強い会社をけん引する自律社員の育成戦略~M&A・多角化経営に必要な経営者の果たすべき2つの役割~/ティーエス・ハマモト

地域中堅企業のM&Aが 可能にしている多角化経営
広島県広島市のティーエス・ハマモトグループは、リフォームやデザインなどの建築業、クレーンやガラス、不動産業、住宅・店舗の企画・設計などを多角的に展開している8社と親会社である株式会社ティーエス・ハマモトの計9社で構成するグループ会社です。
ティーエス・ハマモトグループは広島に本拠地を置き、塗装業からスタートをしてリフォーム業やマンション修繕工事を請け負い始めました。
そこから、広島を中心として福岡などの近隣地域の企業のM&A による子会社化を行い、多角化経営を実現しています。
これらの経営だけでなく、社内の人材育成や目標設定などの文化形成にも力を入れていて、グループ拡大に伴った人材育成にも成功しているモデル企
業と言えます。
父から会社を受け継ぎ、M&A や多角化経営に加えて社員の育成戦略にも成功してきた同グループの歩みについて、株式会社ティーエス・ハマモトの代表取締役である濱本利寿氏に伺いました。
Consultant Introduction Consultant Introduction コンサルタント紹介

価値向上支援本部
アカウントパートナー推進部
マネージング・ディレクター
Keisuke Suzuki
鈴木 圭介
2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、デジタルマーケティングを中心に変革を進め、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。法律部門の責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。
Interview & Report

株式会社ティーエス・ハマモト
代表取締役
Toshihisa Hamamoto
濱本 利寿氏
代表就任時の下請けメイン売上4億から売上20億のグループ会社代表へ
昭和45年に設立された株式会社濱本塗装店が、平成22年に株式会社ティーエス・ハマモトへと改称され、14年前の同年に父と社長を交代する形で私が代表に就任しました。
当時は主にゼネコンの下請け業者として外装・内装の塗装工事をしていました。
資本金は2,000万円であり、従業員は14名、売上高は約4億円の会社でした。
当時は、売上4億円の会社なら悪くないのではないかとも考えていました。
しかし、当時の売上のうち下請け売上が90% 以上であり、売上の50%が2社からの仕事によるものでした。
その中でも何か変化を起こしたいと自分にできることを考えて、営業をかけていました。
雇用も身近な人に声をかけて採用をしていきました。
現在は9つの子会社を持つグループ会社であり、不動産や建築など幅広い業種の会社を傘下に持ち、令和4年度の売上実績として20億円に達しています。
私が考えるグループ会社の利点として、以下のことが挙げられます。
・顧客の共有
・経営管理の簡素化
・やりたいことの確認作業
顧客やメソッドの共有はもちろんのこと、福岡のグループ子会社にも総務・経理機能はなく本社で遠隔管理しているなどが経営管理の簡素化です。
また、やりたいことの確認作業については、中途社員などが入社した際にグループ内での転職や出向が可能であり、実際の社員のやりたいことがしやすい環境を整備することができます。
多角的な業界へのM&Aによる地域コングロマリット経営の実現
初めに、なぜM&A を始めたのかというと、やりたいことができる会社を創るためであり、社員に対して社長になれるチャンスを増やすことが目的としてありました。
私のM&A の条件として、以下の3点が主に挙げられます。
・同業種を買わない
・購入金額の上限を決める
・エリアを絞る
エリアについては現在広島が拠点であり、福岡や大阪のルートの間に絞ってM&A を行っています。
加えて、自分の今の器以上の買い物はしないことを意識しています。
現在私は利益が30億円ほどのグループ会社の社長であり、それ以上の利益の会社をM&A することはなく、購入金額についてもリスクなどを考え1億円までとしてM&A を行っています。
近年はM&A バブルであり、M&A の仲介業者は「売りたい」ばかりです。
まだ法整備もされておらず、仲介業者は何の保証もなしに、とても高い仲介手数料を求めています。
ここで痛い目を見るのは、売り手と買い手の企業であるため特に注意が必要です。
M&A の注意点としては、以下の要点を意識しています。
・決算書を見極める
・買取りスキームを考える
・資産の有無
・退職金などの就業規則
・前任者は1か月の引き継ぎで退任させる
決算書などの経営数値の詳しい資料を見て判断することは前提として重要です。
買取りスキームについては、買う会社がすべてのお金を払うだけではないなどの多様なスキームについて考えることも重要になります。
古い会社は特に多額の退職金があることもあり、買い手側負担になることもあります。
そのあたりの確認も必要です。
前任者については半年間や1年間など引継ぎに残すこともありますが、私は個人的に1か月でいいと思っています。
それ以上前任の社長に給料を払い続けるのはもったいないと感じています。
私のM&A の最終決断のモットーとして、目的を明確にして行動してみることがあります。
最終的には度胸と直感が重要と考えていて、M&A を通してやりたいことの目的が明確であればM&A は失敗しないと捉えています。