【100億宣言】株式会社イーグリッド、出雲発のIT企業が挑む「属人化からの脱却」と次世代ビジネスモデルの構築

2026.07.23

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代表取締役CEO 小村 淳浩氏

株式会社イーグリッドは、島根県出雲市を拠点にしながら、首都圏の高度なIT技術やビジネスソリューションをローカライズし、急速な成長を遂げているIT企業である。従業員数120名強(2026年6月時点では127名)という規模に達し、出雲市を主要拠点としながらも、首都圏を含む全国各地にメンバーを擁する同社は、現在「100億宣言」を掲げ、次なる事業フェーズへの移行を進めている。単なるシステム受託開発からビジネスソリューションへの転換、産学連携やM&Aを通じた独自のプロダクト展開、そしてAI時代における本質的な人間力のアップデートまで、同社が描く5年後30億円、あるいはその先の100億円企業への道筋と、成長の壁となる「属人化の解消」に向けた挑戦の全貌を紐解く。

企業情報
会社名
株式会社イーグリッド
設立
2010年11月
従業員数
127名(2026年6月時点)
事業内容
ソフトウェア開発事業、Web制作・デジタルマーケティング事業、ITコンサルティング事業、自社プロダクト提供事業
100億宣言
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/companies/pdf/02881-00.pdf
HP
https://www.e-grid.co.jp/

システム開発の枠を超え、地方拠点から全国規模のソリューションを展開する組織基盤

現在の株式会社イーグリッドは、従業員数120名強の強固な組織体制を構築している。そのうちの約7割が出雲市を拠点として活動しており、地方都市発のIT企業としては有数の規模を誇る。人員構成としては、約90名がシステム開発を担うエンジニアであり、残りの約25名がデジタルマーケティングなどを包括したビジネスソリューションチームとして機能している。

かつては数名規模のチームで行っていた業務も、事業の拡大に伴い組織的な対応が求められるようになった。同社は、地方企業が陥りがちな「労働集約型の業務構造」からの脱却を志向している。単に人を増やして業務を回すのではなく、いかにしてシステムやAIを業務フローに組み込み、生産性を向上させるかが重要であると認識している。特に中小企業においては、ITツールの導入による業務効率化の余地が大きく、同社が提供するビジネスソリューションの価値はそこにある。

現在、同社の利益の約7割から8割はシステム開発事業が占めている。しかし、ビジネスソリューション領域の成長率が著しく、今後はこの比率が変化していくことが予想される。システム開発で培った強固な技術力を基盤としながら、フロントエンドで顧客のビジネス課題に直接アプローチするソリューション部隊が存在することが、同社の強力な競争優位性となっている。

高度人材を惹きつける独自の採用戦略とフルリモート環境の功罪

地方を拠点とするIT企業にとって、最も大きな課題となるのが「高度IT人材の確保」である。同社はこの課題に対し、UターンやIターンを希望する優秀な人材の受け皿となることで、強力な組織を構築してきた。

例えば、東京都内のスタートアップ企業で第一線として活躍していたエンジニアや、首都圏で高度なプロジェクトを経験してきたビジネスパーソンが、家族の事情やライフスタイルの変化を機に島根県への移住を選択するケースは少なくない。同社はそうした「地方に住みながら、首都圏レベルの高度な仕事に挑戦したい」と考える人材にとって、魅力的な選択肢として機能している。

しかし、同社は単に「地方への移住者」を無差別に採用しているわけではない。過去にはフルリモート環境での業務委託や、県外在住のエンジニアを積極的に活用しようとした時期もあった。だが、完全なリモート環境下において同社のカルチャーやスキル要件に合致する人材を見極め、チームとして統合していくことの難しさに直面した。現在では、安易なフルリモート体制の拡大には慎重な姿勢を取り、地域に根を下ろし、顔の見える関係性を構築できる人材の採用に注力している。

また、外部からの経験豊富な人材が多数流入することによる組織内のコンフリクトに対しても、同社は冷静に対処している。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まれば、一時的な摩擦が生じるのは避けられない。しかし、採用段階での期待値調整や、入社後のカルチャーフィットを丁寧にすり合わせることで、組織の多様性を成長のエネルギーへと変換している。

