情報が同社に優先的に集まる好循環を生み出した。
仕入れた物件を運用・再販する際にも、その情報をもたらしてくれた仲介業者に再び取引を依頼することで、双方に大きな実利をもたらす強固なパートナーシップを構築した。この信頼関係こそが、競合他社がひしめく市場において同社が優良物件を継続的に確保できる源泉であり、他社にとっての最大の参入障壁となっている。
ランドマークビルへの本社移転がもたらした採用の劇的ブレイクスルー
同社の成長を組織・人的資本の側面から爆発的に加速させたのが、天神の象徴的なランドマークビル「ONE FUKUOKA BLDG.」への本社移転である。以前は20名ほどの組織規模であり、優れた実力を持つにもかかわらず、採用市場における知名度不足から優秀な人材の獲得に大きな課題を抱えていた。どれほど優れた事業モデルを構築していても、成長を支える人員の確保ができなければ、機会損失につながってしまう。

そこで同社は、天神の最も象徴的なオフィスビルへの移転という大胆な戦略を実行した。
この効果は絶大であり、移転後は月間の求人応募数が200名を超えるという劇的なブレイクスルーが起きた。
かつては応募の獲得すら困難であった状況から、今では200名を超える応募者の中から、会社のビジョンに共感し、かつ即戦力となる極めて優秀なプロフェッショナル人材を厳選して採用(妥協しない組織づくり)することが可能となった。
この採用力の大幅な向上により、従業員数は短期間で40名規模へと倍増した。
さらに、2027年4月入社に向けて同社初となる新卒採用(1期生)にチャレンジしたところ、早期にエントリー数が100名を超えるなど、大手企業と比較しても遜色のない採用競争力を証明した。
このオフィス戦略は、単なる執務環境の改善に留まらず、企業の社会的信用の確立と、組織全体の戦闘力を引き上げる人事戦略における最高の投資となった。
東京・大阪への攻勢と30億円ロットに達する大都市圏戦略の構築
福岡で磨き上げた独自の開発・仕入れパッケージを携え、同社はさらなる成長の主戦場として、大都市圏への進出を本格化させている。約2年前に東京支社を本格的に稼働させ、さらに今年度には大阪への新規出店に向けた実働を開始しており、主要都市圏を網羅する体制を整えつつある。東京や大阪への進出においても、福岡で成功した「信頼関係を第一とするステップアップ方式」を愚直に再現する。
東京市場に参入した際も、いきなり数十億円規模の開発を行うのではなく、まずは数千万円規模の区分不動産の取引からスタートした。
これにより、地域の金融機関や現地の仲介業者との信用関係を慎重かつ確実に構築していった。この着実なステップが功を奏し、現在では東京支社においても新築の一棟開発プロジェクトが複数始動しており、個別のプロジェクトにおける最大ロット数は30億円規模にまで拡大している。
同社の売上高構成比において、今期以降は福岡を上回る見通しだ。
地方発の不動産企業が、日本で最も競争が激しい東京市場においてこれほどの短期間で大きなシェアを獲得できた理由は、他社が容易に真似できない「決済の早さ」と「約束を確実に守る誠実な取引姿勢」が、東京の仲介業者の間でも高く評価されたためである。

ストックビジネスへの移行と1000億円企業の未来に向けたビジョン
11年連続の増収を達成し、売上高100億円以上という大躍進を遂げているカシムラホールディングスであるが、経営陣の視線はすでにその先、そして会社の「守り」の構築に向いている。今後はフローだけでなく、家賃収入・管理収入などのストック収入で固定支出を100%カバーする(固定費カバー率100%)ことを目指す。開発事業による華々しいフロー収入のみに依存する体制を排し、いかなる市場環境の激変(金利上昇や物価高)にも耐えうる鉄壁の収益構造を作る。

そのための施策として、単に管理戸数を増やすだけでなく、自社物件の運用利回りを圧倒的に高める事業企画を進めている。
一般的な不動産の運用利回りが5%程度であるのに対し、さらなる水準の引き上げに向け、独自の事業企画(飲食や美容サロン、オフィス等の高付加価値テナントを自社で企画・誘致・融合させる等)を物件に組み込むなど、具体的な施策の検討を進めている。
これにより、資本効率を高めながら、安定した収益性と継続的な資産価値向上を実現するビジネスモデルを確立しようとしている。
10年後(2035年)には、主要3都市以上への事業エリア拡大による「売上高1000億円企業」のロードマップを描く。
しかし、同社が目指すのは、単に規模だけを追及する無機質な企業ではない。
樫村氏は、「『沖縄で働きたい、進出したい』と熱望する社員がいれば、その社員の夢を叶えるためにそのエリアへ支店を出す。社員が常にワクワクし、自分自身の夢を叶えられるような温かい器でありたい」という、人を主役にした経営哲学を持つ。
強固なガバナンスと圧倒的な事業企画力、そして社員への限りない信頼を原動力に、同社は総合不動産の新たなる常識を創造し、1000億円の未来へと突き進んでいく。
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