【100億宣言】次の灯|資源循環で描く持続可能な社会の実現

2026.09.16

次の灯株式会社 代表取締役社長 黒川聖馬氏

日本の産業を支える「はたらく車」の整備・維持コスト削減と、廃部品からの希少資源回収を統合した新たな循環型ビジネスモデルを展開する次の灯株式会社。創業直後の甚大な自然災害による被災を乗り越え、独自の強みと社会課題解決を両立させることで急速な成長を遂げている。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)の「100億宣言」企業に選定された同社は、単なる企業の規模拡大にとどまらず、地球規模での資源自給社会の実装という壮大なミッションを掲げる。本稿では、代表取締役社長(CEO)黒川聖馬氏の取材データと最新の補完情報を基に、創業の原点から事業構造の革新、ならびに2030年の売上100億円・2037年の1,000億円到達を見据える成長戦略を紐解く。

企業情報
会社名
次の灯株式会社
設立
2018年7月
従業員数
107名
事業内容
レアメタル再生事業
レアアース再生事業
ハイブリッドバッテリー再生事業
トラックパーツ再生事業
ケミカル事業
コンポスト事業(有機肥料)
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/01898-00.pdf
HP
https://tsuginohi.com/

創業の原点と被災からの再起

次の灯株式会社の起点は、巧みな市場予測や巨大な資金調達によるものではなく、1件のWeb受託案件における現場の切実なニーズであった。当時、Web技術や顧客集客のノウハウを活用していた黒川氏は、ホームページ制作の代金が支払われなかったことを契機に、手元に残ったWebサイトを通じて全国の運送会社や整備工場から「排ガス浄化装置(DPF)を修理できないか」という問い合わせを多数受けるようになる。当時は再生・修繕に関する確立された手法が存在せず、業界内でも廃棄が当たり前とされていた分野であったが、自ら構造を分解・研究し、技術的検証を重ねることで修繕・再生の道を切り拓いた。

しかし、2018年7月に正式に会社(旧アイテムワン)を設立した直後、わずか4日後に西日本豪雨が地域を襲い、開設したばかりの事業拠点(事務所)が被災し、すべてを失うという未曾有の危機に直面する。事業基盤を根底から揺るがす甚大な被害を受けながらも、黒川氏は現場で待つ顧客の課題に応えるべく即座に再起を決意した。被災現場からの復旧作業と並行して事業を再始動させ、試行錯誤を重ねながら部品の買取・再生フローを整備していった。

この困難な初期体験は、単なる一時的な苦難にとどまらず、同社の「どのような状況下でも顧客と社会に必要な資源を届ける」という強靭な企業体質と現場主義の価値観を醸成する重要かつ決定的な基礎となった。

都市鉱山市場と取引規模の拡大

同社の中核事業は、大型トラックや商用車に搭載されているディーゼル排ガス浄化装置(DPF・SCR触媒)をはじめとする商用車部品のリビルト・再資源化である。これまで高額な新品交換しか選択肢がなかった整備現場に対し、独自開発の精密洗浄・再生技術を施した高品質なリビルト部品を供給することで、新品比で最大70%のコスト削減を提供することに成功した。この取り組みは単なるコスト削減策にとどまらず、新品製造時に発生する大量 of CO2排出を抑制し、取引企業のScope3排出量削減に直接貢献する明確な環境価値を提供している。

さらに、再生プロセスと並行して構築されたのが、使用済み触媒等に含まれる貴金属(プラチナ・パラジウム・ロジウム等)の回収・精錬事業、いわゆる「都市鉱山」の再資源化である。これまで廃棄物として処理費用をかけて処分されていた廃部品を、市場価値に基づいた適切な価格で買い取るモデルを確立したことで、全国の整備業者や物流業者にとって廃棄コストが新たな収益源へと転換された。

同社は全国の整備業者や物流業者との間に強固で継続的な取引関係を築いており、累計取引社数は5,000社を超えている。一過性の売り切りモデルではなく、継続的な部品循環と貴金属還元を組み込んだ高循環型の取引構造を構築したことが、同社の強力な参入障壁と高い収益性を同時に支える根幹となっている。

成長の裏にあった葛藤とCSMVへの到達

創業から順調に売上規模を拡大させる一方で、代表の黒川氏は経営者として根本的な問いと深い葛藤に直面することとなった。効率化や消費の促進のみを追求する従来のビジネスモデルに対し、「利便性を極限まで高めることが、果たして人類や社会の真の幸福につながるのか」という疑問を強めていったのである。単に売上や利益の数字を追うだけの事業活動に対し強い違和感を抱いた同氏は、約2年間にわたり自問自答を重ね、自社が存在すべき本質的な意義を徹底的に追及する探求期間を設けた。

その結果到達した結論が、企業の姿勢や存在価値を再定義した独自概念「CSMV(Company Name, Statement, Mission, Value)」の策定である。自社の社名を理念体系の頂点(次の灯)に据え、「めぐる、つなぐ、地球にイイコト」というステートメントの下、「地球の資源を自給するセカイを、実装する」という明確なミッションを掲げた。