産学連携による独自プロダクトの開発と、信頼ベースのM&A戦略

同社のプロダクト展開を語る上で欠かせないのが、地域のアカデミアとの深い連携である。オンライン薬理学実習シミュレーター『Pharmaco-PICOS(ファルマコ・ピコス)』は、同社が島根大学医学部との共同開発によって生み出した画期的な自社サービスである。M&Aなどの外部獲得に頼るだけでなく、地域の知を最先端のIT技術で社会実装する開発力が同社の強みとなっている。

一方で、さらなる成長戦略の一環として、M&Aも極めて戦略的に活用している。2022年には、超ニッチな医療分野に強みを持つパッケージソフトを有するアズレックス株式会社をグループインさせるなど、自社にはない特定の専門領域(ドメイン知識)を持つプレイヤーとの連携を深めている。

同社のM&Aに対するスタンスは、単に「エンジニアの頭数を揃えるための買収」を目的としたものではない。対象となる企業は、創業期から長年にわたって強固な信頼関係を築き、互いの人柄や業務プロセスを熟知しているパートナーであることが多い。全く見ず知らずの企業をデューデリジェンスの数字だけで評価して買収するのではなく、「このメンバーであれば一緒にビジネスを拡大できる」という確信をベースにグループインを進めている。

これにより、買収後のPMIにおける摩擦を最小限に抑え、スムーズな事業シナジーの創出を実現している。無理な規模の拡大を追うのではなく、確かな技術と信頼で結ばれた専門チームをグループ内に取り込むことで、事業ポートフォリオの多様化と強靭化を図っているのである。

「100億宣言」の真意と、5年後売上30億円に向けたロードマップ

同社は、2025年10月期時点で売上高約10億円(10億円を超える規模)に成長しているが、さらなる飛躍を目指し「100億宣言」という大きなビジョンを掲げている。この宣言は、公的な申請制度を活用したものであり、手続き自体は極めて身軽かつスピーディーに完了させている。

この「100億宣言」の最大の目的は、外部に対する一時的なアピールというよりも、強烈な「インナーブランディング」にある。現在の120名強の組織において、これまでの延長線上にある成長率を維持するだけでは、飛躍的なスケールアップは望めない。5年後に売上30億円、そして将来的な100億円という明確なマイルストーンを社内に提示することで、現在のビジネスモデルのままでは到達不可能であるという危機感と、変革の必要性を全社員に共有しているのである。

地方の商圏(島根県内や近隣エリア)だけであっても、付帯サービスやオフィス関連のソリューションまで含めれば、数十億円規模の売上を構築している企業は存在する。同社は、これまでに構築してきた地域内の強力なネットワークと、広島や関西などへと広がりつつある営業拠点を活用することで、地方発のIT企業であっても数百億円規模のビジネスを展開できるという確信を持っている。

AIの波を捉える独自の視点と、ビジネスモデルの抜本的変革

売上30億円、そして100億円という目標を達成するためには、現在の受託開発や労働集約的なコンサルティングに依存したビジネスモデルからの脱却が不可欠である。同社は、SaaS型の小規模なアプリケーションの展開や、AIを活用した顧客支援に大きく舵を切ろうとしている。

現在、多くの企業がAIの導入を模索しているが、同社はIT企業でありながら「いずれはIT企業が不要になる時代が来る」という前提で顧客への啓蒙を行っている。AIを単なるツールとして導入するのではなく、AIを活用して顧客企業自身が業務フローを根本から変革できるように支援することが、真のソリューションであると考えている。

同社のAIに対する視座は非常に冷静である。現在、AIを使って「資料作成の時間を短縮した」といった表面的な効率化がもてはやされているが、それは本質的な価値の創造ではないと捉えている。AIが高度な処理を自動で行うようになる時代において、人間自身がビジネスの目的や課題設定のスキルをアップデートできなければ、AIの恩恵を真に受けることはできない。

