経営環境の変化に立ち向かう企業の戦略 事業・人財計画の明確化と理念浸透で持続的成長へ

株式会社伊藤精密工具製作所

業種:金属製品の製造、部品調達、保育、教育

株式会社伊藤精密工具製作所

代表取締役社長

伊藤 政憲

企業情報

会社名
株式会社伊藤精密工具製作所
設立
1927年
従業員数
36名
事業内容
金属製品の製造、部品調達、保育、教育
経営環境の変化に立ち向かう企業の戦略 事業・人財計画の明確化と理念浸透で持続的成長へ

株式会社伊藤精密工具製作所(以下、伊藤精密工具製作所)は、創業100周年を前に主力事業の縮小リスクや事業承継、多角化した事業の方向性、社員の将来不安といった複合的課題を抱えていた。この状況を打開するため、同社は船井総合研究所(以下、船井総研)をパートナーに選び、10年ロードマップ策定に着手した。船井総研はロードマップの策定において理念の明確化、後継者育成を含む包括的な計画を立案。各事業の戦略と具体的な行動計画、円滑な事業承継への道筋が明確になったことで、社員の安心感も醸成された。伊藤精密工具製作所の未来へむけて、確かな羅針盤となっている。

経営/事業上の課題

  • 既存事業の縮小リスクがある
  • 新規事業を含めた事業ポートフォリオ全体のバランスと今後の方向性が不明瞭
  • 事業の先行き不透明さによる社員の不安感
  • 今後の世代交代を円滑に進めたい

 

課題解決に向けた船井総研の支援概要

  • 事業・財務・人財・DXを多面的に捉えた10年ロードマップの策定
  • 目標から逆算した具体的な数値計画の支援
  • 企業理念(PMVV)のブラッシュアップと言語化
  • 将来の事業承継を見据え、後継者を交えた計画策定プロセスへの参画支援

 

支援の成果

  • 全社計画が具体的な数値目標と共に明確化されたことで、事業別計画と事業承継へのステップが明確化
  • 会社としての方向を示したことにより、社員の安心感と一枚岩となって進む団結力が醸成
プロジェクトの背景

 


 

伊藤精密工具製作所は、1927年創立の金属製品製造を主事業とする企業であり、検査治具や検査用ゲージといった、量産品の品質保証に使われるオーダーメイドの製品を手掛けている。
同社は、2019年から部品調達事業及び企業主導型保育事業を、そして2022年からは民間学童保育事業も開始し、事業の多角化を進めている。
2027年に創業100周年を迎え、社長が60歳となる節目にあたり、その先の百年を見据えてどのように持続的に発展していくべきか、その方向性を明確にすることが喫緊の課題となっていた。
多角化した各事業(金属製品製造、部品調達、保育、学童保育)全体の連携強化とそれぞれの役割の明確化などの複合的な課題に対し、今後10年間の具体的な行動指針となるロードマップを策定する必要性が高まっていたのである。

伊藤精密工具製作所:検査測定用ゲージの製造
https://ito-seimitsu.co.jp/product/index.html

伊藤精密工具製作所:海外部品調達代行
https://ito-seimitsu.co.jp/product/index.html

ココロネ保育園
https://cocorone-kids.com/
ココロネ学園
https://cocorone-jr.com/about/

 

 

船井総研の選定理由

今後の10年間の羅針盤となるロードマップ策定のパートナーを選定するにあたり、船井総研を選んだ理由として、「特定の業種に特化していることもあり、地域性に偏らず、全国規模での幅広い情報、データ、経験、事例を豊富に持っている点が大きかったです。」と、代表取締役社長 伊藤政憲氏は語る。
また、「当初は10年で100億を目指すというコンセプトでスタートしましたが、弊社の当時の規模(売上約5億円)を踏まえ、現実的な目標として10年で売上を約4倍の20億円規模に拡大することを目指す方向へと調整されました。この目標設定においても、船井総研様の経験や知見が活かされたと考えています」(伊藤社長)
絵に描いた餅で終わるのではなく、現実を踏まえ、徹底的に業績にコミットするからこその強みも後押しとなり、船井総研がパートナーに選ばれた。