この理念体系への刷新に伴い、収益を出していたものの企業の根本思想に合致しない人材紹介業などの非関連事業から完全に撤退・再編し、事業領域を循環型リサイクルと資源再生領域へ全面的に集中統合させた。経営理念の純度を極限まで高め、ブレのない軸を確立したことが、現在の爆発的な再成長を生み出す最大の転換点となった。

資本主義の限界を超え地球と生命を喜ばせる事業へ

次の灯株式会社が目指すビジネスの方向性は、短期的な消費を煽る従来の過剰生産型資本主義に対するアンチテーゼであり、社会的価値と経済合理性を高次元で融合させる取り組みである。同社は、利便性の追求のみを目指す事業から撤退し、「地球と生き物を喜ばせるビジネス」へ自らのドメインを定義し直した。

この思想は、商用車部品の再生事業にとどまらず、事業の多角的な広がりを見せている。例えば、好気性微生物の力を活用して年間11,000トンの食品残さ等を高速で肥料化するコンポスト事業を展開し、地域農家と連携した地域完結型の循環モデルを構築している。また、燃料添加剤「煤殺し」の開発・販売を通じて、エンジンの燃焼効率向上と突発的な修理コスト削減を実現するなど、資源の長寿命化と環境負荷低減に寄与する事業を相次いで立ち上げている。

さらに、利益の一部を殺処分対象の犬猫の保護支援、途上国へのインフラ支援、地元・総社市の「雪舟フェスタ」や瀬戸内でのアートイベント支援に配分している。「恵まれない環境や社会課題への貢献」を働く意味に据えた結果、従業員定着率は97%に達し、「働きがいのある企業ベスト100」に選出されるなど、高い組織モチベーションと低い離職率を両立させている。

現場を駆動する数値管理と徹底的な戦略落とし込み

壮大な社会的ミッションを掲げる一方で、同社の事業運営はきめて合理的かつ徹底された数値管理によって駆動されている。黒川氏が主導する経営管理の要は、抽象的な理念を日々の現場アクションへ完全に落とし込むスーパーPDCAサイクルと、KPIのリアルタイム管理である。

同社では、年率140%の持続的な成長速度を達成するために必要な行動量を完全に逆算し、個々の従業員が本日行うべき具体的なアクションが最終的な売上や環境インパクトにどのように連動しているかを可視化している。目標数値を単なる願望として扱うのではなく、計算可能な行動計画へと細分化することで、再現性の高い事業成長を実現している。

また、経営陣における役割分担も明確である。黒川氏が長期的なミッション・ビジョンを提示し組織の方向性を指し示すのに対し、長田COO(副社長)率いる実行陣がそれを具体的なオペレーションや組織構造、販売戦略へと落とし込んでいる。この強力な経営デュオの機能により、構想の大きさに現場の実行力が負けることなく、迅速な拠点開設や事業買収、設備投資を果敢に推進することが可能となっている。

全国ネットワーク拡張と1,000億を見据えるロードマップ

中小機構の「100億宣言」に掲載された同社は、2030年に売上高100億円、2037年に1,000億円の達成を目指す明確な成長ロードマップを掲げている。第1期(FY2019)の売上約0.8億円(7,700万円)から、直近の第7期(FY2025)には14.2億円へと急拡大を遂げ、第8期(FY2026)目標である20億円の達成に向けて着実な成長を続けている。

同社が据える事業戦略の本質は、「大手企業は手間がかかり参入せず、中小零細企業では資本力や法的許認可の面で対応しきれない」という市場の「サイドギャップ」を的確に捉える点にある。西日本オーガニック社のM&Aをはじめ、東京、埼玉、名古屋、北海道、福岡へのスピーディな物流拠点展開と産業廃棄物処理免許の広域取得を推進。デリバリー・回収機能を強化することで、地域ごとに断片化されがちなリサイクルネットワークを一元化している。

現場のトラック部品や触媒の回収量を増やすことは、人材1人あたりの取扱資源量を最大化することと同義である。適切な労働基盤の整備と採用の強化、さらにファクトリー化を進めることで、長期的には年率140%成長の継続による売上高1,000億円規模の到達を理論的な現実解として手繰り寄せている。

時代が求める資源自給セカイの社会実装

次の灯株式会社の挑戦は、一企業の成長物語にとどまらず、地政学的リスクや資源不足に悩む現代社会に対する強力なソリューション提示である。エネルギーや希少資源を海外からの輸入に依存する日本において、国内に存在する都市鉱山や廃部品から資源を国内循環させる仕組みは、産業の永続性を支える不可欠なインフラとなる。

黒川氏が描く未来は、単なる企業の存続を超えた100年後、200年後の地球環境と人類社会を見据えた長期的な時間軸に基づいている。どれほど時代や技術が変化しようとも、人間が社会活動を行う限り発生する不要物や資源の流出に対し、正しく「回収し、再生し自然と社会に返す」構造を組み込み続けることが同社の使命である。

「地球の資源を自給するセカイを、実装する」というミッションの下、同社はこれからも環境性と経済合理性を高次元で両立させ、岡山から日本全国、そして世界中のサステナブルなサプライチェーンの構築に向けて挑戦を続けていきます。

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