100億企業化

【100億宣言】株式会社ユニテクノ、”素材”から”部品”への深化で挑む真のTier1。M&Aを経験した経営者が語る「自前成長」への信念

2026.06.03

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代表取締役社長 岩田輝彦
 

自動車産業が100年に一度の変革期を迎える中、多くの部品メーカーが事業の多角化やEVシフトへの対応に迫られている。そうした潮流とは一線を画し、既存事業の深化と拡大によって成長を続けるのが、株式会社ユニテクノだ。同社はダイハツ工業の主要な一次サプライヤー(Tier1)でありながら、トヨタ自動車九州をはじめとする他メーカーとの取引も拡大。M&Aによる統合を経験したからこそ、「自前での着実な成長」にこだわり、売上100億円の壁を目前に捉えている。その成長戦略と、経営を支える揺るぎない信念の源泉を、代表取締役社長の岩田輝彦氏に聞いた。

企業情報
会社名
株式会社ユニテクノ
設立
1997年1月(前身会社である日光精器設立は1941年8月)
従業員数
220名
事業内容
プレス、溶接、組立、金型・治工具の製作
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/00395-00.pdf
HP
https://www.uni-techno.co.jp/

 

創業の系譜―航空機部品から自動車部品へと受け継がれるモノづくりのDNA

ユニテクノのルーツを辿ると、第二次世界大戦中の航空機産業に行き着く。岩田社長の父親が創業した前身企業「日光精器」は、戦闘機の部品を製造 ・納入をしていた「川西航空機」の流れを汲む。戦後、日本の産業構造が大きく転換する中で、同社もまたその技術を平和産業へと応用。航空機から三輪・二輪自動車へと主戦場を移し、部品供給を通じて日本のモータリゼーションの黎明期を支えた。

創業当時の製造現場

1997年、同社は大きな転換点を迎える。主要取引先であったダイハツ工業からの「規模を大きくしなければ生き残れない」という要請を受け、同業の「牛田金属精工」との合併を決断。ここに「株式会社ユニテクノ」が誕生し、岩田氏が社長に就任した。日光精器が20億円、牛田金属精工が10億円、合計30億円規模での船出であった。この合併は、単なる規模の拡大に留まらず、その後の同社の成長戦略と組織文化の根幹を形作る重要な礎となった。

合併から20年での飛躍―売上30億から100億へ、幾多の危機を乗り越えた成長軌道

ユニテクノ 看板

ユニテクノの設立からの道のりは、決して平坦ではなかった。バブル崩壊後の経済の停滞期に始まり、リーマンショック、東日本大震災、引いては近年のコロナ禍と、幾度となく外部環境の荒波に晒されてきた。直近では、主要顧客であるダイハツ工業の認証不正問題により、2024年度の売上は一時的な落ち込みを経験した。
 
しかし、同社はこれらの危機を乗り越え、着実な成長を遂げている。合併当時に30億円だった売上は、2023年度には93億円に到達。ダイハツ問題の影響を受けた後も、2025年度には83億円まで回復し、100億円という大台を目前にしている。この resilient な成長を支えているのが、特定の取引先に依存しない事業ポートフォリオの構築だ。現在、売上の約6割をダイハツグループが占める一方で、トヨタ系の売上が約3割を構成。この分散が、一部の事業が落ち込んだ際のリスクヘッジとして機能し、経営の安定化に大きく貢献している。

九州への戦略的進出―顧客の多様化により事業の安定・拡大化を目指す

同社の成長戦略を語る上で欠かすことのできないのが、九州への進出である。ダイハツ工業の大分県への進出に伴い、同社は他社と共同出資で北九州市に子会社を設立して九州へ進出しました。その後、共同出資会社から分離独立した後、当時の取引先であった地元の松野精工という部品会社を吸収合併し、福岡県田川市夏吉に自社工場を構え、本格的な展開を開始しています。当初は他の一次メーカーとの共同進出であったが、予想を上回るダイハツ九州の活発な生産状況を背景に、分離独立。2012年には田川市糒に新工場を竣工し、本格的な事業展開を開始した。
 
