【100億宣言】サキュレ|エッセンシャルワークを変革し100億円へ

2026.08.04

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株式会社サキュレ 代表取締役社長 宇都宮 基行 氏

現在、物流や廃棄物処理といった「エッセンシャルワーク」は、社会の維持に欠かせない極めて重要なインフラである。しかしながら、その社会的地位や労働環境、給与水準には依然として課題が多く、若者にとっての「憧れの職業」とはなりにくい現実がある。東京都大田区に本社を置き、運送業や一般・産業廃棄物の収集運搬・処分事業を展開する株式会社サキュレは、この歪みに正面から立ち向かい、業界の地位向上と「循環とわくわくを増やし続ける」という経営理念を掲げて、2035年売上高100億円の達成を宣言した。

同社を率いるのは、2025年5月に突如として事業を承継した代表取締役の宇都宮基行氏である。大手人材・広告企業での経験や自ら起業した経歴を持ち、中小企業診断士やMBAの知見も有する。同氏がどのようにして急な承継から組織を立て直し、いかなる戦略のもとで100億円へのロードマップを描いているのか、その経営思想と具体的な施策について解き明かす。

企業情報
会社名
株式会社サキュレ
設立
1980年5月
従業員数
221名
事業内容
運送業、産業廃棄物・一般廃棄物収集運搬業
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/02713-00.pdf
HP
http://www.390.co.jp/index.php

急転直下の事業承継と財務のブラックボックス可視化

事業承継は、予期せぬ形で訪れた。2025年春、先代社長の病が発覚し、わずか2ヶ月という短い期間で急逝した。宇都宮氏は当時、自ら立ち上げた企業の経営にリソースを割いており、同社での業務は限定的であったため、十分な準備期間がない中での代表交代となった。就任直後の宇都宮氏が直面したのは、これまでの「個人経営」スタイルが生み出していた、財務構造の不透明さという大きな壁であった。

当時の同社は、借り入れ水準が高く、毎年の約定返済額がフリーキャッシュフローを上回る状態であった。さらに、原価計算が細分化されておらず、どの事業がどれだけの利益を生み出しているのかが不明確な、いわば「ブラックボックス」の状態に陥っていた。宇都宮氏は、金融機関との交渉を進めて資金繰りの長期的な安定化を図るとともに、外部の専門コンサルティング会社を導入し、経営の現状把握に徹底して取り組んだ。

財務分析を徹底した結果、これまで感覚的に進められていた各事業の採算性がデータとして可視化された。これにより、どの事業部を伸ばし、どこに経営資源を集中させるべきかという意思決定の科学的な土台が完成した。経営の引き継ぎプロセスにおいて、まず「数字の裏付け」を確保したことは、その後の迅速な経営改革を推進するための決定的な一手となった。

先代の方針をあえて逆転させる:高利益率の民間BtoB案件への再シフト

財務の可視化によって、同社が抱える事業構造の課題が浮き彫りとなった。同社には大きく分けて一般貨物輸送、産業廃棄物収集運搬、一般廃棄物収集運搬の3つの事業がある。先代は、業界全体の深刻なドライバー不足と従業員の高齢化を背景に、残業が少なく体への負担が比較的小さい「官公庁の入札案件」へ人員と車両をシフトさせていた。しかし、入札案件は安定性こそあるものの、競争が激しく粗利率が非常に低い。

一方、民間向けのBtoB取引である一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬は、極めて高い利益率を誇ることが可視化された。宇都宮氏は、自社の収益性を抜本的に改善するためには、先代が進めていた方向とは真逆に、民間案件に再びリソースをシフトさせることが必要であると確信した。この決定は、長年の慣習に依存していた社内に大きな変革を促すこととなった。

2025年10月、同社は約300社に及ぶ民間BtoBの既存顧客に対し、一律10%程度の適正な価格転嫁(値上げ)交渉を行った。価格交渉の決裂による顧客流出リスクも懸念されたが、長年にわたって提供してきた同社の高いサービス品質が評価され、実際に契約解除に至ったのはわずか1社にとどまった。この交渉成功により、同社の収益力は劇的に向上し、そこで生み出された原資を従業員の週休二日制の導入や人件費の改善といった労働環境への投資にダイレクトに還元することに成功した。

若手人材が躍動する新規事業の立ち上げと採用戦略

収益性が向上したとしても、業界全体の根本的な課題である「若手人材の不足」を解消しなければ持続的な成長は望めない。同社の当時の平均年齢は62歳を超えており、若者にとって魅力的な職場づくりが急務であった。そこで宇都宮氏が打ち出したのが、多様な人材が活躍できる魅力あるオフィスの構築と、若手人材の積極的な採用戦略である。

宇都宮氏は直近1年ほどで、30代を中心とする優秀な若手人材を6名以上採用することに成功した。採用の多くは、これまでの同氏の起業経験やネットワーキングから生まれた信頼関係によるリファラル(社員紹介など)が中心である。優秀な女性人材をはじめ、高い意欲とスキルを持つメンバーが同社に合流し、組織の空気は一変した。

彼ら若手メンバーが挑戦し、その能力を遺憾なく発揮できる場として、同社はすでに2つの新規事業を立ち上げて軌道に乗せている。1つは、展示会などで使用される資材の分散配送・回収管理を行うサービス。もう1つは、同社が収集・回収した不要な学習机や家具を美しくメンテナンスし、学生向けにサブスクリプション型の家具レンタルサービスとして貸し出す事業である。これらの事業は単に売上を伸ばすだけでなく、若者が「自ら事業を創造し、経営を学ぶことができる実践の場」として、強力な採用フックとモチベーション向上に機能している。

