成長の源泉は 「時流適応」と「事業間シナジー」/株式会社ウチヤマホールディングス

北九州に本社を置く株式会社ウチヤマホールディングス(HD)。 同社は介護事業、カラオケ事業、飲食事業、不動産事業と 複数の事業を展開している地域コングロマリット企業です。 東証スタンダードに上場し、グループ全体の従業員数は パート・アルバイトも含め4,684人、売上269億円(23年3月)を誇ります。 同社は時流に適応しながら様々な事業を手がけ、 それぞれの事業間のシナジーを構築し、現在の形へと事業を拡大していきました。 バブル崩壊、今回のコロナ禍のような経営の根幹を揺るがす経営危機を 何度も迎えながらも、事業ポートフォリオを変化させ、売上を伸ばしています。 同社の会社としての沿革を追いながら、変遷の様子を見ていきます。
Consultant Introduction Consultant Introduction コンサルタント紹介

価値向上支援本部
アカウントパートナー推進部
マネージング・ディレクター
Keisuke Suzuki
鈴木 圭介
2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、デジタルマーケティングを中心に変革を進め、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。法律部門の責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。
Interview & Report

株式会社ウチヤマホールディングス
代表取締役社長
Takehiro Yamamoto
山本 武博氏
創業~事業の変遷
ウチヤマHD の創業者で現在会長を務める内山文治氏は、家業が米穀店を営んでおり、自身が経営者となったのちは複数出店するなど事業を拡大させていました。
同社の創業の地である北九州は、戦後の高度経済成長で大きく姿を変えていっていました。
店舗の所在した場所は道路拡張の対象となり、保証金をもらい移転しましたが、移転先もまた拡張の対象になり、を繰り返していました。
そのような経験を経て、内山氏は「不動産業の面白さ」を知ることになります。
1971年、ウチヤマHD の前身企業となる会社で不動産業に進出します。
不動産業はバブル期という時代もあり、大きく成長したものの、その後バブルが崩壊。
その会社は大きな負債を抱えることになってしまいました。
保有する不動産の多くが遊休物件となり、その活用方法を思案していたときに、内山氏はカラオケ事業に出会います。
1991年の正月、ゴルフを一緒にしていたある経営者から「カラオケ屋を始めたらものすごく儲かった」と聞き、当時抱えていた空きビルを利用して カラオケ事業を開始。
その社長の言っていた通り、カラオケ事業は多くの収益をもたらし、バブル崩壊の苦境を脱することができたのです。
カラオケ事業の成功で店舗を活用したサービス業に活路を見出した内山氏は、1995年飲食業にも進出し、新しい事業の柱を確立しました。
その後2000年に介護保険法が施行されました。
これまで介護に関するサービスは市町村や公的な団体が中心となって行う必要がありましたが、介護保険 制度が導入され、民間企業による介護サービスの提供が可能になったのです。
もともと医師になりたいという思いのあった内山氏は、この法改正を医療福祉に携わる好機ととらえ、介護事業への進出を決めます。
まず社会福祉法人を設立し、山口県と福岡県にて老人ホームの運営を開始しました。
その後株式会社でも同事業を開始。
それが株式会社さわやか倶楽部です。
現在、ウチヤマグループはHD の持ち株会社のもとに、カラオケ事業、飲食事業(株式会社ボナー)
と介護サービス事業(さわやか倶楽部)を主力とする複合サービスの事業体として今に至っています。
売上の推移と構成
売上の推移を見てみます。
不動産業で創業したウチヤマグループは、その後カラオケ、飲食事業が事業の中心となりました。
2003年より進出した介護事業は大きく成長し、10年後の2013年には、同事業の売上のほぼ半分をカラオケと介護事業が占めるようになります。
介護事業はその後も売上を伸ばしたのと同様に、2020年からのコロナ禍が、カラオケ事業に大きな影響を及ぼしました。
2020年3月期は約68億円を売り上げていたのが、2021年3月期は31億円と51%以上低下。
店舗の閉店なども行い、2022年3月期の売上は約27億円まで低下します。
そのような苦境を救ったのは、介護事業でした。2020年の時点で190億円に達していた介護事業の売上は、
コロナ禍でも成長を続け、2021年3月期で200億円を突破。2023年3月期の売上は214億円にまで伸ばしています。
2021年3月期のウチヤマHD の売上構成比は、介護事業が84.1%を占め、かつて41%を占めたカラオケ事業は13.3%となりました。