「99%つぶれる」と言われた承継から、グループ19社の100億企業へ
100億企業への道 成長を加速させるヒント
本レポートは、「99%つぶれる」と言われた債務超過の企業を継ぎ、現在ではグループ19社・年商100億円を超えるコングロマリットへと成長させた株式会社ヤブシタ・森社長への特別インタビューです。太陽光事業での鮮やかなV字回復、本業への惜しみない投資、独自のM&A戦略、そしてあえて「非効率」を選ぶ教育投資など、常識を疑い非連続的な成長を遂げた同社の軌跡と、その根底にある独自の経営哲学を紐解きます。
インタビュー&レポート
「 本業への惜しみない投資」と「M&Aと人材配置の勝ちパターン」
北海道を拠点に、空調設備の製造・施工会社からコングロマリット企業へと変貌を遂げたヤブシタグループ。
現社長の森氏が会社を受け継いだ当時、同社は債務超過に陥り、倒産寸前の危機にありました。
さらに、非親族承継という厳しい状況の中、「99%つぶれる」とまで言われていました。
そこから森氏はいかにして経営を立て直し、飛躍的な成長を実現したのでしょうか。
現在、ヤブシタグループは19社を擁する企業グループへと成長。
本特集では、3代目代表取締役社長である森氏の独自の経営哲学と、非連続的な成長を実現した戦略の全貌に迫ります。
森氏の成功戦略は、「 誰よりも早く参入し、誰よりも早く撤退する」という大胆な意思決定にあります。
一方、その根底にある経営哲学は、「 本業への思い切った投資 」「 一番荒れている状態を自ら引き受け、落ち着いたら次の経営者へ委譲する」など、既成概念にとらわれない発想に貫かれています。
倒産寸前の企業を再建し、19社からなる企業グループへと成長させた、その実践と思考は、多くの経営者にとって示唆に富む内容となるでしょう。
BusinessSummary
防雪フードから太陽光、チョコレート、AI画像生成まで
ヤブシタグループは、現在63期目を迎える「ものづくり総合カンパニー」です。近年は、需要が急拡大するデータセンターや蓄電所を重点領域とし、設備の騒音・排熱・気流対策を幅広く手掛けています。
特に、空調関連部材の製造で培った音と気流の高度な制御技術を強みとし、データセンターの室外機や発電設備から生じる騒音・排熱、蓄電所の騒音問題に対し、設計から製造、施工まで一貫したソリューションを提供しています。
同社の原点は、寒冷地向けの「 防雪フード」です。特に雪が多い日本海側から島根県にかけて圧倒的なシェアを築いた雪害対策の技術を、防音・排熱・ヒートアイランド対策へと進化させ、東京や大阪をはじめ全国のデータセンター・蓄電所市場へ事業領域を広げています。
また、空調領域にとどまらず、地下シェルターの換気装置開発や、医療機器の製造、さらにはチョコレート事業やAI画像生成まで、多岐にわたる事業を柔軟に展開しています。直近のM&Aや社内ベンチャーの立ち上げにより、グループ企業は現在19社にまで拡大し、強固なコングロマリットを形成しています。
売上推移については、かつては社員にボーナスも払えないほどの債務超過状態に陥っていましたが、後述する太陽光ビジネスでの劇的なV字回復を経て、現在はグループ全体で年商100億円を突破し、さらなる成長拡大期に突入しています。
国鉄頼みのビジネスモデルからの脱却、メーカーへの転身
ヤブシタの原点は、青函トンネル建設などに伴い、国鉄(現JR)へ資材を供給することで成長した商社でした。
創業家である薮下一族は、国鉄との強固な信頼関係を礎に事業を発展させ、長年にわたり安定した経営基盤を築きました。
しかし、国鉄の民営化に加え、インターネットの普及による物流の高速化や情報化社会への移行により、従来の商社が持っていた情報や流通における優位性は急速に失われていきました。その時代の大きな変化に対応できず、ヤブシタの業績も次第に悪化していきます。
そのような状況の1999年に入社したのが、現社長の森氏です。
森氏はもともと、三菱電機のグループ会社でエアコンや冷凍設備の販売に関わっていました。
バブル崩壊後の激しいリストラの嵐が吹き荒れる中、熱い絆で結ばれていた20歳年上の先輩であるI 氏が希望退職することを知り、「この人と一緒に何か人生を共にしたい」という一心で自身も退職を決意します。
当初は介護福祉事業の立ち上げを模索したものの、丸腰での参入の難しさを痛感して断念。その後、以前から取引関係にあったヤブシタの2代目社長(現会長の薮下宏一氏)から「新たに札幌営業所を立ち上げるからやってみないか」とヘッドハントを受け、I氏と共にヤブシタへ転職しました。
札幌では I氏が所長、森氏が係長としてスタートしましたが、当時の会社は財務的に非常に厳しく、ボーナスすら出ない状況でした。
森氏は、これまでの機械を卸すだけのビジネスから「自分たちで工事も始めましょう」と施工分野への進出を提案します。独学で図面引きを覚え、毎日深夜2時過ぎまで働く日々を重ねましたが、人が増えて売上が伸びても、頭数分の経費がかさむばかりで経常利益が全く伴わないという構造的課題に直面します。
人の努力に依存する労働集約型の経営では、会社全体の財務やキャッシュフローは改善しない―。そう確信した森氏は、2008年に第3代社長へ就任すると、利益率の高い「メーカー」への転換を本格的に進めることになります。
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