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「中期経営計画策定の準備と手順解説」

2023.09.15

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「中期経営計画策定の準備と手順解説」

 

 

➀中期経営計画とは

 

中期経営計画とは、将来の目指したい姿(ビジョン)と現状の差を埋めていくための計画のことです。また、中期経営計画は概ね3年程度で作成し、毎年見直していくのが一般的です。

5年だと市場環境が変わってしまい、計画の意味がなくなってくるという点からも3年が妥当だといえます。船井総研も3年で作成しています。

 

中期経営計画の必要性

大きく三つ取り上げさせていただきます。

 

➀自社の課題や今後の動きが明確になる。

作成する過程で様々な調査や分析によって課題の見える化をすることができます。

➁従業員に共有することで目指す方向性(ベクトル)を合わせることができる。

口頭で説明しているという企業様もあるかもしれませんが、計画書としてまとめることによってわかりやすくなり従業員の理解度が高まります。

➂社外(主に金融機関など)からの会社への信頼性が増す。

感覚で経営をしてしまうと従業員や金融機関は不安を感じます。企業の現状や事業の進行度を示すことが信頼・信用に繋がります。

 

作成時期について

新年度の方針発表会で発表できるように作成します。方針発表会の半年前程度(下期ぐらい)から着手するのが良いでしょう。

 

中期経営計画を策定するにあたっての準備と体制

 

弊社では中期経営計画策定にあたって以下のよう準備をしています

➀ゴールを決める

  • できる限り全社員が集まる場で発表することが望ましいため、経営方針発表会の日に発表することを目指して作成する。経営方針発表会がない場合は場を設定する。

➁スケジュールを決める

  • 概ね3か月から半年程度で作成します。長期スパンですので業務工程とスケジュールを明確にしましょう。

➂担当者を決める

  • 中期経営計画を策定にあたってはスケジュールの調整やデータのやり取り、各事業責任者の取りまとめ等が発生する。事業ごとや部署ごとに担当者を立てていく必要があります。

➃必要なデータのリストアップを早めにやる

  • 中期経営計画策定には現状分析が非常に重要になりますが時間がかかります。過去の事業計画書、過去3か年の損益計算書やその他市場調査等の資料、仕入れ・営業・販売等の分析ができる明細データ等が必要です。

 

中期経営計画の作成順構成要素

中期経営計画を考える際は、以下の順番で考えていくのがセオリーです。それぞれの考え方も説明していきます。

➀現状分析(市場・競合・自社)

➁現状課題と今後の方向性の整理(SWOT分析など)

※現状分析をもとに仮説を設定していく

➂パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー(PMVV)や経営理念

➃事業戦略(資源配分・新規領域検討)

⑤組織・人事戦略(組織采配・採用・定着・育成)

※近年は人材獲得競争が激化、売上目標よりも優先的な作成を推奨。

⑥その他計画(DX計画・ガバナンス)

⑦売上・営業利益目標・数値計画(主に損益計算書)

 

かつては、事業戦略が非常に重視されていましたが近年では人材獲得競争の激化により、組織戦略・人事戦略の重要性が非常に高まってきています

 

押さえておきたい現状分析の手法

 

まずは、船井総研でも使われる「最低限押さえておきたい現状分析のフレームワーク」を4つ紹介します。

 

➀PEST分析…業界構造の分析に役立つ。マクロ環境を洗い出す。

➁5フォース分析…業界構造の分析に役立つ。計画策定の前提条件を洗い出す。

➂3C分析…事業環境の分析に役立つ。市場・競合・自社の視点で分析。

➃SWOT分析…内外環境の分析に役立つ。

 

上記の分析フレームワークは、船井総研でもよく使用します。フレームワークで考えたから必ず成功するというわけではないですが、思考の整理や伝え方のひとつとして非常に有効です。現状分析でズレてしまうと、今後のすべてにズレが生じてしまいます。テーブルの上にすべての情報を並べることが必要不可欠です。

 

PMVVと戦略の違い

分析後はその情報をもとにPMVVや戦略を練っていくことになります。しかし、PMVVと戦略の使い分けが上手くできていないケースが多々あります。PMVVなどの理念と戦略の違いを適切に理解し、それぞれの効果を最大化していくことが必要です。

➀PMVVとは

PMVVとは、パーパス、ミッション、ビジョン、バリューの頭文字をとったものです。事業戦略や経営計画などよりも上位の概念で、企業や組織としてのブレない存在意義や使命、提供しようとしている本質的な価値などです。数字は使わず言葉で作るものになります。企業を成長させようというときにPMVVが浸透していないと、社員がついてきてくれないという事態に陥ってしまいます。

(事業)戦略とは

事業戦略とは、PMVVをどのようにして実現するかを具体的に数値的に表した計画で、PMVVをどのように実現するのかを明確にしたものになります。

策定するときの注意点

PMVVと戦略は連動していることが非常に重要で、分断が生じてしまうと社員はついてきてくれません。PMVVを実現するために戦略があるということを強く意識し、PMVVから戦略、戦術、戦闘レベルまでの一貫したストーリーを作るように策定していく必要があります。

