地方成熟企業を成長企業へと変身させた 「ボトムアップ型新規事業改革」/赤尾商事株式会社

群馬県高崎市に本社を構える赤尾商事株式会社。
1951年の創業以来、今日まで継続している既存事業は、主に石油製品です。
ガソリンスタンドの運営、工業用や自動車用の潤滑油、産業用燃料、LP ガス、その他石油化学製品などの販売を行ってきました。
70年代半ばまでには、高崎市、太田市を中心とした群馬県と埼玉県北部が主な拠点として整備されました。
原油価格という外部環境の変化に影響を受けやすい事業領域でありながら、80年には年商100億円に達し、それを40年以上維持してきたのです。
経営理念は「油の町医者たれ」であり、創業者の言葉です。地域に根ざした経営を行う考えに立ち、またこの理念こそが、今日の「地域多角化経営の根源」ともなっています。
経営者に就任した当初は「素人だった」と語る赤尾佳子氏は、外部の多くの人たちを巻き込み、社員の発想を活かしながら新規ビジネスに取り組んできました。
ビジョンを再度見直し、2030年に向けた事業展開のかじ取りをする赤尾氏。
そして、女性や外国人を含め、多様な人材が新しい発想を持って活躍する赤尾商事の未来に、ますます多くの期待が集まっています。
地域を巻き込み、また時代を見据えて脱炭素の取り組みにも力を入れている同社を取材しました。

Consultant  Introduction Consultant Introduction コンサルタント紹介

価値向上支援本部
アカウントパートナー推進部
マネージング・ディレクター

Keisuke Suzuki

鈴木 圭介

2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、デジタルマーケティングを中心に変革を進め、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。法律部門の責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。

Interview & Report

赤尾商事株式会社
代表取締役社長

Yoshiko Akao

赤尾 佳子氏

予期せぬ事業承継を経て、女性が活躍できる会社へ

「油の町医者たれ」。これは赤尾商事創業者の言葉であり、今も変わらぬ経営理念です。

この考えが表すのは、地域を拡大するのではなく、地域に根ざした経営をしていこうという思想です。

そして、この理念こそが現在の「地域多角化経営の根源」となっています。

創業以来の主力事業は石油製品販売です。

脱炭素・カーボンニュートラルの時代の流れとともに石油製品は需要が減少していくと考えられますが、

赤尾商事では「淘汰が進むときは勝ち残るチャンス」と考え、石油製品事業を 「残り福事業」と呼んでいます。

石油については引き続き安定供給に努め、一方で新しい事業をバランスよく育てていくという両面で経営していこうとしています。

 

1988年、赤尾商事の経営を行う赤尾家に嫁ぎ、後継者の妻となった赤尾佳子氏。

その10年後に待っていたのは夫の死でした。

舅である創業者も当時は健在で、その後9年間にわたって叔父が社長を務めた後、赤尾氏が経営のバトンを引き継いだのは2008年のことでした。

当初、先代経営者は自分の孫に会社を継がせるため、その母である赤尾氏がワンポイントで経営者に就くことを望んでいました。

赤尾氏はそのたびに「無理です、嫌です」と断っていたそうです。

しかし、いろいろと考え抜いた結果、「やはり私がやっていかないといけない」と考え、3代目社長として事業承継しました。

会社にパートとして入ってから約10年後のことでした。

 

知識もノウハウもない素人経営者。会社は完全な男性中心社会で、「なぜ女が社長に?」といった風土が残っていました。

当時は潤滑油やガスの営業、配送やガス工事まですべて男性が行っていて、女性もサービスステーションには多少いたものの、

赤尾氏が社長就任5年後くらいまで、女性は事務職として男性を補佐するものと決まっていました。

それから十数年経った現在、赤尾商事では多くの女性が様々な職種に就いています。

サービスステーションには女性の店長がおり、全体を統括する課長も女性です。

石油製品の営業やリフォームの提案をする女性の営業職が増えたばかりか、事務系でも採用や企画部門に女性が進出していくなど、

ここ数年で、女性も強い権限を持って仕事ができる風土に変わってきたといいます。

 

女性比率が低いのが当たり前の業界ですが、赤尾商事の現在の女性社員比率は26%。

直近5年の新卒採用実績では16名中11名が女性で、20代に限ると女性比率は48%に上ります。

とはいえ、若い人の男女比率は半々に近づいているものの、全体に占める割合は決して高いとは言えず、同社は2030年までに女性比率35%を目指しています。

また、「70歳まで安心して働ける会社」「外国人は10名以上働いている」という項目も、同社の2030年までに達成する目標として掲げられています。

 

シリコンバレー訪問を機に「時代が変わる」2030年を意識する

赤尾氏が経営者の座について10年以上が経過し、会社の業績は好調でした。

しかし、将来的に石油の需要は徐々に落ちていくことを見越して次の一手を探していたその年の夏、赤尾氏は中小企業向けのアメリカ・シリコンバレー視察研修に参加しました。

現地ではテスラやGoogle の自動運転モビリティが走っていて、移動はすべてUber。

赤尾氏はそれらを目の当たりにして「時代が大きく変わっていく」との思いを強くするとともに、今のままでは駄目だと感じたのです。

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