愛知の町工場から100億円企業へ「三本の矢」戦略が生んだ復活劇(売上112億円)2026年1月号
主力事業の売上40%減という絶望的な状況から売上112億円までの逆転成長記
愛知県豊田市に本社を構える横山興業株式会社は、1951年の創業から70年以上の歴史を持つ老舗企業です。「創意無限・脱皮成長」を社是とし、「暮らしの不可欠を、作る。」というステートメントを掲げる同社が、2024年3月期についに売上100億円の大台を突破しました。2025年現在の売上は112億円に達しています。現在の同社の事業は実に多岐にわたります。売上構成比80%以上を占める自動車部品加工事業を主軸に、金属製屋根・外壁を扱う建材事業、太陽光事業、さらには、プロフェッショナル向けの高品質なバー・キッチンツールブランド「BIRDY.」を開発するなど、ユニークな自社製品事業も展開しています。同社を率いるのは、3代目社長の横山栄介氏です。1976年愛知県豊田市生まれで、慶應義塾大学商学部を卒業後、トヨタ紡織株式会社でTPS(トヨタ生産方式)を習得し、インドネシアでの事業支援も経験しました。家業である横山興業に入社し、2017年に社長に就任しましたが、その道のりは決して平坦ではありませんでした。事業の柱である自動車事業の売上が9年間で40%も落ち込むという厳しい時期を経験したのです。しかし、そこから驚異的な巻き返しを果たし、2025年には112億円という「逆転成長」を実現しています。
インタビュー&レポート
横山興業株式会社
代表取締役社長
Yokoyama Eisuke
横山 栄介氏
愛知の町工場から100億円企業へ「三本の矢」戦略が生んだ復活劇
「創意無限・脱皮成長」を体現する横山興業株式会社代表取締役社長・横山栄介氏が語る、 苦境を成長の糧に変える経営術。
BusinessSummary
「明確な武器の必要性」を痛感。新たな「武器作り」への挑戦が始まった
ピーク時の成功が生んだ構造的問題
ピーク時の成功が生んだ構造的問題横山氏が入社した2006年当時、同社は自動車産業のグローバル生産拡大という時代の波に乗り、売上は急激に増加していました。まさにピークを迎えていたのです。保有する設備がフル稼働となるほど受注が殺到し、受けきれない仕事は断らざるを得ない状況が続くようになってしまいました。しかし、目の前の仕事をこなすことに集中しすぎるあまり、投資を行い、設備を増やし、より多くの仕事を受けられるようにするという将来への備えができませんでした。業績は好調、しかし、キャパシティによる仕事が受けられない状況が続いたことで、競合他社に参入の余地を与える結果につながったのです。
自動車業界特有の契約サイクルが生んだ”負のスパイラル”
自動車部品事業には独特の業界構造があります。一般的に部品供給契約は1年半から2年前に決定され、さらに5年から8年のモデルチェンジサイクルが存在するため、将来の受注動向をある程度予測が可能です。この業界特性が、同社に深刻な構造的問題をもたらしました。設備能力不足により断らざるを得なかった仕事を競合他社が引き受け、次のモデルチェンジでもその競合他社がそのまま受注を継続するという「負のスパイラル」が発生したのです。この構造的問題により、主力の自動車事業の売上は徐々に下がり続け、さらに一度回り出した負のサイクルは構造上5年以上止まることはなく、段階的に減少していきました。また、自動車製造の技術革新が進んだ結果、自動車そのものが軽量化するようになったことも売上減に追い打ちをかけました。昔に比べ製造に必要な部品の点数が少なくなり、納品の数も減少してしまったのです。結果的にピーク時の2008年の45億円から、2015年は29億円と、約40%の減少となってしまいました。
自危機に直面し模索し続けた日々
横山氏は売上減少幅がまだ10%程度だった時期に、すでに3年後・5年後の厳しい状況を見通していました。自動車業界での経験により、契約の長期サイクル性を熟知していたからこそ、「売上が大幅に落ち込む前の段階で抜本的な対策に着手する必要がある」という強い危機感を抱いていたのです。売上がまだそれほど大きく落ち込んでいない2009年頃から、同社は新たな活路を模索し始めます。国内外を問わず新たな販路を求めました。北は東北、南は九州、さらにはアメリカや中国といった海外にまで、活路を求めて奔走しました。
しかし、当時の同社には他社との差別化を図れる明確な要素がなく、既存技術で新たな市場を求めるという発想に留まっていたため、その試みが実を結ぶことはありませんでした。そんな模索の日々の中、転機が訪れます。国内の既存顧客から、タイでの事業展開について打診を受けたことがきっかけでした。この好機を逃すことなく、コンペを勝ち抜いた同社は、横山氏入社から約4年半後の2010年12月、タイに「YOKOYAMA KOGYO (THAILAND) CO. LTD.」を現地法人として設立します。横山氏も約1年間にわたって現地での事業基盤づくりに奔走しました。
担当コンサルタント
価値向上支援本部
アカウントパートナー推進部
マネージング・ディレクター
Keisuke Suzuki
鈴木 圭介
2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、デジタルマーケティングを中心に変革を進め、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。法律部門の責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。
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