 

新規事業戦略の資源配分・新規領域検討

 

まずは、船井総研でも使われる、新規事業を考える際に役立つフレームワークを紹介します。

 

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

経営資源を最適に配分するためのフレームワーク

既に複数事業を持っている場合にそれぞれの事業をどういう立ち位置にするかを決めることができる

アンゾフの成長マトリクス

成長戦略立案のためのフレームワーク

新領域を検討する際に活用できる。

 

これらの分析もよく使われるフレームワークです。中期経営計画を策定する際は、まずはこれらのフレームワークを活用することで切り口を見つけ出せる可能性が高いです。

 

 

組織・人事戦略について

近年、人材に対する考え方が変化してきており、伸びている企業ほど人材戦略に力を入れています。

 

人材獲得競争の激化に対する対策

従来は補充採用でルーティンワーク化していましたが、近年においては事業戦略と結びつきが重要になりつつあります。人事側で採用や組織戦略を担っているならば、事業戦略を理解する場はかならず設けましょう。以下に、大きく3ステップを紹介します。

 

➀事業戦略における重要事項を整理

➁事業戦略を実現する上での人事面での必要事項を整理

➂必要事項に対する課題と対策を決定

 

上記の順に考えることで、事業戦略と組織・人事戦略にギャップが生じるのを防ぐことができます。PMVVと戦略の連動性だけでなく、事業戦略と組織・人材戦略の結びつきも強く意識しなければなりません。

 

その他の計画

また、近年中期経営計画に含まれるようになったDX計画とガバナンス体制の計画についても紹介します。

DX計画

  • 業務工程ごとにKPIとデジタルツール、実現するCXを整理したもの

ガバナンス体制(主に上場企業や上場を目指す企業が対象)

  • コーポレート・ガバナンス体制について
  • ステークホルダーの保護や経営陣の適正な経営を管理する体制について

 

これらの計画を策定するにあたっては専門人財が必要になってくるケースが多々あり、DXやガバナンスの実務経験がある人材を採用することは難易度が高い場合があります。船井総研では各業種に特化した専門コンサルタントが多数在籍しており、業界ごとに独自性も踏まえた計画策定などもご支援しておりますがテーマ特化型コンサル(新規事業戦略専門、財務戦略専門、DX専門、ガバナンス専門など)も多数在籍しており、業種を問わないご支援も行っています。また、弊社は実行支援に力を入れております。策定した計画を実現するところまでサポートいたします。

 

⑪具体的な数値目標の立て方のポイント

 

ここまで決まってからようやく具体的な数値を考え、当てはめていきます。数値目標を設定する上で重要なことを以下にまとめます。

数値目標は建てさせ、調整する

    • 当事者意識を持たせるために、目標は各部署(現場)で立てさせることが重要です。
    • ただし、現場は容易に実現できる目標や曖昧な目標を立てることもあるため、経営陣がある程度見込みを立てたうえで当事者に作成していただき、調整を図っていく必要があります
    • また、目標を着実に達成するためにほぼ達成できる目標(裏目標)と現場用にストレッチさせるための目標の二つを立てていくことも有効

売上目標の立て方

売上目標は、主に以下のような方法を混合しながら立てます

    • 商圏内の市場規模に対するシェア目標を立てる
    • 昨対比を基準に目標を立てる(2桁成長)
    • ベンチマーク企業の成長率から立てる
    • ※利益率に関しては、ベンチマーク・業界他社企業との生産性やコスト構造との比較をしながら、打ち手を検討しつつ、目標値を算出する
    • いくつかの分析を複合して考える必要がある

まとめ

中期経営計画は今後の動きや課題が明確になる。社員のベクトルが揃う。社内外の信用が得やすくなるなどメリットが多い。

計画策定の前の準備と体制を整えることは重要

優先順位の高い項目から考えていくことも必要

 

船井総研のご支援

今回、中期経営計画策定に関するポイントを紹介しました。

しかし、実務的には業界や業種、業態、また、企業規模や地域など企業ごとの個別の事情により異なってくる部分も多いと思います。船井総研では全国の中堅・中小企業のご支援実績を多数有しております。無料の経営相談では、今回の記事では扱いきれなかった実務的なテクニックや個別事情を踏まえた事例をご紹介することもできます。また、実際に中期経営計画の策定のご支援も行っております。

まずはお気軽に経営相談にお申し込みください。

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鈴木 圭介

執筆者名:鈴木 圭介

2007年株式会社船井総合研究所に新卒で入社。

法律事務所を中心とした士業事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、業界を代表する事務所・士業グループを多数輩出。

デジタルマーケティング関連テック・リーガルテックを中心としたテクノロジーを活用に強みを持ち、 スタートアップ企業と共に、士業事務所及び企業の変革をサポートしている。

近年は「中堅企業向け総合コンサルティング」の立ち上げに参画し、中堅企業向けのサービス拡充に向けて従事。

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