だからこそ同社は、顧客に対して表面的なシステム導入を提案するのではなく、顧客のビジネスの根幹に入り込み、AI時代における新しい業務のあり方を共に構築するパートナーとなることを目指している。

外部ネットワークの構築と、トップの戦略的な時間投資

同社の急激な成長を牽引している要因の一つに、トップの戦略的な時間の使い方が挙げられる。社長自身の日々の業務は、午前中の早い時間帯に自身のタスクを完了させ、午後以降はほぼ外部との折衝やネットワーク構築に投資されている。

同業他社の経営者との情報交換はもちろんのこと、スタートアップ企業の役員を兼任したり、大手企業との合弁会社を設立したりと、その活動範囲は多岐にわたる。さらに、大学での特別講義や客員教授としての活動を通じ、産学連携や次世代の人材育成にも深く関与している。

こうしたトップの広範な外部活動は、単なる付き合いではなく、同社にとっての「新しい知見の獲得」と「事業機会の創出」という明確な目的を持っている。地方に拠点を置きながらも、常に最先端のビジネス動向やテクノロジーのトレンドを直接肌で感じ、それを自社の戦略にフィードバックする体制が構築されている。

トップが社内の細かい管理業務に追われるのではなく、外の世界と接続する結節点としての役割に専念できていることが、同社が地方のIT企業という枠に収まらず、全国規模の視野で事業を展開できる大きな原動力となっている。

最大の障壁「属人化からの脱却」と、スケールに向けた仕組みづくり

売上30億円、そして100億円企業へと成長する上で、同社が現在直面している最大の課題が「属人化からの脱却」である。これまでは、トップ自身の強力な牽引力と、個々の優秀なメンバーの「気合いと根性」、そして属人的なスキルに依存して成長を遂げてきた側面がある。

しかし、組織が100名を超え、さらに拡大していくフェーズにおいては、個人の力量に依存した経営スタイルは限界を迎える。フロントエンドに立つビジネスソリューションの人材が増加すればするほど、彼らが一定の品質で顧客に価値を提供し続けられる「再現性のある仕組み」が必要不可欠となる。

現在、同社はこの課題を解決するため、大手企業からの出資受け入れを含む資本提携を進め、組織のガバナンス強化と業務プロセスの標準化に全力で取り組んでいる。営業手法から社内の人事制度、評価制度、誠実なプロジェクト管理の手法に至るまで、暗黙知を形式知へと変換する作業をここ数年かけて進めている。

特定の優秀な社員が抜けた途端に売上が落ち込むような脆い組織構造から脱却し、誰が担当しても一定以上の成果が出せる強固な仕組みを構築すること。それが、同社が次のステージへと進むための絶対条件であると認識し、急ピッチで社内改革を推進している。

出雲から都市圏へ、変化を恐れない挑戦の真髄

株式会社イーグリッドの挑戦は、地方都市発のIT企業がいかにして全国規模のビジネスを展開し、業界の変革期を生き抜いていくかという、一つの明確なモデルケースを提示している。

「100億宣言」という野心的な目標の裏には、現状の成功に甘んじることなく、常に自らのビジネスモデルを破壊し、再構築しようとする強い意志が存在する。高度な人材を惹きつける採用力、地域大学との連携による自社サービス開発、信頼関係に基づくM&A戦略、AIの本質を見極める冷静な視座、そしてトップ自らが先頭に立つ外部ネットワークの構築。これらすべての要素が、同社の成長を支える歯車として機能している。

そして現在、彼らは最大の壁である「属人化の解消」と「仕組みの構築」という、企業が真にスケールするために避けては通れない痛みを伴う変革の真っ只中にいる。個人の能力に依存したフェーズから、システムと仕組みで戦うフェーズへの移行。この変革を完遂したとき、株式会社イーグリッドは島根発のローカルIT企業という枠を完全に超え、日本のIT業界全体に大きなインパクトを与えるリーディングカンパニーへと進化を遂げるだろう。同社の飽くなき挑戦は、まだ始まったばかりである。

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