原点は「農業をサポートしたい」 群馬ではじまり、地域を巻き込んで140億企業になった秘訣/ファームドゥグループ

小さな農業資材店が売上140億企業に 経営者が展開した新規事業とは

前橋市に本社を置くファームドゥグループは代表の岩井雅之氏が「農業を支援し農家の所得向上に貢献する」を企業理念に創業しました。
農業資材専門店や農産物の直売所などで店舗を拡大させていく中で、2011年には太陽光発電事業に参入。
現在では、営農型太陽光発電をベースに農業、流通、再生エネルギーで地域還流型ビジネスモデルを構築し、モンゴル、チリ、ケニアにも進出しています。
1994年に群馬の小さな町から始まった同グループを売上高140億円(2022年度)に成長させた岩井氏にお話しを伺いました。
対談形式でお届けします。

Consultant  Introduction Consultant Introduction コンサルタント紹介

価値向上支援本部
アカウントパートナー推進部
マネージング・ディレクター

Keisuke Suzuki

鈴木 圭介

2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、デジタルマーケティングを中心に変革を進め、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。法律部門の責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。

Interview & Report

ファームドゥグループ
代表

Masayuki Iwai

岩井 雅之氏

「 農業をサポートしたい」が原点

鈴木:

ファームドゥグループは群馬県箕郷町で農業資材専門店「農援’S」から始まり、そこから農産物の直売所「食の駅」や東京都内に小型農産物直売所「地産マルシェ」を拡大してきました。

代表の岩井氏は群馬県富岡市生まれ。大学では海洋資源学科を専攻し、その後大手流通業で商売の基本を学びました。

貴社のこれまでを振り返り、創業や新規事業を展開していったきっかけや想いをお聞かせください。

 

岩井氏:

創業の農業資材専門店は「農家のデパート」を意識しました。

それまで農家が必要なものを買うのは基本的にJAの購買部しかありませんでした。

大手流通業での経験から、大型店舗を作り、農家がいつでも必要なものを買えるようにすれば、売上が上がると考え事業をスタートさせました。

私の実家も農業を営んでおり、農村地帯の日常的な会話や風景を見て育ちました。

農業をサポートする店舗を作りたいと思ったのが原点です。

また、私は三男でしたので、家業を継ぐという考えは幼い頃よりありませんでした。

ずっと、「人のやっていないことに挑戦したい」と考えていました。

大学で海洋資源学科を専攻したのも、「日本にはない石油を掘り当ててみたい」と思ったのがきっかけでした。

その大学時代の海洋調査の経験は、後の太陽光発電事業を進める上でも活かされたと感じます。

事業を展開していく上で、「人のやっていないことをする」という思いや自らの体験がひとつの原動力になっています。

新聞などを読んで知識を身に着ける感覚ではなく、肌感覚を大事にしています。

事業も「農家が作業をするのに必要なものが多い」と感じ、「では必要なものを提供しよう」という感覚で始めました。

2つ目の転機となったのが農家の減少です。高齢化も進んでおり、農業資材が売れなくなってきました。

そんな中、ある知り合いの農家の方から「店舗で肥料や農薬を買うのもいいが、自分たちの作った野菜を売ってほしい」と頼まれたのです。

農家の本音はこういうところにあるのだと思いました。

20年ほど前に農産物直売所に商売をシフトしたところ売上が上がり、事業が伸びていきました。

3つ目の転機は2011年の福島第一原子力発電所の事故です。

都内での直売所の売上が順調に伸びていったところ、原発事故の風評被害で売上は3分の2にまで減りました。

それ以上に今後の事業に影響を与えた大きな出来事は計画停電を経験したことでした。

お店でもレジを使えず電卓を使用したりして、電気の必要性を強く実感したのです。

そこから、太陽光発電事業に挑戦していきました。

大きな出来事が起きるとたくさんの変化が生じます。

私はその中で自分ができると思ったことに挑戦してきたのが今につながっています。

 

深い事業欲。まずは始めることが大事

鈴木:

私の親戚はみかん農園を営んでいて、品質はよくても価値が下落してしまう農業の辛さを目の当たりにしています。

普通の農家では新たな事業にして踏み出すことに躊躇してしまうと思いますが、ご自身が新たな挑戦に踏み出すことができた要因はどこにありますか。

 

岩井氏:

私の場合は創業者なので、そういった挑戦には比較的慣れているのです。

頭で考えて、少し予行演習をしてから本格的に実行に移しています。

22年度の経常利益は約20億円です。

太陽光発電事業を始めた際に、税理士や銀行の方に「どこまで事業を展開するのですか」と聞かれました。

「銀行がお金を貸してくれるところまでやります」と私は言いました。

たとえ周囲に反対されても挑続する。それを続けてきました。

私は欲が深いのだと思います。

それは金銭に対する欲ではなく「事業欲」です。

なぜ事業欲が出るのか?やはり困っている農家の役に立つ事業をしたいという思いがあります。

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