この九州進出は、単なる生産拠点を拡大以上の意味を持つ。これまでのダイハツ工業系オンリーの一本足での取引から、トヨタ九州系との取引拡大への、より安定したモデルへの転換は、100億円達成後の持続的な成長を実現するための最重要課題と位置づけられている。

工場内部の生産ライン

「M&Aは考えていない」―統合の経験が育んだ、自前での成長への強い信念

これまでの成長過程で、ユニテクノは4度の合弁・合併を経験してきた。しかし岩田社長は、今後の成長戦略として「M&Aは考えていない」と断言する。その背景には、合併・統合に伴う組織文化の衝突や派閥の発生といった、過去の経験から得た教訓がある。
 
「いろいろやると問題もやはりある。単独での成長を目指した方が急拡大のメリットを享受する一方で、異なる背景を持つ組織を一つにまとめることの難しさを肌で感じてきた。だからこそ、時間はかかっても、自社の文化を大切にしながら着実に事業を拡大していく「オーガニックな成長」を選択する。この堅実な姿勢は、トヨタ系への営業活動を社長自らが監督し、既存顧客との関係を深掘りしていくという現在の戦略にも色濃く反映されている。

経営の最重要課題は「人」―次世代を担う管理職の育成と採用

売上100億円という目標達成に自信を見せる一方で、岩田社長が最大の経営課題として挙げるのが「人の問題」だ。特に、将来の経営を担うべき管理職・幹部人材の不足は深刻であり、「現場の作業者を採用するより大変だ」と語る。現在、同社の管理職層はベテランが多く、次世代へのスムーズなバトンタッチが急務となっている。
 
この課題に対し、同社は多角的なアプローチで挑む。取引先であるダイハツ工業からの出向受け入れや、他社を定年退職した経験豊富な人材の採用など、あらゆるネットワークを駆使して人材確保に努めている。「偶然を待っているだけでは人は来ない」。岩田社長自らが先頭に立ち、採用活動を行う。100億円企業というステージは、企業の信用力やブランドイメージを向上させ、優秀な人材を惹きつけるための重要なマイルストーンでもある。事業規模の拡大が、採用力の強化、および組織の持続的成長へとつながる好循環を生み出すことを、同社は見見据えている。

未来への投資―自動化とDXで切り拓く、新たなモノづくりの地平

人材確保と並行して、同社が未来への投資として重視しているのが、製造現場の自動化とデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。岩田社長は「AIやロボティクスといった技術を持つか持たないかで、企業が淘汰される時代が来る」と強い危機感を示す。
 
日本の生産年齢人口が減少の一途をたどる中、人に依存しない生産体制の構築は、企業の存続に不可欠な要素となる。同社は、最新の製造技術や他社の成功事例に関する情報収集を積極的に行い、自社工場への導入を常に模索している。それは単なる生産性向上やコスト削減に留まらない。技術革新を通じて、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整え、企業全体の競争力を底上げするための戦略的投資なのである。

工場の上空外観

まとめ

株式会社ユニテクノの歩みは、外部環境の変化に柔軟に対応しながらも、自社の核となる強みを見失せず、着実に成長を重ねてきた日本の中小製造業のひとつの理想像を示している。M&Aによる統合の経験を経て、あえて自前での成長にこだわる経営判断。および、目先のEVシフトに左右されない、既存事業である自動車ボデー部品の供給体制を深化・拡大させるという選択。その根底には、自社の技術力と顧客との信頼関係に対する、岩田社長の揺るぎない自信が貫かれている。
 
「100億円」という目標は、同社にとって通過点に過ぎない。その先にあるのは、強固な人材基盤と最先端の技術力に支えられた、真のTier1メーカーとしての未来だ。自動車業界が大きな変革のうねりの中にある今、ユニテクノの挑戦は、多くの経営者にとって進むべき道を示す羅針盤となるだろう。

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