プロジェクトの目標・課題と解決策

本プロジェクトの最大の目標は、「今後の不確実な経営環境や外部変化に対応しつつ、会社が持続的に発展していくための、具体的な10年間の行動計画であるロードマップを策定すること」である。
数値目標としては、10年後に売上高約20億円を目指すことを設定した。
プロジェクトの軸としては、4点挙げられた。
1. 将来的な縮小リスクのある主力事業と、成長を目指す新規事業役割を明確にし、事業ポートフォリオ全体の方向性を定めること。
2. 社長自身の事業承継計画を明確にし、後継者を巻き込みながら承継を円滑に進める道筋をつけること。
3. 社長の個人的な思いや人生観を反映させた、明確で分かりやすい企業理念(PMV)を再定義し、社内に浸透させるための基盤を作ること。
4. 特に将来への不安を感じている社員に対し、会社の将来像と具体的な計画を示すことで、安心感を醸成すること。
これらの軸を中心に、まずは社長へのヒアリングを通じて、経営に対する思いや人生観を掘り下げ、それを企業理念(PMVV)として言語化・文書化するプロセスを実行。伊藤精密工具製作所の存在意義を徹底的に考えることで、パーパス経営を実現した。次に、船井総研のノウハウを生かした、事業別の具体的な数値目標設定と、各事業の戦略方針を策定。業績だけではななく、必要な組織体制や人員計画まで追うことで、実現可能性を飛躍的に上げることができる。最後に、策定された今後の全社的な方針を、社内外の関係者に対して明確に伝えるための準備である。方針発表会を通じて、経営陣だけでなく社員と一体となって進んでいく素地を作った

 

【策定した10年ロードマップ】

船井総研の貢献

伊藤精密工具製作所がぼんやりと考えていた目標や、やるべきことを明確化し、具体的なロードマップとして形にするプロセスを重視しつつプロジェクトを推進した。事業の一方面だけでなく、組織体制やDXの構築、売上目標達成に必要な人員配置数の算出なども含め、多面的にサポートを行った。
「最大の貢献の一つは、船井総研様が持つ地域性に限定されない全国的な情報量、データ、そして過去の豊富な経験や事例を提供してくださった点です。これにより、弊社だけでは得られない広範かつ客観的な視点から、事業戦略や市場環境の分析を行うことが可能となりました. 例えば、部品調達事業の拠点展開先の検討においても、船井総研様の情報に基づき、需要や地理的なフォローアップ体制を考慮することができました。」(伊藤社長)
また、社長の個人的な思いや人生観を会社の理念(PMVV)として言語化するプロセスは、抽象的なイメージを具体的な言葉にするなかで、漠然と感じていた存在意義を明らかにすることができ非常に有効だった。「すっきりしたし、ブラッシュアップされた。」と伊藤社長は振り返る。
さらに、将来の事業承継を見据え、社長の息子様がロードマップ策定のプロセスに加わることを促し、後継者としての意識醸成の機会を提供したことは、プロジェクトの成功に不可欠な要素だった。
弊社の専門的な知見と、経営者の思いや会社の状況に寄り添う伴走型の支援が、本プロジェクトを成功に導いた。

 

【各事業の戦略まで徹底的に分析・提言】

プロジェクトの成果と今後の展望

本プロジェクトの最も重要な成果は、伊藤精密工具製作所が、今後の事業運営と事業承継に向けた具体的な10年ロードマップを明確に策定できたこと、そしてそれが社内外の関係者にとって将来の羅針盤となったことである。
事業戦略としては、将来的な市場縮小が見込まれる主力の検査治具・ゲージ事業は「攻めながらも現状維持」を目指しつつ、収益の柱を部品調達事業へと移行し、積極的な拠点展開によって売上拡大を目指す方針が明確となった。さらに、保育・学童事業は、地域密着型で収益性向上を図ることを一つの目標に設定した。
また、伊藤社長の「関わる皆を笑顔にしたい」という思いを込めた企業理念(PMVV)が明確に言語化され、今後社内に浸透させていくための基盤が構築された。
事業承継に関しては、社長自身の具体的な引退時期と後継者(息子様)の入社・社長交代の時期がロードマップの中で具体的に位置づけられ、息子様が会社を継ぐ意思を表明するなど、承継に向けた大きな一歩を踏み出した。ロードマップ策定のプロセスに息子様が参加したことも、会社への理解を深める上で非常に有効だったといえる。
そして何よりも、このロードマップは、将来に不安を感じていた社員に対し 、会社がどのような方向に進んでいくのか、具体的な計画と共に明確に示すことができた。これにより、社員は会社の将来像を理解し、安心感を得て、新しい目標に向かって共に進んでいくための強力な「ツール」となった。この社員の安心感醸成は、社長がプロジェクトを通じて得られた大きな成果の一つとして挙げている。
今後の展望としては、策定された10年ロードマップに基づき、部品調達事業における新たな拠点展開 や、ブラッシュアップされた理念の社内浸透といった具体的な施策を着実に実行していくことが挙げられる。
このロードマップを羅針盤として、伊藤精密工具製作所は、創業100周年、そしてその先の未来へと、社員と共に力強く歩みを進めていく。

お問い合わせ

CONTACT

CONTACT FORM