自社を「ショールーム」とする同業他社への価値提供

宇都宮氏が描く新規事業の構想は、自社の枠内だけに留まらない。同社が取り組む新規事業や社内改革の真の狙いは、自社を「業界のショールーム」として位置づけることにある。運送・廃棄物業界における多くの中小企業は、業務改善の重要性を理解しつつも、実体の見えないコンサルティングやデジタルツールに対する投資に消極的な傾向が強い。

同社は、自社がパイオニアとして現場のデジタル化やDX、業務フローの標準化を実践し、どのような障害にぶつかり、それをどう克服したかというナレッジを蓄積している。自社の配送現場を文字通り「実証実験の場」として機能させ、成功した改革のプロセスを誰もが理解しやすく、安価に導入できるシステムパッケージとして商品化することを目指している。

この「ショールーム経営」により、同業他社に対して「目に見える形」で業務改善システムやノウハウを販売するBtoBビジネスの確立を画策している。自社で効果が実証されたシステムであれば、他社の経営者も安心して投資を決断できる。サキュレでの成功事例を他社に横展開していくこの取り組みは、業界全体の生産性を底上げすると同時に、同社の新規事業としての大きな柱へと成長しつつある。

人を大切にする経営:新旧世代の融合と心理的安全性の確保

社内改革やDXを性急に進めることは、往々にして古くから会社を支えてきたベテラン従業員の不満や離職を招く。同社には、70代の経理担当者や60代の事務員など、長年にわたって誠実に業務を行ってきたベテランスタッフが多数在籍している。宇都宮氏は、合理化だけを追及して彼女たちの居場所を奪うようなアプローチは、企業の持続可能な価値を損なうと考えている。

アンケート調査などから判明したのは、従業員がサキュレの最大の魅力として「人の温かさ」や「ギスギスしていない働きやすい人間関係」を挙げているという事実であった。これは先代とベテラン従業員が長年かけて培ってきた最大の資産である。宇都宮氏は、財務や効率性のロジックだけでは割り切れない「人の感情」に配慮し、ベテランスタッフが望む限り働き続けられる体制を崩さない姿勢を貫いている。

一方で、若手人材が推進する新規事業やITツールに戸惑うベテラン従業員の不安を解消するため、社内での丁寧な対話とコミュニケーション環境の整備を進めている。チャットツールを各拠点に導入し、誰もが気軽に発信できる環境を整え、発信に対しては否定せず肯定的なフィードバックを徹底している。また、安全面(事故防止)の強化や、外部講師を招いたビジネスマナー講習など、教育へのコストを積極的にかけることで、全従業員がプロフェッショナルとしての自信を深め、若手とベテランが互いに尊重し合える心理的安全性の高い組織づくりを実践している。

2035年売上高100億円達成への確かな成長ロードマップ

サキュレが掲げる「2035年売上高100億円」の目標は、決して夢物語ではない。明確な現状認識と、市場のメガトレンドを緻密に分析した上での、合理的な2軸のロードマップに基づいている。業界の経営者の平均年齢は現在65歳前後であり、今後数年間で70代へと突入する。事業承継ができない、あるいはドライバーが集まらないことによる同業他社の廃業は、今後ますます加速することが予測される。

同社の戦略は、最初の5年間(2030年まで)を「社内の字固めと標準化」の期間と位置づけている。DXの推進、若手人材の確保・育成、業務フローの標準化、強固な人事制度の確立を完了させ、「人が集まり、標準化されたシステムで持続可能な経営ができる仕組み」を完全に構築する。他社が人手不足に苦しむ中で、サキュレは「人が潤沢にいる状態」を創り出し、強固な受け皿を用意する。

そして、2031年以降の5年間において、事業承継や人材不足に悩む優良な同業他社に対する積極的なM&A(企業の合併・買収)を展開していく。サキュレで育成された若手経営人材やデジタル管理システムを被買収企業に導入することで、買収後のシナジーを瞬時に発揮し、2035年までに100億円というスケールメリットを確実に手にする計画である。この緻密な段階的戦略こそが、100億宣言を現実のものとするサキュレの成長シナリオである。

社会的地位の向上と「憧れられる業界」への変革

売上高100億円という数値目標は、同社にとって一通過点に過ぎない。宇都宮氏が目指す経営の極北は、「運送・産業廃棄物業界の社会的地位の向上」である。コロナ禍において、私たちの日常を物理的に支えていたのは、休むことなく稼働し続けたこれらのエッセンシャルワーカーたちであった。その貢献度の高さに反して、世間からのイメージや待遇が伴っていない現状の歪みを、宇都宮氏は自社の変革を通じて正そうとしている。

適正な利益を上げ、それを働くドライバーやスタッフに待遇改善としてしっかりと還元する。安全とマナーにコストをかけ、社会から「あそこのドライバーは非常に礼儀正しく、プロフェッショナルだ」と信頼される存在になる。こうした地道な取り組みの積み重ねこそが、エッセンシャルワークを「若者からキラキラした目で憧れられる、誇り高き仕事」へと転換させる唯一の方法であると確信している。

新旧の調和を尊び、若手のエネルギーとベテランの安心感を融合させながら、サキュレは新しい物流・環境インフラ企業のあり方を世に示し続けている。業界全体の未来を背負い、高い志を持って進む同社の挑戦は、2035年の100億円達成に向けて、今まさに力強い一歩を踏み出したばかりである。

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